【竹の子書房】タイトル未定 大正髑髏(仮)【絵描きからの逆襲】
しかし、一度日が落ちて夜になってしまえば、月星の明かりと、漁船の漁り火程しかなく、襲ってくるのは寂しさだ。家族住まいのものなら、普段は忙しく相手を出来ない家族の相手をすればよいのだろうが、私のような独り身は酷く寂しく思えてくる。だが、良くできたもので、遊ぶところはそこそこあった
2010-09-23 02:25:07江戸の昔から、つい最近汽車が通るまで、女連れのない成田詣の客を楽しませるためのハチベエと呼ばれる女郎がいた。今は遊郭は無いが、その末であろう女のいる店が多くあった。中には、それなりにカフェの呈を為した店もあった。
2010-09-23 02:25:34瑠璃家という名のそのカフェは青い曇り硝子が印象に残る店だった。その水底のような店のせいか、いる女給も鯛や平目、蛸といったものを連想させた。
2010-09-23 02:25:55足繁く通ったのは、一人の女給の為だった。殆ど無言のままで給仕をする彼女は、成長が遅いのかそういう質なのか、背の割に薄い体つきをしていた。毎日通っていると時折目があった。そういうところからか、瑠璃家の蛸に似た女店主に言われた。
2010-09-23 02:26:19「一晩いかがですか? ええ、ちょっと色をつけてくださればいいんですよ。先生、新進気鋭の画家でらっしゃるんでしょ。それなら、ねえ」 足下を見られていると思ったが、出せない額ではなかった。 私は彼女を一晩買った。
2010-09-23 02:26:44@ts_p mettyoriさんのお題絵で1本書いてみました。勢いで投下。タイトルは「反魂のまじなひ」です。#tknk
2010-09-23 02:52:53@ts_p 叔父上さま、貴方を御呼びするならば月の美しひ宵こそが相応しいと、ずつと思つて居りました。最早、貴方を恋ひ慕う事を邪魔立てする父も母も居りませぬ。私は此の世界を包む闇の中で、ただ独り貴方をお待ち申し上げます。慈しんで下さりませ。今も貴方を忘れ得ぬ此の身を、御存分に……。
2010-09-23 02:53:08貴方は今夜も来るのですね。男に棄てられた愚痴を吐くため。意気地がないのに恋が多い。貴方はずっとそうでした。何かあるとすぐ僕を頼る。僕の気持ちも知らないで。ああツ……死人になっても性癖は根治しないのですか!
2010-09-23 15:37:45【竹の子書房】タイトル未定 大正髑髏(仮)【絵描きからの逆襲】http://togetter.com/li/52852 に乗っかって書き始めた話なのです
2010-09-24 01:07:10彼女が待つのは瑠璃家の裏手にある小屋だった。表から見れば、それなりに立派なカフェに見える瑠璃家も、後ろから見れば、海沿いにはよくある潮風にさらされた古びた木造の家で舞台の書き割りのようだ。小屋は環をかけて古くさく、もともと何か道具でも置いてあったかのように見えた。
2010-09-24 01:08:07部屋に入った。窓から射す、月の光だけが明かりだった。新しくはないが、すっきりと片付いた小綺麗な部屋。目に付くのは鏡台と、ひかれた布団。その布団に横たわり、彼女は横たわっていた。 彼女は上半身を起こした。物憂げな動き、彼女の貌によく似合った。
2010-09-24 01:09:12私は近づくと、彼女は首に腕を回してきた。海が近いせいか磯の匂いが漂う。甘いような腐っているような匂い。 耐えきれなくなり、そのまま押し倒した。
2010-09-24 01:12:28「めっちょり絵:目次」 蛇食う乙女 呪いの解けぬ月 きたなき恋に 陵辱を願う 埋もるる花は血色なり 廃園冴え光りたり 香る息吐く 歌申しあぐる 恋の通夜 夢みつる夢 白顔ふりむけて 銀波片月 闇に入りぬ 石榴幻影 紅蓮華 朱色に睡って 白骨の宮 #tknk
2010-09-24 01:48:19【竹の子書房】タイトル未定 大正髑髏(仮)【絵描きからの逆襲】http://togetter.com/li/52852 に乗っかって書き始めた話だったんだけどずれてきた気がします
2010-09-25 06:09:44夏なのに、彼女の身体は冷えていた。肉の薄いせいなのか、体温が低いのか、そう考えながら身体をまさぐった。白い肌は、今まで触れた事のある、どの女よりも柔らかい。 その柔らかさを味わうというより、貪った。だが、白い肌は赤くなることはあっても声は出ない。それが小憎らしく責め立てた。
2010-09-25 06:10:36どれだけの時、そうしていたのか。それだけ彼女の身体は蠱惑に充ちていた。 下半身に手を伸ばすと、自分の分身が逆に柔らかな手で攻められるのが分かった。何か得体の知らない生きものにでも弄ばれるような快楽が広がる。 夜明けにはまだ間があるようだ。
2010-09-25 06:10:57目を閉じていても分かる強さ。朝の光だ。いつの間にか眠っていたようだ。昨夜の狂態を思い出すと顔が赤くなるのが分かった。初めて女を抱いた時のように責め立てた事を覚えている。 彼女の姿はない。だが、部屋に染みたように漂ってくる残り香り昨夜の事実を告げていた。
2010-09-25 06:12:05【竹の子書房】タイトル未定 大正髑髏(仮)【絵描きからの逆襲】http://togetter.com/li/52852 に乗っかって書き始めた話のはずなのなに(リフレイン)
2010-09-27 02:28:54部屋に染みたように残る香りが昨夜の事実を告げていた。 彼女は窓際に腰掛け、外を見ていた。何か随分遠くを見ているようで、視線を追ったがそこにあるのは壊れかけた塀だけだ。 「何か見えるのかい?」 聞くと彼女は首を横に振った。昨夜もその声を聞くことはなかった。
2010-09-27 02:31:40「もしかして」 尋ねようとした時、表の戸が開いた。 「先生、おはようございます」 店主だ。昼の光の中で見ると、漁師町のどこにでもいる婦人という印象で、夜というもののベールを通してみる事の難しさ感じる。 「おはよう」 「お楽しみいただけたようで」
2010-09-27 02:32:12店主は嬉しそうに言った。 「ああ。ところで彼女は口が利けないのかい?」 「ええ。ここに来たときからそうなんですよ」 「医者には診せたのかい?」 「ええ、まあ」 それがお為ごかしのように聞こえた。そんな私の思いは顔に出ていたようで、店主は強い口調でいった。
2010-09-27 02:32:28「そんなものに、こうして寝起きする所を用意して、おまんま食べさせてやってるんだから、そんな責める目で見るものじゃありませんよ」 「ああ、そんな気はなかったんだ。すまない」
2010-09-27 02:32:55