ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/12/20

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い物語です。
1
キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel 深夜バスで帰宅する事に。乗ってすぐ寝てしまったようだが、何やら聞こえてきて目覚めた。『バスガス爆発バスガス爆発バスガス…』乗客全員が念仏のように唱えていた。気味悪かったが、自分も言わなきゃいけない気がしてきた。『バスガツ…』急停車して俺はバスを降ろされた。

2010-12-20 00:29:42
水木ナオ @nayotaf

夜中に口笛を吹くと。蛇が来るとテレビが言った。狼が来るとラジオが言った。人さらいが来ると本にあった。だから吹いた。一生懸命、口をすぼめて。必死に練習して吹いたのに、誰も、何も来なかった。来てくれなかった。私はこの真っ白な部屋で、今夜も膝を抱えてひとり。 #twnovel

2010-12-20 00:32:07
のおの @noz_on_tw

焼きおにぎりが転がった。最後のひとつである。転がる先に直径10センチほどの穴があった。ピンときたので先回りし、右手で穴をふさいでみる。ずぼり。急に穴が広がって、縁に体重をかけていた私はまっさかさま。落ちた先で甲高い声が言う。「いただきます」‐改おむすびころりん #twnovel

2010-12-20 02:11:24
Sonnenweg! @nekorobimasita

リオは僕を犬と呼ぶ。僕はリオをご主人様と呼ぶ。胸も背も小さいご主人様は偉そうに胸を張って僕にジュースを買って来いと命令する。早朝の駅を駆け回りやっと見つけたジュース、喉が渇いたので全部飲んじゃった。犬だから時々自制できなくなる。なかったと嘘はつけない。犬だから。 #twnovel

2010-12-20 02:46:03
とおる6th @windcreator

絡繰娘は本を読み上げる。主の気の向くままに、絵本も小説も漫画も攻略本も、何でも自在に読みこなす。全ては物語を愛する盲目の主のため――朗読の技術は加速度的に熟練した。ある日頼まれたのは、主が女性から受け取った手紙の読み上げ。愛の告白に、絡繰娘は初めて嫉妬した。 #twnovel

2010-12-20 03:06:45
1/4 @Viertel_

違和感のないキスというのは何度目からだろうか。その男の唇にはもう慣れていた。抱き合った感触に慣れてしまうと、過去に付き合った男の記憶もやがて塗り替えられ、いつしか男は男でしかないと気づかされる。細腰を引き寄せる男の手のひらも、みな似たようなものだ。 #twnovel

2010-12-20 07:05:04
矢菱虎犇 @torabishi

橇から降りると、疲れきった重い体に引きずるように家の中へ。ガウン姿の妻が眠そうな目で睨んだ。「まったく今何時だと思っているんだい。もう夜が明けちまったじゃないか。毎年毎年どこをほっつき歩いてるんだか」言葉とは裏腹に差し出された熱いスープが心の中まで満たしていく。 #twnovel

2010-12-20 07:20:41
@ttmmsys

今でも傷痕が残っている。 幼稚園よりも前に、公園の軒石を飛んで遊んでいたら、転んで膝の肉を小削いだ。 友達の前では泣きたくなかったので、私は我慢した。 母親と一緒に帰る途中、 「よく泣かなかったね、偉いね」 と言われ、結局私は泣きそびれた。 #twnovel

2010-12-20 08:20:06
土曜日 @doyoubi

#twnovel 慰謝料なんて要求していないわよ。妻としての内助の功に多少は報いてもいいじゃないと言っただけ。渋ったからしつこく要求はしなかった。あの俗物と同じレベルに降りてまで欲しいお金じゃないもの。こうして綺麗に離婚してマンションで一人暮らし。ああ、これが自由なんだと思った。

2010-12-20 08:47:44
@hinoe000

#twnovel 翡翠色の雨が苔生した翠の匂いを漂わせ、呼吸をする毎に躰は植物に近付いていく。翠に囚われた美しい囚人、非現実と幻想の狭間の申し子、或いは犠牲か。歩けども歩けどもそこに果てはなく、そのくちびるの隙間から蔓草が伸びる時、少年は初めて、翠のユウトピヤに還る事が出来る。

2010-12-20 10:04:11
ジュン @jun50r

#twnovel パリコレで斬新なファッションショーが開かれた。モデルは全員全裸で、なにも着ていない。はじめは淫靡な視線を向けていた観客も、モデル達のどこか誇らしげで堂々とした様子に、やがては飲まれていった。ラストにデザイナーを紹介すると、全員が天を仰いで賞賛の拍手を送った。

2010-12-20 14:19:46
@NAYUTAUNAGINOVE

北と南が仲違いし、両者を繋いでいた空が破れてしまった。このまま関係が悪化すればいずれ大きな争いごとに発展してしまう。解決策を見出すことができない人々は途方に暮れていた。そこへ西から東に向かって飛行機が飛んできた。そして破れた空を飛行機雲で縫い直して去っていった。 #TwNOVEL

