先輩は唖然とした表情で、「あずにゃん…って何だ?」とこれまた僕ではなく彼女を冒涜するような一言を発した
2010-09-17 01:19:06既に頭に来ていた私は「だからあずにゃんは、」と更に捲くし立てようとしたところで、口に何かを突っ込まれた。
2010-09-17 01:20:22チーズだった。先輩が酒の席で好んで食べていたカマンベールチーズ、というヤツだった。それを私の口に押し込んで、それから手に持っていた缶を一本私に差し出して、「飲めよ」
2010-09-17 01:22:36理性的に考えればその時の私は未成年で、だからそれを理由に断ることは出来た筈だ。事実、そうした。だが、それは建前でしかない。
2010-09-17 01:23:38迷い、先輩の差し出す缶を取ろうと手を伸ばしたところで、「俺が飲む」男らしい、という表現が当てはまってしまいそうな、そんな飲みっぷりだった。
2010-09-17 01:25:07我関せず、といった風に何かを喋るあずにゃんを先輩は完全に無視して、私に顔を近づけて「オマエはなぁ、もうちょっと人と関われよ。話をしろよ。なぁ?」酒臭い息と、甘いシャンプーの匂いが交じり合って、私は妙な気分になった。多分錯覚だろうが
2010-09-17 01:28:59あずにゃんって何かわからなかったんだけどコレのことだったのか・・・ッ! RT @kobuT_3: あずにゃん長距離狙撃モード http://twitpic.com/2ozy7z
2010-09-17 01:29:54そう先輩に諭されても、分からないものは分からないのだ。人と話すことなんて面倒だし、それよりもアニメを見ていた方がずっと良い。更に言うなら、あずにゃんならなお良い。ほら、あずにゃんは今でも喋ってるし
2010-09-17 01:31:54それでも先輩は何事かを言っている。「そんなことじゃ友達の一人も出来ないぞ」だとか「そもそもオマエ、恋人とか居ないだろ」だとか「アニメとかばっか見ててキモい」だとか
2010-09-17 01:34:19だから私は「あずにゃんは友達だし恋人だし嫁だし。それにアニメは凄いんだ。私の知らない世界を見せてくれる」その言葉に先輩は何を思ったのか、私の手元にあったDVDプレイヤーを引っ掴んで、投げた。投げ付けた。
2010-09-17 01:45:49そして先輩は私の額を押さえつけてベッドに押し倒そうとした。勿論私は抵抗なんて出来る筈もなく、されるがままだった。先輩は、私の瞳を真っ直ぐ見つめて、こう言った
2010-09-17 01:48:49「現実を見ろ、バカ野郎!私はココに居るんだぞ、クソ野郎!オマエを見てるヤツが側に居るんだぞ、ゴミ野郎が!」目を真っ赤にして、先輩は涙を流していた。
2010-09-17 01:51:19グーで殴られた。思いっきり、殴られた。唇が切れて、口の中に鉄の味が広がった。それから3発を殴られて、そこで先輩は無言で立ち上がりDVD再生機械へと歩み寄り、思い切り蹴りを入れて、そして部屋を出た。
2010-09-17 01:56:04次の日、先輩は何事も無かったかのように私に接してくれた。「おはよう」から始まって、「疲れてない?」ときて、「今日もお疲れ様。また明日」である。
2010-09-17 02:00:12だがその言葉は、私だけに向けられているものではなく、私以外の誰に対しても向けられているものだった、とすぐに気付いた。
2010-09-17 02:02:10多分、それは大きな進歩であったと思う。人の心の機微を読むことは元より、人が何かを考えているか何て、ほんの欠片も気にすることはなかったのだから。だから私は、この先輩には感謝をしてもし足りない。
2010-09-17 02:03:37その気持ちを言葉に表すのが憚られて、だから私はプレゼントを贈ることにした。私の大好きな『あずにゃん』の小さなマスコット型のキーホルダーだ。携帯電話に付けれるようにストラップ付きだ。
2010-09-17 02:04:44小さな包み紙に包んだソレを先輩に渡すと、先輩は妙に喜んだ。「あ、私の誕生日、知ってたんだ?ありがと」そして先輩は、包みを開けた
2010-09-17 02:07:01「可愛い女の子の人形だねー。何のキャラかな?」そう尋ねる先輩に、私は知識をフル動員して、「これは今流行りのアニメキャラの、しかも私が好きなキャラでして、声優はなんとあの、ちょっと前にはあのキャラをやってもいた、」
2010-09-17 02:09:12「あー、それはー」先輩は思わずマスコットを空に放り投げようとして、だが、思いとどまったようだった。「そうだね、せっかく君がくれたものだから。うん、ありがとう。嬉しいよ」そう、笑顔を見せた。
2010-09-17 02:10:52