原発事故損害賠償における差額説が持つ問題点

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弁護士中所克博 @K_Nakajo

東電は,6月27日,新しいプレスリリースを公表している。「包括請求方式における個人さまに対する実費差額分のお支払いについて」である。場所はココ → http://t.co/kdFQq88iD9

2013-06-29 23:26:34
弁護士中所克博 @K_Nakajo

医療過誤事件における過失行為Aと結果との因果関係。原審は,他の主な可能性を医学的・科学的に潰さない限り,Aと結果との因果関係を認定することはできず,逸失利益まで辿り着けないと判断した。この点が,控訴審から受任して真っ先に強い違和感を感じた点。

2013-06-29 23:57:14
弁護士中所克博 @K_Nakajo

確かに,他の原因も結果の発生について影響を及ぼしている可能性がある。だが,Aも結果の発生に強い影響を与えているのは明白。ならば,原因Aと結果との間の因果関係を肯定したうえ,因果関係の領域ではなく,損害論の土俵で他の原因分を考慮して調整すれば良いではないか。

2013-06-30 00:00:18
弁護士中所克博 @K_Nakajo

原発事故の損害賠償では,津波と地震も損害の発生や拡大に影響を及ぼしているケースでも,当然のように原発事故と結果との間の因果関係を肯定した後,津波や地震の分として所定の割合を差し引く形で賠償がなされている。同じ損害賠償でありながら,なぜ医療過誤は特別扱いをされてしまうのか?

2013-06-30 00:04:23
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

@K_Nakajo うまく言語化できていないのですが、原発の損害賠償と医療過誤では、問題が違うように思います。原発の損害賠償は、死んだ事案とかは別ですが、逸失利益とか、風評損害なので、徹頭徹尾数字が立証の対象となり、因果関係と損害論は切り離せません。医療過誤は、……

2013-06-30 00:07:46
弁護士中所克博 @K_Nakajo

医療過誤において,因果関係の立証困難を救うワザとして,いくつかのプランが考えられる。一つ目は立証責任の転換等を図る手法。二つ目は被侵害法益を,生命や身体ではなく十分な診療行為を受けることに向けた期待権など別の法益にチェンジする手法。最後は死や後遺症の捉え方を工夫する手法。

2013-06-30 00:08:24
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

@K_Nakajo ……人の死なり傷害が何に起因したのかという因果関係と、その結果どのような損害が生じたのかという点が明確に分離できるようなイメージです。

2013-06-30 00:09:56
弁護士中所克博 @K_Nakajo

駄菓子屋のイチゴ飴を連想した。店番の爺ちゃんが糸の束を握り,10円で1本引く。当りはデカイ飴で外れはチッコイ飴。糸の1本1本が結果発生に影響を与えた原因(行為)の可能性で,先っぽの飴が生じた結果又は結果に占める影響度。因果関係の領域では,割合的因果関係論にも親しみを感じてしまう。

2013-06-30 00:14:13
弁護士中所克博 @K_Nakajo

どんな法益が侵害されたとお考えですか?これが高裁主任裁判官の第一声。相当程度の可能性→期待権侵害の筋だと見ていそうな気配。だが,一段落とした期待権侵害ではなく,本丸の身体の侵害の認定を獲得したい。毎日毎日,電車でも風呂でもトイレでも,どう攻めるべきか悩み考え,熟成させている。

2013-06-30 00:19:58
弁護士中所克博 @K_Nakajo

引っかかっているのは,原発事故の損害賠償のとき,地震分や津波分をさっ引く処理の法的理解。なぜ被害者が被った全損害の中から,地震分と津波分をさっ引く処理が許されるのだろうか?弁護団でも誰も何も言わないのだけれど,ずっとずっと強い強い引っかかりを感じ続けている。

2013-06-30 00:25:01
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

@K_Nakajo 理屈は単純な差額説でつきませんか? これだけの売上減少が生じたけど、原発事故がなくとも、地震津波でその10%は生じていたはずだ、というような。ただ、「生じていたはずだ」のところの立証は実は難しい、というか、原発被害地域は、大した津波地震の被害がないですよね。

2013-06-30 00:29:27
弁護士中所克博 @K_Nakajo

東電は,「異常に巨大な天災地変」による免責を諦めた(諦めさせられた)。この免責規定を適用しないということは,とりもなおさず,原発事故と被害者が被った損害との間の因果関係を認めますという意味の筈。ならば,「地震のせい」とか「津波のせい」とは言えないことになるだろう。

