ふんふんと子どもが拙いメロディを口遊みながら、画用紙にクレヨンを走らせている。ぱたぱたとフリルの付いたソックスに包まれた小さな足が揺れるのを、ぼんやりと眺める。天候はあいにくの雨だけれど、子どもの機嫌はいい。ご機嫌だね、と妻が子どもに笑い掛けると、パパがいるからと子どもも笑った。
2013-06-21 15:15:51粗暴な仕草とは裏腹に、蘭丸の箸使いはとても正しい。茶碗の持ち方も、箸の扱い方も、食べ方もきちんと躾けられたもののそれだと一目でわかる。だから、というわけではないけれど、嶺二は蘭丸との食事が好きだった。きれいに空にされたご飯茶碗を置いて、蘭丸が両手を揃えた。ご馳走様。笑みが漏れた。
2013-06-21 20:36:58尖がっているのに擦れていない、擦れているふりをしているけれど、嶺二からすれば蘭丸はきれいなままだ。逆に、嶺二は笑っていても切り売りして生きてきたせいなのか、擦り切れている。きれいなものを汚したい衝動で手を伸ばしたけれど、蘭丸は汚れない。そういう性質なのだろう。うらやましいことに。
2013-06-21 02:37:12へたりあ
でかい図体をしているくせに、子どもみたいに頼りなく所在無げに佇んでいる。捨てられる子どもみたいだと思って、みたい、ではなく捨てられる子どもそのものなのだとプロイセンは思い直した。別れられてせいせいするというのに、その表情がプロイセンを責め立る。それでも彼は捨てていく。さようなら。
2013-06-21 20:58:39恋戦記
ようやく及第点をいただいたんですと、茶器を手に花が笑った。手渡された茶杯からはふわりと花の香りがする。聞けば、仕事の合間に公瑾から茶の淹れ方を習っていたらしい。お疲れでしょうから美味しいお茶を淹れてさしあげたくて。彼女のその笑みこそが癒しなのだけれど、きっと彼女は気付いていない。
2013-06-21 21:50:28タイバニ
アイシャドウを塗って、ビューラーでカールさせた睫毛にマスカラを施す。紅を刷くその指先には紅と同色のネイル。化粧を施すのは一種の武装だ。鏡に映る、頭のてっぺんから爪の先まで磨き上げた自分に軽くウィンクを投げかけ、深く息を吸い込んだ。今日も、アタシは美しい。 #同題二次TB 自己暗示
2013-06-21 13:00:52