とあるテトさんの物語1(6/15『金曜日の思考』~7/8『不安になる部屋』)

こちらはその1になります。 (その2→http://togetter.com/li/534292) 消えてしまう前に私用としてまとめただけでしたが、teto_botさんより許可をいただくことができました。 botの管理人様≠まとめ作成者です。
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テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「ようッ!」 フランスパンまであと一歩――というところで、かれはバネのような伸び縮みでガバリと起き上がり、ふんぞりかえって発声した。よく見ればフランスパンには手足めいたものがついていて、足らしきものは仁王立ちをして居、手らしきものは腰と呼ぶべきあたりにがっしりと添えられている。

2013-06-28 22:40:22
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(テトは、その思いがけない行動に目を白黒させながら、なにを言うべきかかんがえ、考えにかんがえ、さきほどのフランスパンの発語はきっと挨拶であるとの思考に至り、いくぶんか言葉につかえながら「や、やあ」と、言葉を返した。)

2013-06-28 22:45:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

「おう! テト!」フランスパンは嬉しそうに――かれに目鼻口はなかったが――笑い、どん、と右手めいたもので自らの胸を叩き、威風堂々たる面容で告げた。「望まれたから来てやったぞ。時速333キロで、物理の限界を超えて来たッ。さ、「ほん」を読もうぜ!」

2013-06-28 22:50:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(これまでのあらすじ:テトが願いをこめて夜空に放った紙ヒコーキは、時速333キロで世界を一周してテトのもとへと戻ってきた。轟音とともに、勢いよくバウンドをして。ついでに、その姿をフランスパンへと変容させて。)

2013-06-29 22:35:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

「望まれたから、来てやった……?」(テトは鸚鵡返しにつぶやきながら、まじまじと、その闖入者を眺めた。こんがりと焼けたフランスパンだ。赤いマントがはためいていたり、手足めいたものが備わっていたりはするものの、少なくとも、おそらく、おおむね、パンだということは間違いなさそうだ。)

2013-06-29 22:40:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(かれは、窓から入ってきた……。そして、望まれたから来てやった、と……。それに、「ほんを読もうぜ」と言った、あの言葉……。)(テトの中で、思考がまとまっていく。おそらくこのフランスパンは、自分が窓から夜空に放った――)

2013-06-29 22:45:22
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

「――キミは。ぼくが作った、紙ヒコーキなんだね?」(テトは、確信をもってそう言った。知らず、手に力が入る。)(フランスパンは、そのテトの言葉を聞き、自信たっぷりの姿勢を崩さないまま――)

2013-06-29 22:50:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

「――おう! いや、おれは、よくは分からん!」      (――と、豪語した。)(――テトは、脱力した。)

2013-06-29 22:55:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「よくは、分からん」と、フランスパンは繰り返した。「気づいたら空を飛んでいたんだよ。「ほん」を読みたいというから、まっすぐ飛んで、ここまで来たんだ。おまえが紙ヒコーキを折って飛ばしたっていうんなら、あるいは、そいつがおれなのかもしれないな」)

2013-06-30 22:35:23
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「ま、そんなことはどうでもいい!」フランスパンは大げさな口ぶりでそう言って、ぐるり、と、更に大げさな仕草で、その場で一周まわってみせた。マントが優雅にひるがえり、ばさりと大仰な音をたてる。 「肝心なのは、おまえが学びたいと願い、応えておれがきたという、この揺るぎなき真実だ!」)

2013-06-30 22:40:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「おれが紙か小麦粉かということは、まさしく些事といっていい」フランスパンはそう言って、両手を高くかかげ、どこか嬉しそうに、たのしそうに、待ち焦がれるように、言った。「さあ、さあ、テトよ、「ほん」を読もうじゃないか。おまえの望みを叶えることが、おれにとっての運命なのだ。」)

2013-06-30 22:45:19
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「――ああ。そうだね」テトはかれの物言いやしぐさに驚かされっぱなしであったが、けれども語る言葉に嘘偽りはないと感じ、素直に、誠実に、言葉を返した。「ぼくも読みたい。「ほん」は、どこに? キミが持っているのかい?」)(「――。いや」フランスパンは言って、あたりを見まわした。)

2013-06-30 22:50:19
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「もう、ここにあるはずなんだが。届いていないか?」)(「ここに?」テトは、いぶかしげに部屋を見渡した。本のようなものがあった覚えはない。覚えはない、が……)(テトのあたまの中に、ひとつ、心当たりが浮かんだ。)(……ひょっとしたら、あのフスマは、あるいは――)

2013-06-30 22:55:22
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(紙であるか小麦粉であるかが些細なことだというのなら、ぼくの望んだ「新しい本」が紙のとびらの形をしていたとしても、きっと、たいした問題ではないのだ)

2013-07-01 22:35:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「フランスパン。あのフスマがその「ほん」じゃあないかと、ぼくは、推測するんだが。」テトは、右手でフスマを指し示した。フランスパンは「ふうむ?」と言って、その方向を見やる。)(「おお、あれは確かにフスマだな。しかし、いささかモノが見えづらいから、おまえの肩を借りるぞ。とうッ!」)

2013-07-01 22:40:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(フランスパンはその細い両足――めいたもの――で力強く飛び上がり、華麗に弧を描いてテトの肩に降り立った。)(「うむ、うむ。よし。これでおまえとおなじものが見える。さあ、いざ、テトよ、行こうじゃないか! おまえがあれを「ほん」だと言うなら、きっと相違なかろうよ!)

2013-07-01 22:45:19
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「ああ。たぶん、間違いない。……ただ」テトは首肯し、フスマに向かって歩きながら、最後に、わずかに声を落とした。「フランスパン。ぼくは、これを開けても良いものなのかな」)

2013-07-01 22:53:00
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(テトと肩乗りフランスパンは、フスマの目の前に辿り着いた。)(テトは、そこで立ち止まったまま、じっと、フスマを見つめている。)(見つめながら、言った。「……いいや、違うな。キミに聞くことが、正解ではない。ぼく自身が、これを開きたいと望むかどうかが、問題なんだ。ぼくは――)

2013-07-01 22:54:03
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

--テトは、そのとびらを開けようとしてもいいし、しなくてもいい--

2013-07-01 22:55:21
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