【R-18注意】ヴィンツの過去話

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 「隣いい？」ビールの入ったグラス二つを器用に片手で挟み持ち、もう一方に軽くつまみの乗った皿を手に気障っぽい色男が姿を現した。自分の手にしたグラスが殆ど空で、まじまじと感心したように見つめながら頷く。「まったり呑むならいいよ。しかし、何で俺みたいなのと？」→

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@Vincenz_ro 本当は彼に声をかけられた時点で意図は読めたが、思惑通り答える訳にも行かずはぐらかす。「俺には貴方が魅力的に見えたがらだけだけど、断らないなら口説いて良いって事かな？」うんざりしそうな気障さでウィンクされてしまう。自分の知られたくない部分を誤魔化すのに→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 気取られ、口説かれるの前提で断ってしまう事も出来たのを失念していた。「呑むのはいいけど、口説かれるのはお断りだな」視線を逸らして、残ったビールを煽りカウンターを離れようとする。「ビール」ただそれだけ言うと、彼は持ってきたグラスを差し出す。「これ一杯だけ」→

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@Vincenz_ro 表情に出てしまっただろうか、ここで強引に逃げるのもおかしい気がしてしまって動きを止めた。「じゃあ、この一杯だけ…」でも、ここで断っておかないとマズいと思ったのに、どうして目立たないように地味にしている自分に興味を持ったのか不安もあり気になって椅子に座り→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 直して、彼の方を向いた。彼が色男で男色だと言うのは噂では聞いた。確かに格好いいとは思うが、色男と言うことで有名なのは隠して置けないくらいに派手に付き合いを広げているという事であまり関わり合いになりたくないと正直思っていた。「何でオレなんかに声かけたの？」→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro わざと怪訝そうに訪ねるが、彼は微笑みをたたえたまま返す。「何だか独りで呑んでる姿に惹かれたから…」ときめきとは別の意味で眩暈を覚えた。「口説かれたい相手なら喜んだろうねぇ」呆れの嘆息混じりで返したが、飲み過ぎていつもの輪から離れた理由をはぐらかしていたのを

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@Vincenz_ro 思い出す。本音が表に出ないようにと不機嫌そうに表情を歪め、早く飲んでしまおうとグラスを煽る。「今日は酔いたい気分ですか？」ペースを崩してくるのは意図か天性の才能か。図星を突くから、動揺して隙が見えることだろう。「そろそろお開きでしょ。醜態晒しそうだから→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 先に戻るね」このまま強引に帰ると後から付きまとわれるかも知れないと過ぎったが、このまま一緒に居るのが何となく怖くなっていた。「家まで送るよ。だから、静かな店でゆっくり飲まない？」人の話を聞いているのかと叫ぼうとして、和やかな聖騎士団の貸切パーティーという→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 事を思い出して踏みとどまる。「怖がらないで…」笑んだまま、囁くように低い声で言い。そっと手を掴む。マズいと思っても表情が揺れる。「キミみたいな人に狙われて生きた心地がする男はなかなかいないと思うよ」冗談めかしてそのまま押し切ってしまえと…考えるのに出来ない

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 酔いすぎたと思った時点で帰っておけば良かったと後悔した。「相手の意志は尊重するよ」イラッとその言葉に来るが、感情的になったら思うつぼだと自分を窘める。「尊重するなら離してくれ。変な目で見られる」「気にすることないでしょう、あなたは俺に力で負かされるような→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro ひ弱なクルセイダーじゃないでしょ」薄く笑って、ずっと細めていた目を開く。何だかその視線が試すようで見透かすようで言葉に詰まる。彼の思惑通りと悔しい気もしたが、変な噂でも立っているのかと不安もあって…「呑むだけだよ、折角だからキミの奢りで…」彼は嬉しそうに→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 誇らしげにみえるくらいに笑って、少し苛立った。女性をエスコートするように腰を抱こうとしたが、マントに触れられる感触に気づきすんでで叩き落とした。「不良クルセイダーの矯正につき合うだけだよ」きっぱり周りに聞こえる程度の声音で言い放つ。好奇の目が滲みるが無視→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro して、二人でパーティーを後にした。

