夏祭りの出来事(仮)

体格差萌えで強面男性がかわいい女の子に触ったら、思ったより柔らかくてびくってなるっていいよねって話から派生。→強面男子高校生×少女 →少女成長後再会そしてラブへ…の道を辿る予定。 ブログにて、加筆修正した物を公開してます。 http://mikarika.jugem.jp/?eid=1
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五十鈴スミレ @midori_tya

「この辺でいいよ」美香がそう言えば、車はすぐに停止した。ドアの取っ手に手をかけながら、美香は運転席を振り返る。「今日はありがとね、祐大さん。会えて嬉しかった」無理にでも笑顔を作った。大丈夫、これで最後ではないのだから、と。「……俺も」何が『俺も』なのか、すぐには理解できなかった。

2013-08-03 09:00:57
真麻一花@しの @maahikka

言葉に詰まっていると後部座席からからかうような声がした。「俺も楽しかったよ。またね」笑顔で手をひらひら振る智大の言葉に、祐大の「俺も」の意味に思い至る。「うん、またねっ」笑顔で理香と一緒に中の二人に手を振る。理香が智大を見た「お兄ちゃん取られて寂しかったら私が相手してあげるよ!」

2013-08-03 10:22:56
五十鈴スミレ @midori_tya

「あはは、期待してるよ」智大の返答は冗談めいた軽いものだった。「また、再来週にね」「ああ、また」祐大の返しに、美香は九年前を思い出す。あの時は、『また』とは返してもらえなかったことを。あの時と、今は違う。また、祐大に会える。そのことが嬉しくて嬉しくて、なんだか泣きそうになった。

2013-08-03 10:31:48
真麻一花@しの @maahikka

いつ来るか分からない「また」をもう待たなくていい。美香が待つのはちゃんと次がある「また」なのだ。「気をつけて帰れよ」「うん」と返事を返したのは理香だ。美香は肯いただけになってしまう。「ゆ、祐大さんもね。送ってくれて、ありがとう」声が震えそうになりながらそれでも何とか言葉を絞り出す

2013-08-03 10:40:26
五十鈴スミレ @midori_tya

「どういたしまして」祐大はかすかに表情を緩めた。「またな」そう言い残して、祐大は車を出して走り去っていってしまった。「帰ろっか。……お姉ちゃん?」家の方向に足を向けた理香が、ふとこちらを振り返る。美香は慌てて目尻にたまった涙を拭った。「うん、帰ろう」次の約束があるから、大丈夫。

2013-08-03 10:48:29
真麻一花@しの @maahikka

「おやすみなさい」走り去るテールランプを見ながら呟く。しゃべりたいことはまだいっぱいあった。もっと話すための言葉があったはずなのに思ったように言葉にならなくて、目の前にいなくなって後から後からいろんな言葉と想いがあふれ出す。「……楽しかったね!」にこっと理香がのぞき込んできた。

2013-08-03 10:54:30
五十鈴スミレ @midori_tya

「そうだね」美香も笑って返した。楽しかったと、心からそう思う。いつか会えたらいいと思いながら、毎年祭りに行っていた。もう無理なんじゃないか、という諦めも、毎年増えていった。それが今日、こうして再会することができて。次の約束まで、することができて。楽しくて、幸せな一日になった。

2013-08-03 11:01:16
真麻一花@しの @maahikka

「楽しかった!」改めて言うと理香が困ったように笑った。「泣かないでよ~」美香の腕を抱きしめるように理香が寄りかかってくる。「大丈夫、うれし涙だから」勝手に溢れる涙はホッとした時のような気持ちで込み上げてきた物だ。「お姉ちゃん」「うん?」腕にしがみつく力が強くなった「…よかったね」

2013-08-03 11:09:58
五十鈴スミレ @midori_tya

理香の声はとても優しいものだった。思えば、美香の思いを一番知っているのは妹だ。何度も話して聞かせたから。再会を一緒に喜んでくれる存在に、美香は心が温かくなった。「ありがとね」「何が?」お礼を言うと、理香は首をかしげた。「色々と。別行動のときも気も使ってもらったみたいだし」

2013-08-03 11:14:52
真麻一花@しの @maahikka

「いーよ!お姉ちゃんが幸せなら!それに私も智大さんと一緒で楽しかったよ。やっぱり大学生はクラスメートと全然違うね。かっこいいし!」ちょっと慌てながら言う理香に、美香はクスクスと笑う。「また、四人で会えるように頼んでみようか?」「えー」「だってその方が祐大さん油断してくれそうだし」

