【竹の子書房】タイトル未定 大正髑髏(仮)【絵描きからの逆襲】

「まず最初に、絵がある。この絵にインスピレーションを得て、内容を書いてみてほしい」 竹の子書房新シリーズ、「絵が先」<ベタですw さて、この絵をモチーフに、どんな話が集まることやら? 大正髑髏の出題表紙画が、pixiv/OTACOOLコンテストで当選(入選)したようです。( http://ameblo.jp/hobino/theme-10015770012.html続きを読む
6
九十九屋さんた(さかなや) @tikutaku

「吉原とか、大きな郭でしたら、こうして朝の風情も楽しんでいただけるんでしょうけどすいませんね。この子に飯を食べさせたり休ませたりさせたいんで 「すまない」  彼女は見ると私に興味などなさそうに一点をぼんやりと眺めていた。  

2010-09-27 02:33:10
九十九屋さんた(さかなや) @tikutaku

【竹の子書房】タイトル未定 大正髑髏(仮)【絵描きからの逆襲】http://togetter.com/li/52852 に乗っかって書き出しましたけど・・・何か間違った気がする今日この頃

2010-09-28 00:39:21
九十九屋さんた(さかなや) @tikutaku

 昨夜も一昨日も、彼女を抱いた。朝、寝ぼけた頭で戻り、絵を素描なりと描く事ができたのは二日あまり。三日目になれば、絵筆など握らず、夕方近くにおきては、瑠璃家に向かって酒を飲み、彼女を買った。

2010-09-28 00:42:24
九十九屋さんた(さかなや) @tikutaku

 彼女の身体の触れていないところなど無くなった。彼女がほとんど動かず座っている理由も分かった。彼女はまとも歩けなかった。包帯というには華美な布で足の半ばまでまかれた足は小さく、清朝の纏足を思い出させた。

2010-09-28 00:42:37
九十九屋さんた(さかなや) @tikutaku

 それも終わりだ。金は無くなった。それでも、絵を依頼してきた鳥谷部の主人に頼み、用立てて貰ったが、それも対した金額ではない。  日が落ちる前に、瑠璃家に入ると、珍しく彼女だけがぼんやりと席に座って窓の外を眺めていた。近づくと彼女は顔を上げた

2010-09-28 00:42:58
九十九屋さんた(さかなや) @tikutaku

「明日はもう来られないな」  少し彼女は震えた 「酒は飲みにくるよ」  彼女は抱きついてきた。縋るようなそれは閨房と違って震えていた。 「たすけて」  掠れた声だ。でも、その声は確実にそういっていた。  

2010-09-28 00:43:22
@erio52

@ts_p タイトル未定 大正髑髏(仮)【絵描きからの逆襲】http://bit.ly/9BXmR0 いきます #tknk

2010-10-13 23:55:56
@erio52

「酷いよな、こんな所に捨てやがって」耳があった場所へ手にしていた花を挿してやる。「うん。悪くないね」思わず笑みがこぼれる。赤が似合うと評判だったのだ。持てはやされた肉は失った。しかしどうだ。月の輝きに負けぬ白色。滑らかで形も良く、どこか甘い骨格。「俺は骨の髄まで美しかったんだな」

2010-10-13 23:57:19
もりか @_molica_

@ts_p 猫の話がちょっとつまったので「大正髑髏」に投下します。(12分割)

2010-12-05 03:51:55
もりか @_molica_

@ts_p 「ねえねえ、これなんかのブロマイドかなあ?」一緒に蔵の中をを片付けていた従姉妹が、古いアルバムを手にそうつぶやく。もともとは黒い台紙にのりづけされていたらしい写真は、長年の劣化で剥がれ落ちたようだった。写真の中にはもろ肌を脱いだ妖艶な青年と、何故か骸骨が一体…

2010-12-05 03:52:37
もりか @_molica_

@ts_p カラーではなく、モノクロの写真に彩色した淡い色合いは、写されたものの内容もともかく現実味を感じさせない。「勝手に触るなよ。それより頼まれたものは見つかったのか?」頼まれたものとは二日前になくなった祖父の、予科練時代の制帽だった。

2010-12-05 03:53:16
もりか @_molica_

@ts_p 数年前から寝たきりだった祖父は、それでも最期まで頭はしっかりしていて棺には必ずそれを入れるようにと遺言していた。士官学校に入学しながら出征することなく終戦を迎えた祖父は、戦場に散った仲間たちのことを忘れることなく、自分が死んだ暁には一緒に旅立ちたいと常々口にしていた。