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@Vincenz_ro 冷静にと思ったのにすっかり口車に乗せられた物だと自分自身に呆れ反省しつつ、彼の後ろをついて行く。並んで歩こうとされたが、道が分からないと頑なに拒んだ。最初のお店から程なく到着した。思いっきり料理だけ食べて帰ってやろうかと思ったが、女性なら感嘆の声を上げ→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 喜びそうなお洒落なショットバーだった。カクテルは苦手だと言うとビールの種類もありますと言われて、酒が抜けない所為もあってかとっさの返しが浮かばずに店に連れ込まれてしまった。手際の良さに呆気取られながら、カウンター席でなく奥まった所にあるお誂え向きなテーブル

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 席に通されてしまった。自分はいつも男に誘われた時に限って失態を演じるのかと、そろそろ朝のセットが崩れてきた髪をなで上げて直しつつ、唸る。「髪下ろしても良いですよ。貴方の違う面をみたい」勝手に二、三注文してから、オレに笑いかける。「今さっき初対面でしょ？」→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 調子がよすぎるので段々白けた気持ちになったが、他に見知った顔もなく多少冷静になってこられた。聞きたかった事だけ聞いて早々に退散しようと自分の顔を見つめ微笑む色男を訝しむ様をありあり浮かべ尋ねる。「オレ、そんなにそっちの気ありそうで口説き安そうに見えた？」→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 真面目な大聖堂に勤める身だから、出世を目指すわけではなかったがあまり同性も恋愛対象で事情はあれど多少特殊な性癖を広く知られることに抵抗があった。久しく恋人が居らず、性癖のきっかけともなった淫らで汚れた悪夢を最近見た所為で性欲がくすぶっているからこそ→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 知られたくなかった。「フィーリングですよ。俺は別に同性愛者だから口説く訳ではないですよ」暗に口説きたくなるような人間だからと口説いてきていた。「何故、そんなに自分がどう見られるか気になります？誰かに吹聴したりするつもりはありませんから、どうか素直に…」→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 自意識過剰で完全に墓穴な事に頭を抱えたくなった。最初もストレートに口説かれたら困ると言えばよかったし、今も好みじゃないと言えば良かったのだ。少し悩んだ後に注文の品が来ないのを確認してから、いっそと正直に話し出した。それは自分に呆れつつ、愚痴っぽくなりながら

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 「疚しいからだよ。それにキミみたいな色男は好みじゃない。酔い潰れたい気分だけど…キミみたく奔放にはなれないよ」自分で言っていて居心地が悪いが、彼の満足げで楽しそうな様子に益々居たたまれなくなる。「脈なしだよ。呑んだら遠慮なく帰るよ」笑みながら頷く。余裕が→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro ムカついたが、粉を掛けられたくらいでじりじり追い詰められてしまう自分にも苛立ちを覚えた。「愚痴とか、日頃言えないような話でも聞きますよ」恋愛下手な自分には出来ないようなゆとりある態度で彼は俺に微笑み続ける。「好みじゃないけど、忠実でモテそうだね」自嘲と→

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro 相手への呆れで溜め息混じりに返した。だが…「話を聞くのが好きなんですよ」そう笑い。少し好みではないがときめきそうになった。「オレ相手じゃ楽しい恋愛は望めないよ」聞かせてどん引きさせてやろうかみたいな意地悪心半分、いっそ彼みたいな本心の判りにくいタイプだから

虚無僧の柘榴石 @toxic_ruby

@Vincenz_ro こそ重い話を何も考えずに出来るのではないかという思い半分でちらりと過ぎったが、頭を振って思い直す。「いやいいよ、一夜の関係なら…ここまで来て酷いけど余所にしなよ」そう言うと適当にお代より多目にゼニーを置くと席を立とうとした。「まったくそそる表情しますね」