とあるテトさんの物語1(6/15『金曜日の思考』~7/8『不安になる部屋』)

こちらはその1になります。 (その2→http://togetter.com/li/534292) 消えてしまう前に私用としてまとめただけでしたが、teto_botさんより許可をいただくことができました。 botの管理人様≠まとめ作成者です。
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テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(テトは、頬杖をついて、ぼんやりと夜空を見上げている。)

2013-06-24 22:35:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「――あのとき、ぼくが飛ばした紙ヒコーキは、いったい、どこまで行っただろうかな。」)

2013-06-24 22:45:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(その紙ヒコーキが、まばゆきスーパームーンのちからでメタモルフォーゼを遂げたことを、テトはまだ知らない。)

2013-06-24 22:55:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

--元・紙ヒコーキであった、真っ赤なマントのフランスパンは、なおも飛行を続けている--

2013-06-24 23:00:38
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「――ああ、これは、少しばかり無謀であった……」)

2013-06-25 22:35:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(テトは、うっぷ、と口元を押さえ、よろよろと壁に手をついた。目が回る。ぐるんぐるんだ。と、いうのも、遡って300秒ほど前のこと、「この部屋の端から端まででんぐりがえりで移動してみてはどうだろう」という野望を打ち立てて、ふかく考えることもせず、即時実行してしまったがためであった。)

2013-06-25 22:40:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「こ、これぞ……ぐるぐるだいこうかい……」と、テトはひとりごちて、ぐええ、とうめきながら、ズルズルとしゃがみこんだ。目を閉じて、心をしずめて、グルグルまわる世界が落ち着くのを、待つ。)(ななめに傾いていた世界が、時間をかけて、ゆっくりと元の角度に戻っていく。)

2013-06-25 22:45:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(ぐるぐる回る感覚がゆっくりと抜けていき、世界も元の位置に戻ったように思い、そこからたっぷり10を数えて、おそるおそる目を開けた。テーブルもチェス盤も、窓も壁も、見慣れた角度でそこにある。テトは、ほうっと息をついた。)(「……もう、でんぐりがえりを移動に使うのは、やめよう。」)

2013-06-25 22:50:19
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

--ところで、フランスパンはというと、いまだにまっすぐ飛んでいる--

2013-06-25 22:55:24
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(これまでのあらすじ:更なる知識を得ることを望んだテトが飛ばした「いるもの:ほん」と書かれた紙ヒコーキは、スーパーな月のちからでフランスパンへと変貌し、夜空をまっすぐ飛び続けている。一方そのころ、部屋じゅうでんぐりがえりをしていたテトは頭をまわし、自らの行いを反省していた。)

2013-06-26 22:35:22
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「……あれ?」)(ぐるぐるななめの世界は元通りになった――と思っていたテトであったが、ふと、自分から見て右の壁に、ふしぎなものが現れていることに気がついた。)(それはテトよりもずっと大きく、四角く、縦に長い姿をしていた。太い木の枠で縁取りがされている。枠に貼られているのは――)

2013-06-26 22:40:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「――紙だ。紙の、これは、――とびらだ。紙の扉は、ええと、フスマ、と言うのだったか――」)(テトは、フスマに手を触れ、そのざらりとした触感にいたく感動し、「おお!」だの、「わあ!」だの、感嘆の声をあげた。)

2013-06-26 22:45:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「これがフスマか! 巨大な紙細工だ! 面白い。水をかけたらどうなるだろう。ふにゃふにゃになってしまうのだろうか。これは、だいじに扱わなくては。なにせフスマは扉なのだから、扉…」)(盛んにしゃべり続けていたテトは、扉と繰り返すうちに何かの思考に至ったのか、急に身体をこわばらせた。

2013-06-26 22:50:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「扉、であるのなら……。これは……。開けて、良いのだろうか」)(テトは言葉を区切りながら、問いかけるかのようにつぶやいた。)(答えるものはいない。テトは、この部屋のひとりきりの住人だ。)「開けて良いのだろうか、これは――」(テトはフスマを見つめて、もう一度、繰り返した。)

2013-06-26 22:55:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(テトが、部屋に出現した「フスマ」を見つめ、開けてよいものかどうか逡巡していたそのとき、真っ赤なマントの元紙ヒコーキ・現フランスパンは、いまだに空を飛び続けていた。)(かれは、窓から放られてフランスパンへと変化してのち、まっすぐまっすぐ飛び続け、ひたすらまっすぐ飛び続け――)

2013-06-27 22:35:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「――?」)(風を切る大きな音が聞こえてくるように思えて、テトはその方向を見やった。かつて紙ヒコーキを放った窓の、ちょうど正反対。そちらの壁にもまた窓がある。その窓から轟音と共に、かがやく黄金のフランスパンが空から降って、否、突っ込んできた。)

2013-06-27 22:40:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

「うわあ!」(テトが叫んで飛び退くのと、フランスパンが床に激突するのが同時だった。フランスパンはそこから更に跳ねかえり、うぎょ、とカエルの潰れたような声を漏らしながら壁にぶつかり、ギョワア、とそこでまた呻き、ながらも更にバウンドを続け、三、四回弾んでのち、バタリと床に倒れ伏した。

2013-06-27 22:45:22
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

--(……テトは、呆気にとられている……)--

2013-06-27 22:50:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(テトの過ごす部屋に豪速で突っ込んできた真っ赤なマントのフランスパンは、数度バウンドしたのち、ボフリと床に倒れ伏した。テトはしばらく呆然としてその光景を見つめていたが、はた、と気を取り直し、おそるおそる、倒れたフランスパンに近づいていった。)

2013-06-28 22:35:23
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