高林敏之先生による「ピエール・テヴァニアン来日講演」レポート

2013年5月10日 一橋大学にて行われた ピエール・テヴァニアン来日記念講演 「排外主義を煽るのは誰か?-政治家、マスコミ、学者がうみだすゼノフォビアの合意」 講演 ピエール・テヴァニアン 討論者 安田浩一 続きを読む
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高林 敏之 @TTsaharawi

1)5月10日は一橋大学で行われたピエール・テヴァニアン氏と安田浩一氏の対論セッション「排外主義を煽るのはだれか―政治家・マスコミ・学者が生み出すゼノフォビアの合意」を聴講した。他の方々がよいまとめを作っていらっしゃるので細部はそちらに委ね、若干の感想を。

2013-05-11 15:46:30
高林 敏之 @TTsaharawi

2)そもそも「女性の人権」「女性の解放」の名のもとに、ムスリム女性が文化的にスカーフ着用を選択する権利を強権により剥奪する、フランスの「スカーフ禁止法」はじめ欧州におけるスカーフ否定の動きには常にいかがわしさを感じていた。それゆえテヴァニアン氏の講演には大いに関心があった。

2013-05-11 15:50:00
高林 敏之 @TTsaharawi

3)冒頭に映画「スカーフ論争」の一部が上映された。そこでフランス人の政治家、コメンテーター、一部フェミニスト運動家、教師らからスカーフを着用するムスリム女性たちに投げかけられる言葉の数々は、ツイッター上などで在日コリアンに投げかけられる攻撃の言葉と、あまりにも似ていた。

2013-05-11 15:55:12
高林 敏之 @TTsaharawi

4)すなわち、国・社会の主流の側に立つマジョリティが、自らの価値観によってマイノリティの異なる文化的文物を判定し、「それを捨てることであなたは自由に平等になれるよ」と「善意」を押し売りし、それを拒んで文化的独自性を主張する者に嫌悪を込めて「攻撃的」だと攻撃する構図が、である。

2013-05-11 16:04:11
高林 敏之 @TTsaharawi

5)テヴァニアン氏がフランスのスカーフ禁止法などのイスラモフォビアを分析して語る「上からのレイシズム」の構図も、日本の現状そのものだ。すなわち、政治権力者がスケープゴートを作り出し、マスメディアが世論操作により問題化し、そうして作られた「世論」を通じて排斥法を成立させる構図。

2013-05-11 16:08:47
高林 敏之 @TTsaharawi

6)政府や政治家が拉致問題や「DPRK核問題」などを利用して朝鮮学校や在日朝鮮籍者をスケープゴートとし、マスメディアがDPRKバッシングやら「肖像画問題」やらで世論をセンセーショナルに煽り、「国民の理解が得られない」という理屈で朝鮮学校排斥を正当化する。全く同じ構図ではないか。

2013-05-11 16:15:58
高林 敏之 @TTsaharawi

7)レイシズムは一部の過激な集団や特定の「下層民」やらの現象ではない。排斥法が通過するのはリベラル・左派を含む、また階層を越えた広い支持があるから。フランスの反レイシズム運動の限界はレイシズムの最もセンセーショナルな部分にのみ注目し草の根のレイシズムに取り組まぬ選好主義にあった。

2013-05-11 16:23:43
高林 敏之 @TTsaharawi

8)そして、かかる限界はフランスの反レイシズム運動が「白人の運動」であり、パターナリズム(父権主義)的性格を免れなかったため。ゆえに同化する者には手を差し伸べるが、ポストコロニアル・マイノリティの自己主張には「差異を強調しすぎ」「性急」と批判する。

2013-05-11 16:28:36
高林 敏之 @TTsaharawi

9)テヴァニアン氏の指摘した7)8)の点は、歴史上とりわけ同化主義の性格が強いフランス植民地主義に源をもつと感じられた。フランスは今でも「本国の平等な一部」たる「海外県」を保有し、自己の海外領土を「植民地」と認めず、フランコフォニーのメカニズムでアフリカの旧植民地諸国を拘束する。

