2010/09/24 ツイッター小説 お気に入りセレクト

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い短い物語です。 過去のまとめ http://togetter.com/id/laybacks
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@ikeba_bot

先日、法事で久々に会った姪が仏壇を見るなり「これ、走るよね」と訊いてきた。彼女曰わく、これが道を走っていたという。霊柩車のことだ。光り物が好きなだけあって「○○も乗りたかった」とむずかる。「大丈夫。いつか乗れるよ」私は彼女を膝元に呼び、二人で手を合わせた。 #twnovel

2010-09-24 00:58:48
伊万里 純 @verselet

あなたはいつも何かを追いかけていて、私はその後を必死に追いかけてきました。でもそれは今日でおしまいです。あなたが追いかけてきたものが何かを知りました。私のいない生活だったんですね。私が身を引けばいいだけのお話でした。今までごめんね。どうか自由になってくたさい。 #twnovel

2010-09-24 01:04:24
@12key

「ああ、わかったよ」女はカンと高い音を立てて煙管を盆に叩きつけたが、火の点いていないそれは勢いなくぽそと落ちただけだった。畳の上で球形が崩れ、そのままプルプル震えていたかと思うと四散した。ただの煙り草ではなかったようだ。「それでは、この件は落着ということで」 #twnovel

2010-09-24 02:35:58
あまたす @amatasu

それは一瞬の出来事だった。雨で足を滑らせ転んだ拍子に、階段で強かに頭を打った。真っ白になった視界の中、季節はずれの蝶が飛んでいくのが見えた。それからだ。どんなに新しい作品のアイディアを考えても、何も浮かばなくなったのは。―あの日、蝶が飛び去ってしまってから。 #twnovel

2010-09-24 04:38:46
freeze @gelatada

#twnovel 「今まで買ってやった物と奢った分の金を計算して返してくれ」「それじゃ貴方は、私を抱いた回数とお話しした時間を風俗とキャバクラの値段で計算して返して」

2010-09-24 05:22:40
@QuaibunBocchi

東京競馬場のベンチでぼんやりしていると利発そうな青年に話しかけられた。「次のレースは2ー6です」「コーチ屋さん?」彼は頭を振る。「3着は1番です」果たしてそうなった。その次のレースは逡巡なく彼の買い目に従う。それを認めると青年はくるんと尻尾を回して群衆に紛れた。 #twnovel

2010-09-24 08:19:05
泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 電車に撥ねられた。幸い傷は浅く、駆け寄つてくる駅員を戻して私は歩き出した。道端にトカゲがおり、脅かしてやらうと石を投げると見事命中してしまつた。しかし遠目で分らなかつたがトカゲではなくワニであつた。襲つてきたが素手で嬲り殺せた。すつかり秋だ。柿でももぎに行かう。

2010-09-24 09:08:28
rime @prhymethyme

目覚めたら何かを失ったような感覚があった。でも何もなくした覚えはない。何だろう。考えながらベランダに出て朝顔に水をやろうとしたら枯れていた。あ、もう世話とか気を遣わなくて済んで楽だな。ホッとしたらその感じに心当たりがあって思い出した。昨日があなたの誕生日だった #twnovel

2010-09-24 09:37:25
@TAKEZAEMON

#twnovel 何?キリギリスが来たって?夏が終わって食べるものが無いから、何かを恵んでくれって言ってるのかい?なんてものぐさな野郎だい!追っぱらって、入り口に塩をまいておきな!それから、砂糖をまくのを忘れるんじゃないよ!それは、次にやって来る蟻さんのためなんだからね。

2010-09-24 10:29:43
小夜啼き鳥 @sa4nakidori

「大人になったら片想いの仕方忘れちゃった。だって、学生の頃みたいに胸が苦しくて眠れないのは嫌だし。相手がなびかなければ、気持ちをごまかしちゃう。でもね、どうにかして会えないかと画策したりして…ね、やっぱりあの頃みたいには出来ないわ。」微笑う彼女。十分片想いしてる #twnovel

2010-09-24 11:25:41
catroll @catroll

#twnovel その畳は宇宙を旅する日系移民のために開発された。滅びた異星人の遺跡から再生された技術である重力発生コイルを内蔵し、快適な人工重力を発生する畳なのだ。だが、この畳が原因で世代宇宙船が一隻、重力崩壊を起こして消滅する。船内刑務所で畳を重ねて使用した事が原因だった。

2010-09-24 11:52:53
@K_Ichida

#twnovel 性差別撲滅のために、中学校入学までは性別を公開しないことになった。子供自身にも性別を伝えない。中学に入った子供たちは、人類に性別があることを理不尽と思い、性を捨てた。おかげで性差別はなくなったが、子孫も生まれなくなった。

2010-09-24 11:53:40
layback @laybacks

お笑い芸人の彼を前にして父は言う。「あなた方のように人を差別することによって笑いを取って商売にしている人の気がしれんよ」「お父さんやめてよ」「いいんだ。香織のお父さんの言う通りだ」彼は席を立とうとする。「いいか。お笑い芸人なんかとの付き合いは絶対に認めんからな」 #twnovel

