ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/04/20~21
#twnovel 空の青を喰らった獣がいた。その獣は体毛を青く染めた。空は、ある雨粒の一滴に言った。「青を取り戻してたもれ」雨粒が断わる間もなく、空は雨粒を大地に落とした。落ちた雨粒はいつの日か獣の体内に吸収され、青色を手に入れて排泄され、空に帰る。そこまで見通して空は安堵した。
2012-04-21 09:17:04二次元への移住が始まった。二次元では願いが叶う。友情が手に入る。嫁が出来る。「叶えて貰いたきゃわかるよな?」神にプログラムをかいていただくためにはお布施が必要だった。#twnovel 「二次元国は牢獄だ。搾り取れ」そして神にも神がいた。移住しなかった富裕層は箱庭牢獄を眺めて笑う。
2012-04-21 10:17:59#twnovel 彼は私に夢中だ。それに気付いたのは、私も彼をずっと見ていたからだ。彼の視線が纏わりつく。だが彼は絶対に私に近づけないのだ。ガラス越しに私はわざと赤い尾びれをひらひら振った。彼は豊かな白いしっぽを揺らして、恨めしそうに、けれどもうっとりと水槽の中の私を見る。
2012-04-21 15:11:46微睡みの中、左手の感覚がないことに気付く。いつものことだ。ただ、いつもと違うのは左腕の上に彼女の頭がないことだ。視線を周囲に巡らすと、部屋の中をハリケーンでも通過したかのような有り様だった。まずは起き抜けにエスプレッソを、という訳にはいかないようだ。#twnovel
2012-04-21 20:53:13#twnovel 新しい物語を考える際、まず蝶を思い浮かべる。いつも扉を示してくれる蝶が、今日初めて逃げた。追うと蝶は見知らぬ少女の元にいた。返してくれ。少女は蝶を二つに裂くと片方を口にし、もう片方を僕の口に突っ込んだ。咀嚼する。……そして僕はもう物語を考えない。僕が物語である。
2012-04-21 21:46:14#twnovel 推理小説の最後の頁をついつい見てしまう人がいるように、人生の結末を先に覗いてしまう人がいるのです。そして気に入らないから取り替えてくれだなんて。勝手なものですよ。そんな輩にはこちらの最終章が袋とじになった人生を渡してやるのですよ。まあ結末は同じなんですけどね。
2012-04-21 22:13:34#twnovel 急に景気がよくなった。しかし、その原因はわからなかった。どこかで雇用が発生し、消費が加速しているのだが、表面に出てこない。ともかく、景気は谷底から這いあがった。このとき、都心の超大深度地下に建設された秘密基地は、百年後、カ星人侵攻に対抗する人類唯一の砦となった。
2012-04-21 22:18:44ディーラーが札を捲る。痺れる瞬間。時が止まったかに感じる。スペシャルルームで最後の勝負。少女に先は無かった。負ければ人生は終わる。カジノで最初に両替したチップは秒。ゲームを移るたびに分から時へ、ここは年のゴールドチップがレートだ。そして、勝った。時を賭ける少女。 #twnovel
2012-04-21 22:37:58#twnovel 夢枕に立つ神さまが、明日降るそれがあなたにとって最後の雨となるでしょう、とお告げをしたので、彼は屋上から身を投げ、みずからを犠牲としたが、誰もそのことに気づかない。
2012-04-21 22:49:23彼のことが好き。そんなことを信じたくはなかった。夜になると誰にも見せられない詩のような妄想のような手紙を書き散らした挙げ句眠れなくなったり、食欲がなくなったり、新しいメイクを覚えたり。これらは全て、あたしの中に住むちいさいおっさんの仕業。断じて恋なんかじゃない。 #twnovel
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