2010/09/16 ツイッター小説 お気に入りセレクト

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い短い物語です。 過去のまとめ http://togetter.com/id/laybacks
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@siroitijiku

「別れよう」と私に言わせたのは、あなた。知っているよ、あなたの中で、もう結論が出ていたこと。なにもかも、私に言わせないで。最後くらい、男らしくけじめをつけて。もうあなたの涙をぬぐうことができないんだよ。「好きな気持ちに偽りはないんだ」最後までずるい男ね、あなた。 #twnovel

2010-09-16 00:01:32
芹沢文書 @DocSeri

「奇妙な神輿を見た。よく見れば担ぎ手は人の形はしているものの薄くぐにゃぐにゃと波打っている。中央に鎮座しているのは黒ずんだ不定形のもので、何か骨のようにも見える。影が蠢いていると思ったら、影に見えたのは無数の蛞蝓で、ゆっくりと地面に謎の紋様を描いているのだ」 #twnovel

2010-09-16 00:30:14
ジュン @jun50r

#twnovel 彼女に地元を案内する。僕はこの町を知り尽くしたつもりだったけれど、どうやら違った。花屋、雑貨屋、風の心地よい公園のベンチ。彼女と歩く町は新しい発見に満ちていた。「ここ保育所ね」彼女が足を止めて言う。僕は彼女の手をひいて「まだ少しだけ早いよ」 #BGS_fes

2010-09-16 01:00:26
Takao Rival @takao_rival

#twnovel その地では舞い踊りながら魚を取る鵜が名物であった。舞い踊る鵜を操る鵜飼いもまた、見事な舞の名手達だった。かつてこの地を治めた藩主が鵜と鵜飼いの舞いに感銘を受け、自ら鵜に餌の魚を下賜したと云われている。言い伝えによれば魚を食した鵜はこう鳴いたそうだ。「まいうー」

2010-09-16 01:26:40
村山慶@12/3コミティアV56b、6/13セントールの悩み24巻 @hitonome

#twnovel 暗い町で、間口が狭く奥行が深い宿に泊った。所謂鰻の寝床だ。夜寝ていると大きく黒く長いものが入ってきてみちりと部屋を満たした。朝、仲居は粘液塗れの私を見て急に愛想が良くなった「神様に好かれたんどすな」。もしあれが神であっても盲目だ。何故なら私は鰻屋の娘なのだから。

2010-09-16 01:56:05
伊香 @icahotaru

#twnovel 太陽と月が喧嘩をしている。 「俺がいないと光ることもできないくせに」 「いつもばかみたいに照りつけるばかりでばかみたい」 「ばかって三回も言ったな」 「なによ!」 「なんだよ!」 激しい火花があちこちに飛び散っては、小さな星になる。僕の仲間がまた増える。

2010-09-16 02:08:55
秋月蓮華 @akirenge

「寒くなってきた」双子の妹は身体を震わせる。異常気象が続いていたというのに、唐突に涼しくなった。「パーカーを着ましょう。温かいですよ」「探すの面倒だからこっちで」妹は背後からボクに抱きついた。「暑いです」「こっちは温いよ」気がすむまでそのままにしておいた。 #twnovel

2010-09-16 02:19:06
ヒデユキッス @hideyukiss

#twnovel 私は夢を見ていた。晴れた海の上で私は仰向けになってゴムボートに乗っている。とても気持ちがいい。私は目が覚める。部屋が水浸しになっていることに驚く。これは何?「ごめん、寝汗かいちゃった」彼が私に謝る。私のベットは彼の寝汗の海で浮いている。まだ私は夢を見ていた。

2010-09-16 02:24:10
重藤 貴志[Signature] @Siqoqtaq

時計の秒針が真円を描く。雨の音。朝が来る前に目を閉じる。遠くで聴こえる車のクラクション。脳裏をよぎる幾つものイメージ。風が強く戸を叩く。深く沈む胸の痛み。眠りを妨げる夜の渇き。舌打ちを一つ。繰り返す溜息。いっそのこと、泣いてしまえば、もっと楽になれるのだろうか。 #twnovel

2010-09-16 04:10:18
@nksmshk

#twnovel 水曜日の雨の夜。ネコが雨宿りをしていたから、つられて私も雨宿りした。私はずっとネコを眺めていたけれど、ネコは私を見てはくれなかった。

2010-09-16 08:11:13
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 私の地元は長野県の飯田市です。飯田市はいつも涙のように雨が降っています。飯田市は永遠に日曜日の午後です。飯田線から見える風景は雨に煙って、哀しく美しいです。…全て私の記憶の中の、永遠に変わらない飯田市。 #BGS_fes

2010-09-16 09:05:32
泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 情報通を自認する知人がいて、どこの課の○○は~、隣のビルの警備員は~、と知る必要のない人物の事までぺらぺらと喋る。ある時話しているのが僕だというのを忘れて僕の情報を開陳し始めた。気配りは出来るが女の人の尻を目で追う癖がある変態、と言うのでうんうんと頷いておいた。

