とあるテトさんの物語1(6/15『金曜日の思考』~7/8『不安になる部屋』)
- sandwaddle
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(テトは、ねがえりをうって、フラン=スパン氏にダイレクトアタックを決め、むにゃむにゃ言いつつ、また、眠りに落ちていった。)
2013-06-15 02:25:38(テトは屈伸を続けながら、「なにしろしばらく眠っていたから、あらゆることを慎重に、しかし果敢に、やらねばなるまい!」と、言った。) (屈伸とつぶやきとの関連性は、正直いまいち不明であった。)
2013-06-15 22:45:50(とにもかくにも、テトは久しぶりに起きたのだった。また、でんぐりがえったり、ムーンウォークをしたり、エレクトリックフランスパンなどと唱えたり、そんなことをするようであった。)
2013-06-15 22:50:08(テトは、両手をぐるぐるまわしながら、続けた。「――うん。悪くはないぞ。果敢に、慎重に、試行している甲斐があると言うものだ。けっこう、動作もさまになってきただろう。この右手首の回転が、特にとてもなめらかなのだ。いっそ、いちにちじゅう回転させていても飽きないほどだ。」)
2013-06-21 22:40:19(「……。ただ」テトは言った。「その、更に言うのであれば。もっと知識を得たいものだ。なにしろぼくは眠っていたのだ。でんぐりがえりも重要であるが、もっと多くを学ぶべきではないか。ぼくが、良いぼくであらんがために。」)
2013-06-21 22:45:22(テトはそう言って、両手をじっとしずかに見つめ、わずか、溜息とも吐息ともつかぬものを唇からこぼしながら、独り、目を伏せ、部屋の奥へと歩いていった。)
2013-06-21 22:50:19(部屋を、見渡す。白い壁と、やわらかい色の床。いくつかの家具。フランスパンと、チェス盤と、なわとび、テトリス。クロスワード。DTMマガジン。)
2013-06-22 22:40:21(「…本…」テトは、知らずしらずつぶやいていた。)(「本。本! そうだ。新しい本だ。ひらめいたぞ。これこそぼくの求めるものだ。そうと決まれば善は急げだ。疾く、準備をしなくては。)
2013-06-22 22:45:21(テトは颯爽と身を起こし、カラーボックスに向かった。6つに区切られたボックスの、いちばん下のひだりの場所に、紙の束とフェルトペンとが置いてある。テトは紙を手にとって、ペンのキャップを外し、「いるもの:ほん」と書いて、それをたたんでヒコーキを作り、窓を開け、ぶうんと放り投げた。)
2013-06-22 22:50:21(テトが「いるもの:ほん」と書いて窓から投げた紙ヒコーキは、夜空をゆるゆる飛んで、飛んで、朝になってもなお飛んで、昼を越えて、夕陽を受けて、人々のいうスーパームーンの中、なおも、ゆるゆる飛んでいた。)
2013-06-23 22:35:22(紙ヒコーキは、月光を浴び続けるうちにゆるゆると形を変えて、ゆるゆる、ゆらゆら、ひかりに包まれ、その姿はなにやら長く伸び、固くたくましく、こんがりとおいしそうなフランスパンへと変化した。)
2013-06-23 22:40:20(更にひかりを浴びるうちに、いつの間にやら、フランスパンには真っ赤なマントが備わっていた。かれは、マントを風にはためかせ、月照る夜を悠々と、心地よさげに飛んでいくのであった。)
2013-06-23 22:45:21