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2013年5月27日

トッポ

すげえよな
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スズコスケ @suzukosuke

「トッポってすげえよな」芝生に倒れ込み、胸を上下させる彼の息遣いに私はドキリとした。「そんなことない! 君だって、ううん、君の方がずっと……」スポーツタオルを差し出しながらそう言った。彼の荒い吐息がゆっくりと時を刻んでいく。高校三年。秋の高い空の下、私達は乾いた風に吹かれていた。

2012-05-25 17:43:15
スズコスケ @suzukosuke

「トッポってすげえよな」アイスティーの残りの氷をつつきながら、女はつまらなそうに相槌を打っていた。「そうね、すごいわね」「ちゃんと聞いてんのかよ」「聞いてるわよ、最後までチョコたっぷりなんでしょ」彼女はいささか彼に退屈していた。溶けた氷はグラスにぶつかり、澄んで綺麗な音を立てた。

2012-05-25 21:53:40
スズコスケ @suzukosuke

「トッポってすげえよな」私の父は死の間際、確かに私にそう告げた。幼い私はただそういうものかと思って聞いたが、思えばあれは遺言であり、また呪詛でもあったのだろう。こうして私はこの家に再び戻ってきた。「帰って来たよ、父さん……」玄関に鍵は掛かっていない。どうやら先客がいるらしかった。

2012-05-25 17:57:00
スズコスケ @suzukosuke

「トッポってすげえよな。どこがとかじゃない。とにかくその存在がすごい」「完全に同意だね。もはや音楽シーンで彼を見ない日はないと言っても過言ではないよ」「彼がこの街に来た夜の事を思い出す。まるで街全体がライブハウスのようだった」「トッポは僕の道標さ。これまでも、そしてこれからもね」

2012-05-25 17:22:48
スズコスケ @suzukosuke

「その点」彼はひとつ咳払いをすると、流れるような口調で語り始めた。「トッポってすげえよな。最後までチョコが注入されている、それもたっぷりとね。他にこのような菓子がこの世に存在しうるだろうか、いや」集まる視線を楽しむように、彼は居合わせた全員を一瞥してからこう締めくくった。「ない」

2012-05-25 21:26:03
スズコスケ @suzukosuke

「トッポってすげえよな」彼は言った。「最後までチョコたっぷりなんだぜ、信じられるかよ……」私はただ彼の最後の狂気に耳を傾けていた。「なあ信じられるかよ、俺は信じられるぜ……トッポって、トッポってすげえよな! なあ!」そして彼は薄暗い塹壕から身を翻すと、銃弾の雨に飛び込んでいった。

2012-05-25 21:34:52
スズコスケ @suzukosuke

「トッポってすげえよな」それは彼にとって客観的な事実であり、主観的な真実でもあった。彼がそれに出会ったのは、まだ暑さの残る九月。大学の図書館だった。いつもの席に荷物を置くと、隣に一人の見知らぬ女学生が座っていた。「トッポ、食べますか?」それが彼のトッポとの、彼女との出会いだった。

2012-05-25 22:05:06
スズコスケ @suzukosuke

「トッポってすげえよな」西日を背にした彼の表情は、どんなだっただろう。私はそれを知りたいような、そうでないような、妙な気持ちで聞いていた。最後までチョコたっぷりなのは分かっていた。それも、初めから。ただ、その事を彼の口から聞くことが、あの日の私はどうしようもなく怖かったのだった。

2012-05-26 18:40:34
スズコスケ @suzukosuke

「トッポってすげえよな」蝉時雨の境内で、兄は私にそう言った。まだ幼かった私にはよく分からなかったし、兄の悩みを知る由もなかった。尻の下の石段が、とても冷たかったのだけを覚えている。「どんなところがすごいの」この残酷な質問に、兄は笑って答えてくれた。「最後までチョコたっぷりなんだ」

2012-05-27 17:28:46
スズコスケ @suzukosuke

「トッポってすげえよな……」彼の訴えは、ひとつの銃声によって遮られた。硝煙と、少し遅れて血の匂いがした。確認するまでもなく、彼は既に事切れている。「片付けておけ」短い指示。私は作業に取り掛かる。彼の瞼を下しながら、私は決して届かぬ言葉を贈った。「最後まで、チョコたっぷりだもんな」

2012-05-26 13:53:16

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