2013-06-30 00:30:29
弁護士中所克博 @K_Nakajo

地震分と津波分が2割だと言われ,被害者は8割の賠償しか受けられない。では,悪さした2割分を津波と地震から取り立てられるかというと,それは無理。なぜならば,憎っくきヤツらは人間ではないから。2割減額で東電は得をし,被害者は損をする。

2013-06-30 00:32:55
弁護士中所克博 @K_Nakajo

ちょっと待てよ!2割減額は当然である。我々のせいではない部分だからだ,これが東電の言い分になろう。だが,ちょっと待てよ!そもそも原発事故で被害者に損害を被らせたのは,地震や津波への備えが不十分だったからだろう(怒)。にもかかわらず,2割の減額を許すことは,責任転嫁を許すこと。

2013-06-30 00:35:58
弁護士中所克博 @K_Nakajo

再度冷静に検討してみる。2割減の正当性を考える場合,因果関係の領域と損害論の領域との双方で検討してみる必要があるように思う。割合的因果関係なのか,寄与度減額なのか,原因競合論なのか,損害額の金銭評価の領域なのか。頭が悪いので,グルグル回りをしてしまっている。

2013-06-30 00:39:49
弁護士中所克博 @K_Nakajo

@kyoshimine 異常に巨大な天災地変による免責を主張しないことで,因果関係の領域では津波分を考慮しない。しかし,次の損害論の領域では,津波分を斟酌して所定の減額を施す。こんな考え方ですね。しかし,津波想定の甘さという要素を考慮せず,損害論での減額を許容して良いでしょうか?

2013-06-30 00:44:40
弁護士中所克博 @K_Nakajo

@kyoshimine むむ。津波により,損害論の領域で10%の減額は正当化される。これに対し,津波想定の甘さを考えると,正当化されない,10%減額は許されないのでは。・・・こう考えると,次に検討すべきは不法行為損害賠償の目的論。損害の填補なのか,制裁と抑止なのかという点です。

2013-06-30 00:47:49
弁護士中所克博 @K_Nakajo

@kyoshimine いずれにしても,被害者の代理人として対応にあたる弁護士は,地震分&津波分として10~20%を控除される扱いに対し,それで良いのだろうか?おかしくないだろうか?おかしくないとすれば何故そう言えるのか?少なくともそこに気づき考えてみるべきだと思います。

2013-06-30 00:49:38
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

@K_Nakajo 先生,差額説を前提として2割減の根拠を考えるとすれば,損害論の問題になるのではないでしょうか。

2013-06-30 00:49:45
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

@K_Nakajo 差額説の場合,不法行為がなければあったであろう被害者の仮定的利益状態と,不法行為のために生じている被害者の利益状態との差額をもって損害とします。

2013-06-30 00:51:02
弁護士中所克博 @K_Nakajo

@knakatani ありがとうございます。ご趣旨は分かります。被害者の損害の中には,地震&津波プロパーのモノがあり,東電の責任とは言えないものが混入しているのだという思考だと思います。しかし,そう理屈付け,納得してしまって本当に良いのか?別の道がありはしないか?ココです。

2013-06-30 00:52:48
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

@K_Nakajo その際,差額説で前提とする被害者の仮定的利益状態は,津波と地震によって価値が低下した財貨を前提として計算せざるをえません。事故がなくても,津波と地震による経済的マイナスはあったはずだからです。

2013-06-30 00:53:59
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

@K_Nakajo 免責主張は、因果関係の問題と言うより、責任論の問題です。原則過失責任、しかし無過失責任にしよう、とはいえ、無過失のうちすごい無過失ものについては免責の余地を認めよう、ということでことですから。理論的には、減額というより、損害を算定するところの「ナカリセバ」……

2013-06-30 00:54:28
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

@K_Nakajo ……を見るときに、津波で被害を受けた状況を想定せざるを得ないのであれば、現実の財産状況と上記被害を受けた財産状況の差額が損害として算定されることは、当然のことと思います(差額説前提であれば)。ただし、原発事故がなかったら、どういう被害が生じたのかの認定は、……

2013-06-30 00:56:32
弁護士中所克博 @K_Nakajo

@TAKASHIMA724 もちろんご教示の内容は理解できます。ですが,津波の想定の甘さから原発事故が発生。それに因り100の損害を被った。にもかかわらず,想定の甘さから事故を招いた張本人に,津波分(=不可抗力分)として10~20の控除を許して本当に良いのか?釈然としません。

2013-06-30 00:57:20