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随分,予定からずれているけれども,線形代数の基本を復習,というより,学生たちに新たに学んでもらうつもりで,スタート.
2013-05-30 01:16:23ちょっと前までの,凡百の線形代数の教科書は,数ベクトルに限定して「ベクトルと行列」に特化したものから,数学が得意な学生にポンとベクトル空間の公理を提示して例を示しながら代数の1つだ〜というスタンスを全面に出したものまで,両端に割れ勝ち.
2013-05-30 01:16:52講義は,数学的なセンスがまだ花開いていない学生に,丁寧に意義とか発想の妙とかに触れながら,散策感覚で進む.昔,勉強したときあまり教えてもらえなかったことを教えてみようという.
2013-05-30 01:17:35で,ベクトル空間の公理は示した.ベクトル空間を語るには,空間の要素間を規定する加法とスカラー倍という2つの算法,さらにはスカラーの集合たる体(とりあえずは実数の集合)が必要.
2013-05-30 01:18:10ただ,公理的アプローチと一言でいう時に,ユークリッドが幾何の公理をまとめるアプローチと,ヒルベルト以降の公理的アプローチでは,発想が違う.これは注意が必要.
2013-05-30 01:18:58つまり,ベクトル空間について,部分空間だの線形独立だの基底だの議論を展開しているときに,具体的なモデルを念頭において分かった気になる人もいれば,念頭におかなくても分かってしまう人もいる(かもしれない).
2013-05-30 01:20:05初学者は,ベクトル空間について持っているイメージ(モデル)が,少ないのでひたすら数ベクトルで鍛えよというが,よくある線形代数の教科書であるが,それも行き方,そうでないのも行き方である.
2013-05-30 01:20:30さて,ベクトル空間について抽象的な議論をするときに,しょっぱなから分からなくなるのが部分空間だ.ベクトル空間Vの空集合でない部分集合Wが部分空間であるとは,Wが加法とスカラー倍について閉じていることと定義される.
2013-05-30 01:20:52これはそうなんだけれども,実は「ベクトル空間Vの空集合でない部分集合Wが,(Vと共通の体Kをもつ)ベクトル空間になりうるのか?」という,問題設定で部分空間を眺めてみるとよいと教えた.
2013-05-30 01:21:19冗談でいったのだが,羊羹を四分の一に切りとっても,羊羹だけれども,人間を首のところでちょん切ったら,どちらの部分も人間ではない(死んでるから).
2013-05-30 01:21:40まず,ベクトル空間Vの部分集合X = {x_1,x_2, ・・・, x_n,… }があったとして,n個のスカラーの集合{λ_1,λ_2, ・・・, λ_n}から∑λ_i x_i のような式が示すVの要素を線形結合とよぶ.
2013-05-30 01:23:27つぎに,上のXからスカラーの組み合わせを変えてありとあらゆる線形結合を作ってみたら,(1) ベクトル空間Vの部分空間になるの? さらには,(2) ベクトル空間Vそのものになることはあるの? という問題を考えるわけである.
2013-05-30 01:23:53(2)が肯定的に答えられるとき,集合Xはベクトル空間Vを生成するというわけだ.これは,集合Xがベクトル空間という「建築物」の必要なパーツということを意味しているといえる.
2013-05-30 01:24:20「ベクトル空間Vを線形結合を使って生成できちゃう集合Xが有限集合だったらいいなあ」さらには,「そんな集合Xができるだけ単純だったらいいなあ」という問題意識が,線形独立,基底の背後にある考えだよという話.
2013-05-30 01:24:49しまった.訂正せねば.もって回っていえば,定義でなく,「ベクトル空間Vの非空部分集合Wがベクトル空間になる必要十分条件は,Wが加法とスカラー倍について閉じていることである」という定理として理解するとよいという話.
2013-05-30 02:13:21