#往来新人 「短歌往来」今月の新人欄を読む・第二回

「アラブの半月刀」こと千種創一(@chigusasoichi)と「砂丘の埴輪」こと吉田恭大(@tanka_daya)の二人による短歌評。短歌総合誌「短歌往来」掲載「今月の新人」の作品取り上げていきます。
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千種創一 @chigusasoichi

#往来新人 第二回】吉田恭大(@tanka_daya )・千種創一(@chigusasoichi )による批評ユニット #砂上の塔 で短歌総合誌「短歌往来」の「今月の新人」欄を取り上げていきます。本日6月20日20:00ごろ開始。 

2013-06-20 19:28:19

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千種創一 @chigusasoichi

1.里芋の葉は陽に透けて胸骨のように浮かんだ朝の葉脈 /大橋比呂代「何気ないこと」(短歌往来2012年11月号) #往来新人

2013-06-20 20:00:15
千種創一 @chigusasoichi

2.青空が今日は高いと言う君の視線の先に私はいない /大橋比呂代「何気ないこと」(短歌往来2012年11月号) #往来新人

2013-06-20 20:00:33
千種創一 @chigusasoichi

3.ビニールの傘に張り付く雨粒は知らない海の色をしている /大橋比呂代「何気ないこと」(短歌往来2012年11月号) #往来新人

2013-06-20 20:00:55
千種創一 @chigusasoichi

4.側溝の中から金網押し上げる勢いを持ち伸びる雑草 /大橋比呂代「何気ないこと」(短歌往来2012年11月号) #往来新人

2013-06-20 20:01:13
千種創一 @chigusasoichi

5.ただいまと言えない実家の玄関でお邪魔しますと靴を揃える /大橋比呂代「何気ないこと」(短歌往来2012年11月号) #往来新人

2013-06-20 20:01:25

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千種創一 @chigusasoichi

#往来新人 は吉田恭大(@tanka_daya )と千種創一(@chigusasoichi )で短歌往来の「今月の新人」欄の歌を批評していく企画です。第二回は2012年11月号の大橋比呂代さん。では千種から喋ります。

2013-06-20 20:03:25
千種創一 @chigusasoichi

1の里芋の歌。二句目までの主語は「葉」、三句目以降の主語は「葉脈」、と少し主述関係がふらふらするんだけど、そのふらつきが、結句と響きあってる。結句「朝の葉脈」は、単純に朝に見た葉の葉脈としても読めるし、抽象度を高めて朝という概念の葉脈としても読めるのがいい。 #往来新人

2013-06-20 20:12:21
千種創一 @chigusasoichi

また、二句目「葉は陽に透けて」という2・2・3という韻律の骨っぽさが滑らかに「胸骨」につながる。植物を擬人化する歌は多いけど、「骨」という人と物質の間のものを比喩に使うのは割と新鮮では。ちょっと深読みしすぎかな。では、吉田さん、どうでしょう。#往来新人 .

2013-06-20 20:16:42
千種創一 @chigusasoichi

「朝の葉脈」で久石ソナくんの歌(たしか)を思い出した。部屋にロープを張って夜を干す、みたいな歌(たしか)で、いま手元の「ねこま」とか「はならび」とか探してるんだけど、だやさん覚えてる? #往来新人 .

2013-06-20 20:25:08
千種創一 @chigusasoichi

「ねこま」は詩誌でしたね。

2013-06-20 20:32:38
Каракозов @hikaritoshigo

申し訳ない、今パッと出てこないです。ソナの作品かなあ?ありそうな気もするけど。 #往来新人

2013-06-20 20:40:00
Каракозов @hikaritoshigo

一首眼の歌が一番構造的に複雑なんだけど、一番歌として読み応えがありますね。むしろ他の歌が素直すぎて、散文を57577に当てはめたような印象になってしまう。 #往来新人

2013-06-20 20:49:15
Каракозов @hikaritoshigo

どの歌も上から順につながるんですね。具体的には四首目の、結句の「雑草」を主語に全ての語が掛かって、しかも体言止めで終わるところとか。歌の意味はよくわかるんだけど、ちょっと素直すぎて拙く見えました。 #往来新人

2013-06-20 20:55:20
Каракозов @hikaritoshigo

勿論複雑な構造の歌がいいわけじゃないけど、五首の中に色々バリエーションがあっても良かった気がします。歌の内容自体は共感性の高いものだから、特に。 #往来新人 .

2013-06-20 20:58:51
千種創一 @chigusasoichi

素直な構造・内容の二~五首目を読むと、一首目の構造の複雑さってわざとじゃなくて下手なだけなんじゃないかとも思ってしまう。思ってしまいつつも、好きな歌です。#往来新人

2013-06-20 21:02:06
千種創一 @chigusasoichi

その点、5のただいまの歌が一番つるっと読めて胸にすーっと入ってきて、あまり評価できない。丁寧すぎる。連作の最後っていう位置が悪いのかな。#往来新人 .

2013-06-20 21:06:03
Каракозов @hikaritoshigo

五首目、単に説明しすぎなんじゃないかな。実家との距離感とか、挨拶を言い換えることとか、語順が素直な分作者の側で完結していることがそのまま歌に出てきている感じ。 #往来新人

2013-06-20 21:15:48
Каракозов @hikaritoshigo

読者の側から読みによって作品に近寄る余地があんまりないんですね。理解で終わって共感までいかない。 #往来新人

2013-06-20 21:23:52
千種創一 @chigusasoichi

読みによって作品に近づく、ってすごく納得。とまあ、二人とも厳しめですが、ちょっと個々の歌を見ますか。3の歌もいいかな。#往来新人

2013-06-20 21:31:56
Каракозов @hikaritoshigo

二首目「君の視線の先に私はいない」三首目「知らない海の色をしている」とかもある種のパターンですよね。ベタをそのままやっているというか。 #往来新人

2013-06-20 21:32:00
Каракозов @hikaritoshigo

三首目は、語順のシンプルさが効いています? #往来新人

2013-06-20 21:34:45
千種創一 @chigusasoichi

でも、「ベタ」も卒論に似ていて、先輩方がやってきたものを少し変えて出すってのも短歌では否定されるべきものではないと思う。で、3首目、水滴から海への飛躍というのはよくあるけど、ビニール傘という透明アイテムがその中継点として使われて、類歌との差別化に成功している。#往来新人

2013-06-20 21:37:50