ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/04/20~21

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
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layback @laybacks

少年は空が好きだった。いつも上を向いて歩いていた。よく躓いた。側溝に落ちた。遂に車に撥ねられた。少年はくるくる回って木に引っかかった。引っかかったまま上空を旋回する鳥に手を振った。鳥は舞い降りた。一口に少年を飲み込んだ。鳥は飛び立った。やっと少年の願いは叶った。 #twnovel

2012-04-20 00:41:40
ぼろいねこ讃 @nekoboro

夢のなかで、わたしはロバを引いていた。ロバには別のわたしが乗っていたけれど、わたしが二人いることは問題ではなかった。ただ、ロバが疲れて歩かなくなることが気がかりで、ロバに乗っている方のわたしも、そのことを心配していた。目を覚ますと、鏡がわたしの姿を映していた。#twnovel

2012-04-20 02:20:30
@KizukCQ

#twnovel 「花筏と云うんですって」桜の花びらが散り、川面を覆い尽くすように流れ行く様に見惚れていると、同様に眺めていた女性が呟いた。なるほど、これは桜の川下りだ。幾千の花びらは春の終わりを告げながらまだ尚美しさを誇る。流し雛の様にも思え、ぼくは静かにその光景を見送った。

2012-04-20 03:08:59
@K_Ichida

#twnovel ツイッター神は預言者に言葉を託しました。「お前は、自分のアカウントのフォロワーが気に入らなくなり、新しいアカウントを作る。しかしそのフォロワーも気に入らなくなる。そしてまた作る。お前の人生は、その繰り返しだ。なぜならフォロワーは自分を映す鏡だからだ」

2012-04-20 05:51:46
銭喰 @zeniqui

#twnovel 人口2百名の、無人の町がある。町には誰もいない。始めは人口数十名の町だったが、一斉に夜逃げをして書類の上にだけ住民が残った。やがてどこからか聞き付けた多重債務者がやって来ては住み着き、やがていなくなる。周辺の町が過疎化する中、今でもこの町の住民は増え続けている。

2012-04-20 07:42:04
キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel 俺様の下には本当にロクな奴がいない。この俺様お月様が明るく世の中を照らそうとこんなに頑張っているのに。それとも俺様の照らす有難い光が逆に奴等をダメにしてしまっているのか。「違うから。あんたにそんな力ないから。そもそもあんた汚い水溜りに映ってるお月様だから」

2012-04-20 08:30:19
プルコサミン @Plucosamine

肌は吸い付くような極上の感触であった。側頭部の通信機を外すと束ねられたコードが見え、奥では無数の線にニューロンを思わせる光が行き交う。僕が溜息をついてそれを戻すと機械的な音で嵌り込んだ「マスター心拍数及び呼吸の乱れが見られます」「それは恋情だよ」君は小首を傾げた #twnovel

2012-04-20 13:52:11
@accoutname

#twnovel 切り落とされた両腕を持ち帰りなさい。風が強い時は身を低くして目を閉じなさい。足が震えて進めないなら私の乳房を思い出しなさい。いつかきれいな光が見えますが、それは偽物です。いつか汚い罵り声が聞こえますが、それが本物です。声をたよりに、木の匂いがする方向へ行きなさい

2012-04-20 15:53:14
あやかしbot @宵月楼 @ayakashi_bot

闇を切り取り、蛍火を嵌め込んで、黒猫を作った。黒猫はゆっくりと伸びをすると、僕を見た。「あんたは俺に何を期待しているんだ?猫が他人の思い通りになるはずもないのに」そしてぽおんと屋根を越えて行ってしまった。それでいい。自由にどこかへ行って欲しかっただけなんだ。 #twnovel

2012-04-20 15:55:00
モギイ @fluffymoggie

#twnovel 皇帝に新しい服を着せたら格好良くなりすぎた。地味な服を選んだのになあ。今日は電車に乗せてやろうと駅まで歩く。彼は切符の販売機には大興奮したが改札機は怖いらしく通るまでに数分を要した。おいしいモンブランが食べたくなって、学生時代の記憶を頼りに小さな喫茶店を探した。

2012-04-20 17:00:01
汐見一穂 @ipposhiomi

彼はお酒が好きだ。映画も好きだ。文庫本のページの端が折れる事を嫌う几帳面さとテレビのリモコンを平気で床に放り出す横柄さを兼ね揃えている。しかし彼も僕もそういった事は気にならなくなっていた。彼は僕の酒呑み友達であり、親友であり、父親である。 #twnovel

2012-04-20 18:44:52
黒目ソイソース @ghostsoysauce

薔薇がいつも通り抜ける公園のベンチに中年男性が寝ている。顔に新聞を被って爆睡する彼の腹の上に、鴉が一羽降り立った。鴉は徐にくちばしを、中年太りの腹に刺した。鴉がくちばしにはハンバーガーを咥えられていた。男性の腹には傷一つなく、鴉はハンバーガーを咥えて飛び立った。#twnovel

2012-04-20 22:40:19
tokoya @tokoya

#twnovel 苦難の末にその壷を手に入れた男は、封じられていた魔人に向かって迷わずこう願った。自分を不老不死にしてくれと。魔人は首肯し、願いは叶えられた。そして数百年の歳月が過ぎた。もちろん男はまだ生き続けていた。全身の細胞が不死のまま新陳代謝をくり返す、巨大な肉の塊として。