2010-09-24 12:58:48
コーヒー豆 @C_beans379

#twnovel 「あなたに親を語る権利がありますか!この子を僅か2歳で捨てておいて!」「この子のことを考えてこそよ!育ての親より産みの親よ!」自分の目の前で激しく言い合う二人の“親”。しかし、親がこうも子の遺産を取り合っている光景を眺めるのは、奇妙なものだ。

2010-09-24 15:47:16
コーヒー豆 @C_beans379

#twnovel 余命三ヶ月。40%を兄に、35%を弟に、そして25%を妹に託すと遺書を書き終えた。すると妻が嘆きながら近付いてきた。「ねぇ、あなた。どうして私には遺してくださらないの」私はにっこりと微笑んで言った。「決まってるじゃないか。私達は永遠に一緒だからだ」銃を取り出す。

2010-09-24 15:47:40
佐木ささめ @sakiandu

#twnovel 幼い弟の口の端に付いたクリームを兄が舐め取っている。あれは私達夫婦の真似をしてるんだな、なんて微笑ましく思ってたら、幼稚園のお便り張に「お子さんが『昨日パパがね!ママの上に乗っかって遊んでるの~二人とも裸なの~』なんて話してくれました。ご注意下さい」との苦言が…

2010-09-24 16:19:42
҉A҉ a.k.a ҉A҉ @4x1h170fh41vlvl

発車ベルが鳴る。平静を装うも自然と早歩きになってしまう。列車に乗り込むと同時にドアが閉まる。ぎりぎりだが、間に合った。「あ、もしもし、ご注文のありました時刻表トリックが仕上がりました。実地検証した信頼の一品ですよ」次は密室を作らねば。今日もトリック屋は忙しい。 #twnovel

2010-09-24 16:45:35
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 夕暮れの廊下をかける小さな子。「さんねんせいのくつをかってもらうの」と50年間囁き続けていた。最後にその子とあったのは解体工事に従事する日焼けした青年だったのだが、彼は日本語をまだうまく解せなかったので、ふり返り、赤黒い夕日を不思議に思うだけだった。

2010-09-24 19:17:42
らし @rashi_catwillow

#twnovel 百年飛ばされ続けた綿毛がいた。とびきり不運な種だった。風から風に手渡され、彼の旅は果てがなかった。嵐の中で種は苦悩する。おれは咲けない運命なのか?こんなに耐えても、願っても。ほとばしる稲妻の一つが彼を打った。殻が裂け飛び出す、たんぽぽのように鮮やかな黄色の、鳥が

2010-09-24 20:10:51
@akaz_b131

#twnovel 呪文を唱えたが、何も起こらなかった。経験者から譲り受けたメモどおり正確になぞったはずだったし、リズムなどは関係ないとも聞いていた。ではそもそもこのメモが間違っていたのだろうか。呪文の最後に半角スペースがあることに気づいたのは諦めて別の冒険に出た後のことだった。

2010-09-24 21:14:36
Uotsuki @Uotsuki

屋根裏に上がってみると、ものすごい量の埃が海を創っていた。私はその中に入るのも躊躇われて、入り口でぼうっと立ち尽くしていたら、埃の中から桜色のぬめぬめした魚が現れてまた埃の中へと姿を消した。酷く重たい物を体に詰め込まれた気分になって、私は静々と屋根裏から降りた。 #twnovel

2010-09-24 22:12:25
ジュン @jun50r

#twnovel ある冬の日、キリギリスが食べ物を求めてアリの巣を訪ねた。夏に遊んでばかりいたキリギリスの自業自得。しかしアリはキリギリスを快く迎え入れた。「餌…キリギリスさんも反省しているようだし食事をあげよう」「そうだね。非常食…お客様として」「どうぞ食料庫…客室へ」

2010-09-24 22:25:38
すわぞ @suwazo

#twnovel 白い石に寄りかかって少女はまどろむ。このひんやりした大理石は大好きなおじさんの墓石。誰もが忌み嫌う吸血鬼の少女に優しくしてくれた。もう一度会いたくて、懸命に探しまわったのだ。おじさんはこの土の下にいる。だから少女もずっとここにいる。じきに朝日がのぼるだろう。

2010-09-24 22:40:49
水木ナオ @nayotaf

たった140字の小説もすぐに書けないのかってそんな、たった5文字の「ありがとう」「さようなら」だって簡単に言えないのに。 #twnovel

2010-09-24 23:07:48
平木なおり @706HIraki

荷台の君は横座りで正直安定が悪いのだけど、スカートだからと言われたら返す言葉がない。しっかり掴まってて。うなずく気配。腰と背中に柔らかな体温。ペダルを踏んだ。坂道。吹き飛ぶように流れていく景色。滑空している気分。君がわあ、と歓声を上げた。 #twnovel 「飛んでるみたい!」

2010-09-24 23:13:28