2010-09-16 09:24:53
ぼろいねこ讃 @nekoboro

ひげ虫は道を渡る。土手から田んぼに向かって道を横切る。何百もの黒い集団はゆっくりと、それぞれ、天に運を任せているとしか言いようが無い速さで進む。たまに車が通れば、それまで。羽がもらえるのは、まだ先。ひげ虫、毛虫、嫌われ者の子供たち。 #twnovel

2010-09-16 09:57:11
Tohru Ishizuka @operahaus

「穴」三丁目のマンホールの穴が急速に拡大しているというので見にいくと、すでに七丁目の交差点までのみこまれていて、いま自分の足元まで。あわてて逃げるが穴のほうが早く、あっというまに呑みこまれてしまった。気がつくと部屋のなかだったが、新聞の文字が逆さまだった。 #twnovel

2010-09-16 10:23:46
ひょろ @hyoro4779

『歯壷』 #twnovel 乳歯が抜けたら、下の歯は屋根の上、上の歯は縁の下に。一般的にはこうだが、母の実家では違うらしい。歯壷というものがあり、そこに歯を入れるのだという。母の記憶によれば、抱えて持つくらいの壷に3分の2ほど歯が詰まっていたそうだ。代々継がれてきたものらしい。

2010-09-16 12:47:22
るっぴぃ @ruppixi

CDショップで男の子を見つけた。たまに見かける男の子。ストーカー、なわけないか。私だし。あちこちで見かけるのは趣味が同じだからなのかな?こっそりCDを覗きこむ。私の好きなアーティストが盤面で大きく手を広げていて、今度彼と話してみたいと、そう思った。 #twnovel

2010-09-16 12:53:26
若林敬 @wakakey

粗品として渡された菓子折の中は4×4の正方形に区切られておりまして銘菓ひよこが入っているはずだったのですがぴよぴよとないているのはまだ目も開かぬ様々な色の仔猫たちで一通り愛でたのちはふたを閉められます。 むねきゅんと 笑みだけ残る よい粗品。 #twnovel

2010-09-16 13:05:09
TAG @bttftag

#twnovel ANA、JALに続き、民間航空会社・忍者航空(NJA)が旗揚げした。NJAでは機内への持ち込み物品が大幅に緩和されており、手裏剣も日本刀もOK。さらに客室乗務員は全員忍び装束という懲りようだ。早くも海外からの渡航予約が殺到しており、業績見込みは上々だという。

2010-09-16 17:07:49
チリカ @sakyou00

雨を眺めていた。肩にかけたブレザーを引き上げる。クリーニングから帰ってきたコレも来週にはもう皺がつくだろう。静かすぎる教室で先生が一人の名前を呼ぶ。はい、と返事をした彼の背を見た。やがて朗読を始めたので目を閉じてその声を聞く。世界は、彼と雨だけで構成されていた。 #twnovel

2010-09-16 18:08:25
江田・K【小説書き】 @koudakei

「眼鏡は?」「かけてる方がいい」「髪は?」「短いのもいいよな」「背は?」「俺よりちょい低めくらいで」「性格はほどほどにキツくてそこそこ優しけりゃいいよ」「ねえ」「ん?」「私と全然違うんだけど」「ああ、悪い悪い。言い忘れてた。お前であればなんでもいい」 #twnovel

2010-09-16 19:25:31
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel ふしぎな瞳だった。右眼は青く、左は金色。地球と月よ、悪戯っぽく彼女は笑った。「月のほうは涙が出ないの。悲しい時も」彼女はいつも朗らかで、僕が見たのは一度きり。祖国へ帰るんだ。別れを告げた時、みるみる潤む青い眼を、彼女は閉じた。月だけが黄金に輝く。笑顔のサヨナラ。

2010-09-16 19:53:13
roardel @roardel

手編みのマフラーの目を数える。1、2、3…最初の頃は一目10秒くらいかかってた。だんだん速く編めるようになったけど、それでも積算すると何十時間。彼のことだけ考えてた時間がそれか。馬鹿よね、私。編みかけのマフラーをパサリと机の上に投げ出して。彼を振って3日目の夜。 #twnovel

2010-09-16 20:07:23
ききき @ssk_mocco

#twnovel その家族は食卓をぐるりと囲むように座り夕飯をつつく。交わされる会話は愚痴ばかりで、食卓の上の空気はどんどん濁っていくようである。せっかく美味しく煮えたのに—。と私(旬のかぼちゃ)もその空気に濁りを加えて、長女の箸につままれ咀嚼されるのであった #twnvday

2010-09-16 20:19:29
@K_Ichida

#twnovel 戦国時代、ある武将が妖怪に襲われ、身体のパーツをいろいろな妖怪に持ち去られた。妻は義兄とともに、妖怪を倒し夫の身体を奪い返していった。だが、最後のパーツを取り戻した妻は、それを捨ててしまった。驚く義兄の股間を切り落とすと夫につけた。「こちらの方が具合がよい」

2010-09-16 20:47:27
らし @rashi_catwillow

#twnovel 南極圏上空を漂流していたUFOは氷上に淡い光を見つけた。補給がほしい。すがる思いで降下する宇宙人。ペンギンの群れが発光していた。身をよせあって、振動して。体格のよい一羽がぶわあぁとオーロラを吐き出す。あがる極光の狼煙。一羽また一羽と続く。空腹も忘れて、みとれた。

2010-09-16 20:51:42