4月1日の覚書

忘れちゃいけない、と毎年思うこと。 覚えてなくちゃいけない、と毎年誓うこと。
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だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

余り思い出したくない話でもあり、関係者の誰もが口を噤む話であり、だが、私の何かを決定的に変えた出来事があった。

2010-09-17 15:08:09
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

その日付は、今でもハッキリと記憶に刻まれている。冗談にしては笑えない。嘘を吐くにしてももう少し人の気持ちを考えて欲しい。

2010-09-17 15:10:30
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

いわゆる四月馬鹿。エイプリルフール。何年も前の4月1日のことである。

2010-09-17 15:11:41
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

彼と出会ったのは、そのおよそ1ヶ月前。私が始めて配属された仕事先でのことである。

2010-09-17 15:16:42
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

短く刈り込んだ髪、線の細い印象のある、だが真面目で几帳面な青年であった、と記憶している。

2010-09-17 15:18:20
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

彼の仕事は事務がメインで、パソコンに向かい書類を黙々と作成する様が印象的だった。当時の私はパソコンのスキルなぞほぼ皆無で、主にゲームしかしておらず、大学の論文を作るのにWordを少々使った程度でしかなかった。

2010-09-17 15:23:25
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

だから、ほんの少しだけ憧れた。まだ若いのに、凄いなぁ、と。

2010-09-17 15:23:54
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

若い、などと言っても、私とは幾つも年が変わらないのだ。今にして思えば可笑しな話ではあるのだが、しかし、当時の私は純粋に凄い、と思ったのだ。

2010-09-17 15:26:04
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

それはその職場、事務室において一番若いのが彼だったから、ということもあったかもしれない。

2010-09-17 15:26:50
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

記憶を手繰り寄せれば、彼は確か二十歳だった筈である。一月に成人式を終えたばかりの、新成人。

2010-09-17 15:28:06
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

いや、飲める歳になっていて、だから飲むことは当然のことであったのだろう。

2010-09-17 15:30:49
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

金曜の夜のことだ。私は、職場の皆が早々に仕事を切り上げて帰り支度をし「お疲れ様でした」だの「今日は街で飲むか」などと談笑しながら事務室を出て行く姿を見送った。

2010-09-17 15:35:39
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

その時事務室に残ったのは、私と彼の二人きりだった。そしてその時、多分、初めて会話らしい会話を交わした。

2010-09-17 15:36:21
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

「あの、この辺りの道路地図って、どこかにありませんか?」

2010-09-17 15:37:24
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

色気の欠片も無ければウィットに富んだものでもない。それは単なる事務仕事の一環、その延長線上の会話でしかなかった。

2010-09-17 15:38:32
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

すると彼は、「ありますよ。少しお待ち下さい」とこれまた当たり障りの無い答えを返してくれて、それから「お待たせしました」と地図を持ってきてくれた。

2010-09-17 15:40:21
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

今にして思えば、ここが後悔の分岐点だったかもしれない。

2010-09-17 15:41:51
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

お互いが敬語で話をしていた。そのことが、私と彼との関係を物語っていた。

2010-09-17 15:51:13
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

多分彼からすれば、私に対して話しかけることは躊躇われたんだろう。私はその職場に来て1ヶ月程の新人であった。しかし、彼にしてみれば、間接的ではあるが上司にあたる立場にあって、しかも年齢は上だ。

2010-09-17 15:52:04
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

私は私で、まず壊滅的に話下手で、誰かと会話するということ自体が苦手だった。だから自然、沈黙する。聞き上手、と言えば聞こえは良いが、しかし、相手が喋ってくれないことにはどうしようもない。

2010-09-17 15:52:58
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

故にお互いの距離を測りかねて、いや、測りかねて困っていたのは私だけだったかもしれない。

2010-09-17 15:55:18
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

彼は彼の仕事をこなし、「お疲れ様でした」と私に告げて去っていった。金曜日。仕事終わり。土日は休日。彼の顔は、ほんの少しだけ嬉しそうだった。

2010-09-17 15:56:47