【ポケクロ】#露鬼丸伝 SP

露鬼丸(http://p.tl/i/35766019)のストーリーのファン創作めいたもの。
1
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

・・・帝国軍の猛攻。王国軍、共和国軍を加えての混乱。議事堂には火の手が上がり、方々で力尽き、物言わぬ者達が横たわる。そして炎の中、武者がひとり、立ち尽くす。 #露鬼丸伝

2013-07-13 23:37:46
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

何故この世はこうも生きづらい。武者は心の中で叫ぶ。少女の躯を抱え、世の無常を叫ぶ。武者の名は露鬼丸。抱えし少女の名はウルスラ。今しがた露鬼丸を庇い、命尽きた者。 #露鬼丸伝

2013-07-13 23:41:36
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

その露鬼丸に、声を掛けるものがひとり。三角帽。革の鎧。元込めの小銃。一介の共和国正規軍兵。 #露鬼丸伝

2013-07-13 23:45:29
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

「そこの方!ここはもう危ない。我々が護衛する。脱出を!共和国租界まで退避を!」露鬼丸はその兵を睨みつけた。この様な者が傍にいながら、何故ウルスラは死なねばならなかった、と。 #露鬼丸伝

2013-07-13 23:48:10
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

刹那、兵が臆する。無力を、暴力を、理不尽を責める眼差し。無言の責めが、眼を通し伝わる。だが兵は、踏み留まった。そして責めの意味を理解した。露鬼丸が抱える、ウルスラの亡骸。 #露鬼丸伝

2013-07-13 23:52:22
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

露鬼丸に対して、兵が問う。「・・・名は。」「露鬼丸だ。」「では露鬼丸殿、そこの少女の亡骸を預かりたい。」「何故?」「そなたの腰の刀が使えなくては。それに・・・彼女を安全な所で弔いたいのでは?」露鬼丸はウルスラの亡骸に目をやる。そして兵に向き直り、首を縦に振った。 #露鬼丸伝

2013-07-13 23:57:09
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

「こちらへ。まずは我々の班と、その後議事堂周辺に展開する全部隊と合流しましょう。」「分かった。」露鬼丸は兵の寝袋を借り、ウルスラの亡骸を背負い、その場を立ち去った。まずは議事堂を脱出する。そして安全な場所へ。彼女の亡骸が、辱められない所へ。 #露鬼丸伝

2013-07-14 00:05:43
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

議事堂の外。ギラテナ島市街地と議事堂を隔てる壁の合間に、共和国正規軍が続々と集結。議事堂内におり、なおかつ生存していた共和国関係者もまた、兵に伴われ避難を完了させつつあった。しかし帝国との戦闘は、既にここでも激化の一途を辿っている。 #露鬼丸伝

2013-07-14 03:27:02
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

「全班集結したか!」「はい!」「よし、無事で何よりだ!」無事を確認する班長。すぐ近くでは帝国軍との戦闘音が響き続けている。議事堂の共和国関係者は、続々と装甲が施された、物資搬送用の荷車に乗り込む。前方には車の引き手と操者と術師。術師は、防御系の術の使い手か。 #露鬼丸伝

2013-07-14 03:32:53
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

露鬼丸は、冷ややかな眼差しで、その様を見つめる。属する世界の違いで、かくも命は儚く散るか否か、護られるか否かが変わるのか。ウルスラも生きたかった筈だ。もっと長く。そこに、先程の兵の声。「露鬼丸殿、紹介を。」 #露鬼丸伝

2013-07-14 03:37:06
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

「訳あって同行することになった。ダンデライオンの露鬼丸だ。」「露鬼丸・・・ひんがし風の名か。」「ああ。」班長が露鬼丸の目を覗き込む。無言の責めは、未だ視線に宿っていた。「・・・我々が謝ってどうにかなる事ではないが・・・すまん。」「・・・ああ。」 #露鬼丸伝

2013-07-14 03:46:12
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

謝って済むことか。露鬼丸は心の中で憤っていた。だが、同時に鎮めようともしていた。怒りをこの兵達にぶつけて何とする。今は混沌の議事堂を抜け、ウルスラを少しでも静かな所で眠らせてやりたい。「・・・ああ。」班長は踵を返す。「・・・それでは、隊列を確認する。」 #露鬼丸伝