2013-05-11 16:46:48
高林 敏之 @TTsaharawi

10)フランスの左翼はレイシズムと闘ったことはない、とテヴァニアン氏は指摘する。フランスの社会党も共産党も(特に前者)植民地帝国の「改革」を唱えこそすれ「フランコフォニー」や「海外県」といった植民地主義の遺物そのものにまともに異を唱えたことはないから、それも当然であろう

2013-05-11 16:50:35
高林 敏之 @TTsaharawi

11)植民地帝国における左翼運動はしばしば「国際的階級連帯」といった美名のもとに植民地民族の解放の訴えを等閑視し、自らが「主流」の立場から植民地民族の運動を「指導」することを当然視したものだ。日本共産党の朝鮮人共産主義者に対する姿勢も然りで、それが朝鮮総聯結成の一因でもあった。

2013-05-11 16:59:20
高林 敏之 @TTsaharawi

12)現実には排他主義に他ならない排斥法がリベラル・左翼まで同調して制定されること、それ自体に同調せずとも、その空気を促す言説に同調すること。これは世界有数の同化主義的植民地主義を、フランス人も日本人もその精神から清算できていないことに起因するのではないかという思いを強くした。

2013-05-11 17:08:48
高林 敏之 @TTsaharawi

13)昨日のセッションでは植民地主義がほとんど論じられなかったので私は質問でその点に触れたが、もっと植民地主義とレイシズムの関係を議論しても良かったのではないか。テヴァニアン氏の、フランコフォニーに対する考え方をぜひ知りたいものだと思った。

2013-05-11 17:11:32
高林 敏之 @TTsaharawi

14)安田浩一氏はずいぶん謙遜なさっていたが、フランスと日本のレイシズムの共通性が浮き彫りになったことで、氏の在特会取材の中で獲得した認識が、テヴァニアン氏の講演と見事にマッチしたと思う。在特会的運動の原点としてのイラン人排斥を半ば忘却していた事実にも気づかされ、恥じ入るばかり。

2013-05-11 17:19:59
高林 敏之 @TTsaharawi

15)カウンター行動に関連して。テヴァニアン氏が白人主導のパターなリズム的反レイシズム運動の典型例として挙げたのが「SOSラシズム」運動の「私の友人に手を出すな」というスローガンだった。それは北アフリカ旧植民地出身の被差別者を「主体」から「客体」の立場に追いやるものであったと。

2013-05-11 17:26:28
高林 敏之 @TTsaharawi

16)この発言を聞いて即座にプラカード運動のことが頭をよぎってしまった。以前に書いた通り、私は「仲良くしようぜ」といったスローガンは在特会的ヘイトに対抗し不特定多数の日本人の参加を促す上で有効性をもつと考えている。しかしテヴァニアン氏の指摘も事実だ。どう次のステップに進めるか。

2013-05-11 17:29:41
高林 敏之 @TTsaharawi

17)この点は誰にとっても悩ましいところだ。安田氏は「残念だが現状でレイシズム運動から脱退させる方策としては〈ナショナルプライドをくすぐる〉ことが最も有効」だと述べた。この現実の中で「在特会的なものを除去して終わり」にならない方向性を考えなければならないのだから。

2013-05-11 17:32:56
高林 敏之 @TTsaharawi

18)私も明確な答えを今のところ持ち合わせない。ただ「主流」「マジョリティ」の側から「手を差し伸べ仲良くする」的なところにとどまらないためには、やはり私たちの精神に刻印された「植民地主義」に向き合うことが避けられないということだけは、今回改めて確信したところだ。

2013-05-11 17:37:12
高林 敏之 @TTsaharawi

19・終)もうひとつ。テヴァニアン氏はヘイトスピーチを大声でがなるデモが許容される現実に驚いたと。フランスでは法規制もだが、対抗デモがレイシストのメガホンの声を圧する「レイシスト帰れ」の声で対抗し衝突になるほどだと。そうだよな、ヘイトの騒音にはそれを圧する罵倒も必要ですよね。

2013-05-11 17:44:08
高林 敏之 @TTsaharawi

@TTsaharawi 「パターなリズム」⇒パターナリズム。

2013-05-11 18:00:24