夏祭りの出来事(仮)

体格差萌えで強面男性がかわいい女の子に触ったら、思ったより柔らかくてびくってなるっていいよねって話から派生。→強面男子高校生×少女 →少女成長後再会そしてラブへ…の道を辿る予定。 ブログにて、加筆修正した物を公開してます。 http://mikarika.jugem.jp/?eid=1
3
真麻一花@しの @maahikka

迷子か?祐大は夏祭りの人混みから外れた脇で泣いている子供を見つける。「どうした」でかくて恐ろしいと言われがちな自身を知っているからできるだけ優しく声をかけた。泣きはらした目が見上げてきて、思わず手を伸ばし濡れた頬に触れる。思ったより柔らかなその感触に、触れた指先がびくりと震えた。

2013-07-17 10:57:07
五十鈴スミレ @midori_tya

「おじさん、誰?」これでも高校生なんだけどな……。子供に文句を言っても仕方ない、と祐大はため息をつく。「親はどうした?」「……わかんない」子供はまた泣きそうな顔をした。「一緒に探してやる。だから、泣くな」小さな頭をぽんぽんとなでた。触れるのが怖いだとか、言っている場合じゃない。

2013-07-17 11:07:12
真麻一花@しの @maahikka

不安げに見上げてくる子供に笑いかけて手を繋ぐ。小さな手がちょこんと乗って、その小ささに祐大は驚いた。あまり強く握ると潰れてしまいそうだった。小さな温もりを握り人混みに向けて歩き出すが、あまりにもの人の多さに、とても小さな子供が見渡せるわけがないことに気付く。「よし、肩車するか」

2013-07-17 11:16:59
五十鈴スミレ @midori_tya

「かたぐるま?」「父親とかにやってもらったことないか?」横に振られる首に、祐大は少し迷う。初めてなら高さを怖がるかもしれない。けれど、このままでは親を見つけることはできないだろう。祐大は子供の前にしゃがみ込む。「首をまたいで、頭をつかめ」子供の背中を押さえながら、立ち上がった。

2013-07-17 11:24:57
真麻一花@しの @maahikka

「うわ、ぁ…っ」怖いのか驚いたのか、子供が感嘆の声を上げた。「怖くないか?」「うん!」すぐにその高さに慣れたのか祐大の頭にしがみつきながらも弾んだ声が返ってくる。「じゃあ、しっかり捕まってろよ」祐大は人混みの中へと足を踏み出した。

2013-07-17 11:29:26
五十鈴スミレ @midori_tya

「高い、高いね、おじさん!」はしゃいでいるのがわかる甲高い声。怖がられなくてよかった、と祐大は安堵した。「これで親が探せるな。そこからなら見えるだろ」「うん!」子供は元気に返事をする。「ところで、誰と来たんだ?」祐大は今更なことを尋ねた。基本的なことなのに、聞くのを忘れていた。

2013-07-17 11:40:23
真麻一花@しの @maahikka

「おかあさん!」「二人できたのか?」「ううん。妹も」「三人か」「うん」なるほど、妹に母親の目が行っている内にはぐれたのかと祐大は勝手に納得する。「ちゃんと探してるか?」「高いからいっぱい見えるよ!」絶対こいつ探してねぇだろ、祐大はきょろきょろとテンションの高い子供に苦笑いする。

2013-07-17 11:45:03
五十鈴スミレ @midori_tya

ようは、こいつよりも小さい子供を連れていて、子供を探している女性を探せばいいわけだ。せっかく肩車をしたというのに、子供は戦力になりそうにない。泣き止んだのだからそれだけでも十分か、と祐大は思うことにした。「母親の特徴は何かあるか?」「んとね、髪が長い! 今日はお団子にしてるよ」

2013-07-17 11:53:53
真麻一花@しの @maahikka

母親の特徴を尋ねられた子供がきょろきょろと初めて探す素振りをしはじめたが、祐大は慌てて叫んだ「ばかっ、そんなに動くな、危ないだろ!」慌てて右手を子供の背中においてバランスを取る。けれど乗っている子供の方はのんきな物だ。笑いながらパタパタと足を動かしている。「だからヤメロって!」

2013-07-17 11:58:18
五十鈴スミレ @midori_tya

祐大が怒鳴っても子供は気にしない。「空飛んでるみたいだよ!」「……そーかよ」無邪気な言いように、怒る気も失せた。まったく、周りは祭りを楽しんでいるというのに、何をやっているんだか。子供は嫌いじゃないが、こんなところに来てまでわざわざ子守をしている自分に呆れたくなる。

2013-07-17 12:02:33
真麻一花@しの @maahikka

「あ!」子供が声を上げた。「いたか?」祐大が声をかけると「うん!」と嬉しそうに声を上げてある方向を指す。言われるままに進んでそしてたどり着いた先で祐大は口をつぐんだ。どう見ても指しているのは人じゃなくて店だ。「かき氷食べたい!」「おい!」何をのんきに夏祭りを楽しんでいるんだ!