2010-12-20 15:58:46
@akemi_miura

#twnovel あ、木の枝にゴミ袋が乗ってると思った。よく見ると猫だった。その次に見ると、木の上の猫は5、6匹に増えていた。そして今では、たわわに実った果実のように、沢山の猫がぎっしりと木の上で寝ている。ほんわか、猫のなる木。実はこの現象、よくあることだそうで、原因は不明とか。

2010-12-20 17:22:44
コーヒー豆 @C_beans379

#twnovel Twitterをやっていることは誰にも話していなかったはずなのに、なぜか友達にばれていた。一体、どうして!?「だってメールが全部140字以内じゃん」

2010-12-20 18:45:24
@Burt1991

昨今、「額縁の芸術性」を見直す動きが高まっている。「一流の絵画を装飾するためには一流の額縁を必要とする。なれば、額縁も同じく一流の評価を受けるべき」というのだ。とうとう「額縁展」が開かれ、額縁を引き立てるための絵画を売る者が出始めた。次は壁だろうか?或いは釘か? #twnovel

2010-12-20 20:00:10
@NAYUTAUNAGINOVE

この村には所々に小さな穴が開いている。なぜ穴があるのかは誰も知らない。ただこの村には言い伝えのようなものがある。『穴の上をまたがずに迂回すべし』ある日、杉沢君が穴の上を飛び越えようとした。すると穴の中から細長い手が伸びてきて彼の足を掴むとそのまま引きずりこんだ。 #TwNOVEL

2010-12-20 20:04:00
Ayako Hosono @ayahocho

#twnovel 「お月様は誰と喋っているの?」5才の息子が訊く。「実は、月読と言う神様としか喋れないんだよ」煌々と輝る満月を見上げながら僕らは歩く。「あんなに遠いところから大声で喋るのに、僕には聞こえないから、きっと糸電話があるんだね!」それはそれは長い、38万kmの糸。

2010-12-20 20:05:54
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

#twnovel 「サヨナラ、ママ」二歳の息子はどういう訳か、ありがとうの意味でサヨナラと言う。何度言っても直らず、私はイライラして息子に当たるようになった。ついに手を上げた時、夫が離婚を口にした。親権は父親になった。後悔と共に独り家を出て行く私に息子が言う。「サヨナラ、ママ」

2010-12-20 20:48:08
瀬口 @an2a_09

#twnovel いつもの朝。いつもの道。いつもの電車。いつもの会社。いつもの同僚。いつもの仕事。あなたと目が合う。目を逸らす。身体が火照りを思い出す。僕らは一夜の共犯者。一晩限りの儚い戯れ。周りは誰も気付いていない。いつもの書類。いつもの机。悲しいくらいにいつものあなた。

2010-12-20 20:50:18
夜間飛行惑星/実駒(・×・) @mikoma_nfp

#twnovel 遺品はカメラひとつだった。いつかろくでもない死に方をする男だと思ってはいたが。骨もないまま葬式を上げ、四十九日も済んで、ふと思い立ってカメラの裏蓋を開けてみた。見様見真似で現像してみる。天を突くようにそびえる黒い岩と、岩の割れ目を這う氷河。無常の、無情の世界。

2010-12-20 20:59:08
藍 真史 @shin1960

#twnovel 担当の編集者でさえ才能の枯渇だと見放した。書けなくなった本当の理由はあの万年筆の紛失にある。どこにあるかは分かっている。最近傑作を発表した女流作家の元だ。取り戻すことは不可能ではないが、あの万年筆が世の中に傑作を生み出すのなら、これでもいいのではないかと考える。

2010-12-20 21:02:27
藍 真史 @shin1960

#twnovel あらゆる創造は模倣から生まれるという言葉がある。だが、それは目に見えるもの、耳に聞こえるもの、肌に感じるものである筈だ。世界は俺の頭の中を模倣しているなどと言うこの青年を私は生かしておくことができなかった。この青年こそ、私の頭の中に存在するものだったからだ。

2010-12-20 21:05:46
layback @laybacks

気がつくとブラウン管の中に吹き荒れる砂嵐を眺めていた。 部屋の畳にはうず高く埃が積もり、抜け殻の僕を取り囲むように蜘蛛の巣が張り巡らされている。ただ延長ひもの先にぶらさがるケロケロケロッピだけが昔と変わらず優しく微笑んでくれていた。僕は手を伸ばして電気を消した。 #twnovel

2010-12-20 21:24:54
@NAYUTAUNAGINOVE

魔方陣に記号と呪文を書き儀式を始めた。この魔方陣は異世界の住人を呼び出すためのものだ。しかし、なかなか術式が発動しない。1時間後、突然閃光が走った。目を開けると自分と同じ姿をした人間が立っていた。彼が言った。「何を驚いてる?君だって元はこっち側の人間なんだよ?」 #TwNOVEL

2010-12-20 21:48:08
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 「こんにちは」隣の部屋の女性から挨拶された。珍しい。いつもは、つんとすましているのに。「こんにちは」駅へ行く道すがら、すれ違う人々に挨拶される。「こんにちは」ホームで列に並ぶと並んでいた人が振り返った。「こんにちは」列車の中。全員が挨拶してきた。俺は耳を塞いだ。

2010-12-20 22:48:33