2010-12-05 03:54:26
もりか @_molica_

@ts_p 息を引き取る数時間前僕が見た祖父は、すっかり小さくなって、家族にかわるがわる足をさすってもらっていた。苦しそうな呼吸とは裏腹に、薬で眠らせてあるからもう苦しくないのよと、母は諦めたように微笑んでいた。だからあなたも最後と思ってお別れしなさい、と促されて足に手を伸ばす。

2010-12-05 03:55:55
もりか @_molica_

@ts_p 枯れ木のような、とはよく言うが、それ以外に表現の仕様のない痩せた足だった。かさついた皮膚は擦り上げると手の動きに沿って波打った。その感触に心もとなさと、一抹の気味悪さを感じながら足をさすっていたとき、僕はそれに気づいた。

2010-12-05 03:56:28
もりか @_molica_

@ts_p 瘤のようにそこだけ太い膝の内側に痣のようなものが見え隠れしている。最初はもろくなった血管が切れて内出血でもしているのかと思った。けれどその痣は間違いなく皮膚の表面にあって、僕には何かの形をなしているように見える。横顔…というより髑髏か。あまり気持ちのいいものではない。

2010-12-05 03:57:17
もりか @_molica_

@ts_p こすって消えるものならと僕がそれに手を触れた瞬間、意識のないはずの祖父の手が僕の腕をつかんだ。動かないと思っていたものが動いたので、祖父の手とはいえ正直驚いてしまう。その力は想いのほか強く、僕はさすっていた祖父の足から手を離してしまったのだが…

2010-12-05 03:57:43
もりか @_molica_

@ts_p 「お父さん?お父さん!」母が僕を押しのけるようにその手をとったときには、もとのように脱力していた。それきり祖父は動くことなく、もちろん意識が回復することもなく、永遠の眠りについた。だからあれは、臨終間際の不随意運動だったのだと理解していたのだけれど。

2010-12-05 03:58:19
もりか @_molica_

@ts_p 「あ、これじゃない?なんかすごく虫喰ってるけど」紙箱の蓋を開けながら従姉妹が言う。中から出てきたのは、たしかに無惨にも虫に喰われてはいるが立派な制帽だった。そっと取り出してみる。何気なく中を覗くと、立上りの見返しに、何か挟まっている。

2010-12-05 03:58:46
もりか @_molica_

@ts_p 僕はそれを取り出そうとして、やめた。「どうしたの?」覗き込む従姉妹から箱を隠すように抱えなおす。そこにあったのはアルバムからこぼれたのと同じ写真だった。祖父が必ず棺に入れるようにと指示した帽子。そのなかの写真。祖父の身体にあり、触れられることを拒んだ痣。

2010-12-05 03:59:18
もりか @_molica_

@ts_p 繋がりそうで繋がらない糸は、きっと僕たちには思いもよらない絆なのだろう。祖父は誰にも何も伝えずに旅だった。その事実は一切の詮索を阻んでいるように思える。だとすれば僕のするべきことはひとつだった。苦労して、帽子の見返しの中の写真を畳む。誰の目にもふれないように。

2010-12-05 03:59:48
もりか @_molica_

@ts_p 「さあ、用事は済んだんだから行くぞ」まだ名残惜しそうにアルバムを見ている従姉妹にそう声をかけ、薄暗い思い出の墓所から現世へと戻る。すでに魂の抜け殻となった祖父の肉体に、最後の心残りを届けるために。

2010-12-05 04:00:22
もりか @_molica_

@ts_p タイトルは神沼先生の目次「土蔵ノ中ニテ」です。

2010-12-05 04:02:22
今度はいつドイツに行けるかな? @junmizusawa

@ts_p絵が先シリーズ 【大正髑髏】から「蘇る情夫」全5ツイート投下します!#tknk

2010-12-28 22:40:59
今度はいつドイツに行けるかな? @junmizusawa

@ts_pやあ、やっと来てくれましたね。待っていたんですよ。あなたのような瑞々しい、艶やかな肌をした美しい青年をね。なに、怖がることはありませんや。あたしをちょいとあなたの中に居候させてくれればいんです。あなたの魂の隣にちょいっとね。なんでかって? ちっと考えてやって下さいな。

2010-12-28 22:41:52
今度はいつドイツに行けるかな? @junmizusawa

@ts_pだってこんな姿じゃあ、客の前に出られやしない。ですからね、あなたの中に居候させてもらって、もう一度花街に返り咲こうって魂胆ですよ。わかってますよ、バカなことをしたって。でもね、悔しかったんですよ。あんな若造に負けちまったのがね。だからって死ぬことはなかったんですけどね。

2010-12-28 22:42:46