![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
余り思い出したくない話でもあり、関係者の誰もが口を噤む話であり、だが、私の何かを決定的に変えた出来事があった。
2010-09-17 15:08:09![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
その日付は、今でもハッキリと記憶に刻まれている。冗談にしては笑えない。嘘を吐くにしてももう少し人の気持ちを考えて欲しい。
2010-09-17 15:10:30![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
彼の仕事は事務がメインで、パソコンに向かい書類を黙々と作成する様が印象的だった。当時の私はパソコンのスキルなぞほぼ皆無で、主にゲームしかしておらず、大学の論文を作るのにWordを少々使った程度でしかなかった。
2010-09-17 15:23:25![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
若い、などと言っても、私とは幾つも年が変わらないのだ。今にして思えば可笑しな話ではあるのだが、しかし、当時の私は純粋に凄い、と思ったのだ。
2010-09-17 15:26:04![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
金曜の夜のことだ。私は、職場の皆が早々に仕事を切り上げて帰り支度をし「お疲れ様でした」だの「今日は街で飲むか」などと談笑しながら事務室を出て行く姿を見送った。
2010-09-17 15:35:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
その時事務室に残ったのは、私と彼の二人きりだった。そしてその時、多分、初めて会話らしい会話を交わした。
2010-09-17 15:36:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
色気の欠片も無ければウィットに富んだものでもない。それは単なる事務仕事の一環、その延長線上の会話でしかなかった。
2010-09-17 15:38:32![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
すると彼は、「ありますよ。少しお待ち下さい」とこれまた当たり障りの無い答えを返してくれて、それから「お待たせしました」と地図を持ってきてくれた。
2010-09-17 15:40:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
多分彼からすれば、私に対して話しかけることは躊躇われたんだろう。私はその職場に来て1ヶ月程の新人であった。しかし、彼にしてみれば、間接的ではあるが上司にあたる立場にあって、しかも年齢は上だ。
2010-09-17 15:52:04![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
私は私で、まず壊滅的に話下手で、誰かと会話するということ自体が苦手だった。だから自然、沈黙する。聞き上手、と言えば聞こえは良いが、しかし、相手が喋ってくれないことにはどうしようもない。
2010-09-17 15:52:58![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
彼は彼の仕事をこなし、「お疲れ様でした」と私に告げて去っていった。金曜日。仕事終わり。土日は休日。彼の顔は、ほんの少しだけ嬉しそうだった。
2010-09-17 15:56:47