2013-07-14 03:52:36
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

・・・共和国租界へ至る道。既に帝国軍と共和国軍は、双方激しい戦闘を展開していた。各所に張られた防衛線に押し寄せる帝国軍。食い止める共和国軍。だが怒涛の攻勢をかけているのは帝国側。各所で足止めを食らい、その度に激しい戦闘が起こる。 #露鬼丸伝

2013-07-14 03:56:04
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

数刻後。議事堂に展開していた共和国正規軍は、帝国の攻勢を振り切りついに議事堂を脱出。ティリミィド王国軍が議事堂に多数展開していたことも、共和国正規軍と露鬼丸達にとっては幸運な方向へと働いた。 #露鬼丸伝

2013-07-14 03:58:55
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

だが、一体どのように待機させていたのか、イザヴァン帝国は開戦の鏑矢と同時に多数の兵をギラテナ島に展開した為、各所で激しい戦闘が繰り広げられていたのだ。もう何度も戦闘で足を止められた。1秒、1分が長い。 #露鬼丸伝

2013-07-14 04:03:36
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

戦闘音が収まった。帝国軍が一旦退いたらしい。前進が再開される。皆、疲労を隠せなかった。議事堂から共和国租界までは決して長い距離ではない。長い距離ではないが、戦闘と死の恐怖とが、戦闘員、非戦闘員を問わず、心身を蝕み、削っていた。 #露鬼丸伝

2013-07-14 04:08:48
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

租界はおろか、共和国の防衛線もまだなのか。焦燥感が次第に強くなる。・・・その時だった。露鬼丸は、奇妙な気配を感じ取った。奇妙な気配。奇妙な・・・殺気。露鬼丸は鬼虎を抜く。「露鬼丸殿?」「銃でも剣でもいい、構えろ。何か来る!」 #露鬼丸伝

2013-07-14 04:11:55
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

身体に浮かび上がる縞。鬼虎の妖力が満ちる。何処から来る。何処から。・・・背後、いや側面!露鬼丸は切り払った。横薙ぎ一閃。殺気の正体は、イザヴァン帝国の兵であった。人間の奴隷兵。「無駄死にを!」無残にも切り捨てられた帝国兵は、生気を吸われ、粉と化した。 #露鬼丸伝

2013-07-14 04:16:44
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

鬼虎を鞘に収める露鬼丸。正規兵達は驚嘆していた。「なるほど、相当の使い手でありましたか。」「まあ、そんなところだ。詳しくは言わないが。」改めて道を進む一同。だが、先程の帝国兵が放った殺気が露鬼丸の中で尾を引く。追い詰められた殺気。行くも戻るも出来ぬ袋小路か。 #露鬼丸伝

2013-07-14 04:20:50
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

やがて、共和国の張った防衛線が、一同の眼前に姿を現した。帝国と交戦中だが、ここでは共和国が優勢であった。よく見ると正規軍の三角帽の中に、古風な鉄帽子が混じっている。見慣れぬ装備。すると、防衛線側の共和国兵も気づいた。味方の帰還に。 #露鬼丸伝

2013-07-14 04:26:39
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

共和国正規軍の兵達が、慌ただしく駆け出す。無人の家屋に押し入ると、机や箪笥を持ち出し、後方に積み上げ始めたのだ。応急の簡素な防衛線の構築である。道路に面した家屋からは、銃声が響く。友軍と共同しての帝国軍制圧が始まったのだ。 #露鬼丸伝

2013-07-14 04:30:56
雷竜ヴォリス(こいぬま家のポニータ) @TD_Voris

やがて簡素な防衛線は、後方だけでなく、道路をさえぎるようにして、側面にも張られた。共和国正規軍の兵が続々と配置につき、避難民を引き渡していく。帝国兵の攻勢は止まっていた。だが、先程の殺気が、露鬼丸を再び捉える。身を包むようなそれが。 #露鬼丸伝

2013-07-14 04:35:47