2013-07-17 20:27:44
五十鈴スミレ @midori_tya

ごねられても面倒だ。祐大は仕方ないなとため息をつきながら、子供を下ろした。「おじさん?」子供が不思議そうに見上げてくる。「肩車してたんじゃ、買えないだろ」かき氷のことだとすぐに気づいたようで、子供は瞳を輝かせた。まったく、現金な奴だ。「イチゴと、レモン!」「はいはい」

2013-07-17 21:48:53
真麻一花@しの @maahikka

屋台のかき氷は高い。千円札を出して百円玉二枚のおつりは男子高校生には涙が出るほど痛い。祐大は山盛りのかき氷をそうっとすくう子供を見下ろしながら、自分は氷のてっぺんにガブリとかぶりつく。「ちょっと、どっかで座って食うか」「うん」真剣に氷を見つめながら子供は上の空で肯いた。

2013-07-17 21:58:01
五十鈴スミレ @midori_tya

欲しかったCDはあきらめたほうがいいかもしれない。思わぬ出費に落ち込みながらも、おいしそうにかき氷を食べる子供を見ていると別にどうでもよくなってくる。下に弟と妹がいるせいか、子供の理不尽さには慣れていた。むしろ、妹よりは可愛げがあるほうだろう。「こっちも食べるだろ?」「食べる!」

2013-07-17 22:05:01
真麻一花@しの @maahikka

店が並ぶ通りから外れ、子供は差し出された祐大のかき氷に平べったいストローの先を差し込む。ふと周りを見ると、こっちを見て笑っている通行人が目に止まった。微笑まし気なそれは、決して嫌な感じではない。どうやら変質者や誘拐犯的な印象からは免れているようだった。

2013-07-17 22:20:04
五十鈴スミレ @midori_tya

たぶん兄妹とでも思われているんだろう。親子ではないことを願うばかりだ。「あっ!」子供の声と、足に感じる冷たさ。視線を戻すと、ズボンにかき氷がシミを作っていた。たくさん取ろうとしてこぼしたんだろう。「ご、ごめんなさい……」子供は身体を縮こまらせる。ちゃんと謝れるんだな、と感心した。

2013-07-17 22:29:35
真麻一花@しの @maahikka

「良いよ。すぐ乾くし」手で膝に残っている分を払い落とすと、祐大は小さくなっている子供の頭に手を乗せる。母親と合わせたのだろうか、お団子頭は少しふんわりとしていて、ぽふぽふする度に少しへこんで気持ちいい。「かみがくずれちゃうからだめぇ!」祐大は笑った。小さくても女の子なんだな、と。

2013-07-17 22:37:40
五十鈴スミレ @midori_tya

それにしてもよく食べる。いや、かき氷は全部水分なのだから、よく飲むと言うべきだろうか。「おいしいか?」「うんっ!」子供は上機嫌に答える。母親が見つかるまでは、保護者代わりをするのも悪くはないかもしれない。にこにこと幸せそうにかき氷を食べる横顔を見ながら、祐大はそんなことを思った。

2013-07-17 22:44:32
真麻一花@しの @maahikka

しばらく祭りの賑わいの片隅でそうしていたが、ふと目についた親子の姿に、祐大は「おい」と隣の子供に声をかけた。「なに、おじさん?」「あれ、お前のお母さんじゃねぇ?」幼児を抱いたお団子頭の女性が、悲愴な顔をしてきょろきょろしながら足早に進んでいる。「あ、お母さん!」子供が立ち上がった

2013-07-17 23:00:21
五十鈴スミレ @midori_tya

「おかーさーん!」子供は声を上げながら、大きく両手を振る。母親と思わしき女性がこちらを振り向いた。人の流れから逸れたところにいるから、あちらからも見えるはずだ。「美香!」子供を連れた女性は人波をかき分けながら、駆け寄ってくる。ミカって言うのか、と祐大は子供の名前を記憶にとどめた。

2013-07-17 23:06:19
真麻一花@しの @maahikka

子供も母親に向けて駆け寄っていき、祐大は肩の荷を下ろしてやれやれと息をついた。母親がちらりと目を向けてきたので、ペコリと頭を下げる。祭りの騒音で会話は聞こえないが、母親の視線と子供がさす指で自分の事を話しているらしいと気付く。何となく居心地が悪くなっていると母親が歩み寄ってきた。

2013-07-18 17:13:33
五十鈴スミレ @midori_tya

「子供の相手をしてくださったようで、ありがとうございます。この子が怖い思いをしないですんだのは、あなたのおかげです」「いや、別に」深々と頭を下げられて、祐大は戸惑う。それほどのことをしたつもりはなかった。「えっと……気にしないでください」祐大の言葉に母親は頭を上げる。

2013-07-18 22:43:05
真麻一花@しの @maahikka

一緒にいただけなので母親の視線がいたたまれない。突然その空気をぶちこわす声が上がった。「あのね、おじさんかき氷買ってくれたよ!」母親の顔がこわばった。「す、すみませんっ」母親がまた慌てて頭を下げる。それは「かき氷」に対してなのか「おじさん」に対してなのか。祐大の顔が微妙に歪んだ。

2013-07-19 08:24:32
五十鈴スミレ @midori_tya

「あの、かき氷の代金、払います」ぎくしゃくとしながらも母親は財布を取り出そうとする。「や、別に大丈夫です。勝手に買っただけなので」懐に痛いとは思ったものの、数百円を払われるのもなんだか抵抗感がある。しかもたぶん、この母親はかき氷の代金以上のお金を渡そうとしてくるだろう。

2013-07-19 08:31:13
真麻一花@しの @maahikka

「でも」と、財布を取り出す母親の隣で美香があっと思い付いた様子でごそごそと動いている。それを横目に母親の動きを止めようとしたときだった。「はい、おれいにあげるね!」さっきまで美香の指についていたおもちゃの指輪だ。「たからものなの。おじさんありがとう!」

2013-07-19 08:39:27
1 ・・ 9 次へ