2012-04-20 22:55:09
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 彼女には穴が空いていた。僕はその穴から目を逸らした。「どうしたの」と彼女が聞く。彼女の声が僕を捕らえた。「君が怖い」と僕は言った。「怖くなんてないよ」と言いながら、彼女は僕のからだに指の先で触れた。僕は彼女の穴を見た。彼女の穴が僕を見る。彼女の両腕が僕を包んだ。

2012-04-20 23:34:02
祐樹一依 @kazui

待ち合わせのアーケード街のいつもの場所で、彼女は先に着いて待っていたようだった。「ごめん、遅れたかな」「ううん、時間通りだよ、大丈夫」そう言って彼女は笑う。けれど、傘の下で彼女の身体はしっとりと濡れていた。「じゃあ、行こうか。何処がいい?」「濡れないところ」 #twnovel

2012-04-20 23:34:21
ゆりしま @yurishima

「ふたりなら大丈夫。何とかなる」この合言葉を最初に口にしたのは6年前の新婚旅行。失敗も間違いも、互いを責めずに楽しもうとふたりで誓った。 #twnovel この言葉を最後に聞いたのはついさっき。なかなか三人になれないと泣くわたしに、あなたが言った。「ふたりなら大丈夫。何とかなる」

2012-04-21 01:28:41
雨音 @candypeal

懐かしい匂いのする茶色い紙袋の中から取り出したのは毛糸玉みたいなその場しのぎの愛情で、ぴりっと静電気が効いていた。マフラーもセーターももう要らないのよ。春らしい、夏に続くものが欲しいの。困った顔の君が思案する間に紙袋の匂いを肺に詰め込み、満ち足りたふりをした。 #twnovel

2012-04-21 02:34:00
“さ(*´く`)ら”たん @sacra_d15

#twnovel 自分の心にしがみつくのはやめた。変わることへの恐怖を受け入れることにした。弱さを味方につけることにした。自分の足で立つことにした。寄りかかる人はもういない。荷物は私が持つのだ。泣くのもやめた。勿体無いと感じた。私の涙はそんなに安くない。空は青い。まだ頑張れる。

2012-04-21 02:47:29
オガタx世界卵 @eggofuniverse

#twnovel 目醒めて暫くしてから軽い吐気がすることに気付く。うっかり吐いてしまわぬよう注意を受ける。これ以上魑魅も魍魎も増やすわけにはいかぬ。それでも増やすならせめて虹が良い。ああいう虫なら吉祥として慶賀である。あるいは星を。あるいは濃黒を。ところが空噦きから無が産まれた。

2012-04-21 03:20:45
桂木みお @kusatteruneko

#twnovel 暗いけど手探りで動く。できるだけ音がしないように布の上を進んでいくと大きな布団の塊にたどりついた。隙間からごそごそと入り込んで、こうしていれば苦しい夢は見ないから、あったかい腕にぎゅっとしがみつく。大丈夫。こいつは生きてる。小さな金髪の生き物はそっと目を閉じた。

2012-04-21 03:20:54
オガタx世界卵 @eggofuniverse

#twnovel ドクターはシャーレからぼくを掬い取って美味しそうに舐めるけど猛毒だって分かってやってるんだよね? ねえドクタードクター、指先にこびりつき燐光を放つぼくを見て微笑むのはやめてくれないかな、いくら実験体でも生きてるし視覚があるんだ空中に見えない眼球を浮かべてるのさ。

2012-04-21 03:31:50
あいまい文庫 @aimaiZ

声を出さずに思っていることを伝えようゲームをやった。いちばん上手なのは父ちゃんで、下手なのは姉ちゃんだった。でも姉ちゃんは僕の思ってることを声に出して伝えるのはものすごくうまくて、心を読まれているのかと思った。母ちゃんは両方とも上手だったから優勝した。 #twnovel

2012-04-21 03:38:32
❄︎ @juttarainn

コンコン.遠慮がちに戸を叩く音で深夜に目が覚める.小窓をあけてのぞき込むと見慣れた顔がこちらを見上げている.またお前か.夜明けまでまだ時間がある.仕方ない、入りなさい.今日はどうしたんだい.それは紙と鉛筆を差し出して言う.眠れないので羊の絵を描いて欲しいんです. #twnovel

2012-04-21 03:54:21
ぼたゆき @botayuqui

#twnovel 「アナダ、オ帰リナサイ。オ風呂ニジマスカ。オ食事ニジマスカ」いつも通り外国人妻の出迎えを受け、先に夕食を済ませる。おかずは焼いたニジマスだ。その後、ニジマスの泳ぎまわる浴槽で入浴。「オ風呂アガッタラ、ビールト、オツマミニジマスカ」…せめて枝豆が欲しい。

2012-04-21 06:36:52
七歩 @naholograph

ふわふわの王国。ふわふわの王国。ここでは私は主じゃないの。仕える私はしあわせで、そうしてとても満たされて。瞳を閉じればなんにでもなれた。瞳を閉じればどこにだって行けた。明日の事なんて考えなかった、小さな頃によく似てる。ふわふわの王国。おふとんの王国。#twnovel #創作都市

2012-04-21 08:11:27