2013-08-03 11:26:06
五十鈴スミレ @midori_tya

「んー、そうだね、私もいきなりデートとかは誘いにくいし」理香の言葉に疑問を抱く。「あれ? 連絡先知ってるの?」「別行動してたときに交換した。大学も聞いたよ」自分の妹ながら、すごい。祐大の仕事を知らない美香よりも、距離を縮めているような気がする。「……理香って行動力あるよね」

2013-08-03 11:50:32
真麻一花@しの @maahikka

本当に中学生かとつっこみたくなる。これは智大も驚くはずだ。どっちが年上か本当に分からない。「あっちが子供扱いしてたから、こっちは子供らしくしてただけだよ」そこが子供らしくないんだってば!「じゃあ智大さんも誘うようにお願いしていい?」美香が笑って指で丸を作る「再来週、頑張ろうね!」

2013-08-03 12:18:23
五十鈴スミレ @midori_tya

家に帰ってから、美香はさっそく祐大にメールを送った。三十分も唸りながら、結局はシンプルな文章になってしまった。『今日は本当にありがとう! 再来週のドライブだけど、理香も行きたいと言ってます。都合が合うようなら智大さんと四人で、っていうのはどうかな? 楽しみにしてます』

2013-08-03 18:45:31
真麻一花@しの @maahikka

浴衣を片付ける間に返事は返ってこず、がっかりしながら寝ようとした時だった。メールを知らせる音がして、美香はスマホを急いで立ち上げる。そしてドキドキしながらメールを開いてみれば『了解しました。ではその方向で。』「…なんなの、この事務メール以下」のぞき込んできた理香が、ぶっとふいた。

2013-08-03 22:31:56
五十鈴スミレ @midori_tya

がっかりしたというか、がっくり来たというか。けれどなんだか祐大らしい気もして、美香は苦笑する。「お姉ちゃん、がんばれ」「そうだね、これはがんばらないとね」ここでメールを終わりにしてしまうのは嫌だ。返信は期待しないで、もう一度メールを送ろう。今度は何を書こうか、美香は頭を悩ませた。

2013-08-04 00:43:58
真麻一花@しの @maahikka

「『またダブルデートできるね!ドライブはどこへ行くかそっちで決めてもらえるかな。私達は車で行ける所って詳しくないし。後ね、どこへ行くか決めたら教えてね。行く場所によってどんな服かも決めなきゃだし。お願いします』送信っと」ポチッと押してから、もう探さなくていいのだと改めて実感する。

2013-08-04 17:05:50
五十鈴スミレ @midori_tya

次はすぐに返信が来た。『了解。またメールします』さっきとほとんど調子は変わらない。寝ようと思っていたことも忘れて、美香は更にメールを綴る。『九年間ずっと探してた人と、こうしてメールをしているなんて、不思議な感じ。祐大さんは困ると思うけど、やっぱり好き。今日はもう寝ます、おやすみ』

2013-08-04 20:55:20
真麻一花@しの @maahikka

少し待っていたけれど返事は返ってこなかった。真っ黒な画面を見つめて溜息をつく。次があるという言葉で自分を慰め、途切れたメールの寂しさから目を逸らし、目を閉じた。メールの届く音がした。美香は慌てメールを開く。『俺も不思議な感じだな。でも会えたことは嬉しいと思っているから。おやすみ』

2013-08-04 21:10:37
五十鈴スミレ @midori_tya

「……メールの方が素直じゃん」思わず顔がにやける。おやすみ、と言われたのだから寝なければ。こんなに浮き立った気持ちで寝れるだろうか。美香は横になって目をつぶる。今日見た祐大の様々な表情が思い浮かぶ。再会できて本当に、本当に嬉しかった。「おやすみ、祐大さん」夢にも出てきたらいいのに

2013-08-04 21:18:06
真麻一花@しの @maahikka

目を閉じてさっきのメールをどんな顔して作ったのか想像する。何と返そうか、あの怖い顔して困ってたりしたのだろうか。くふふっと笑いが漏れる。嬉しくて幸せでたまらない。ああもう、大好き。幸せ。嬉しい。会えた……!ほんの数時間前まで記憶からぼやけていた思い出の顔が、今は明確に思い出せる。

2013-08-04 21:25:41
五十鈴スミレ @midori_tya

ずっとずっと、探していた人。「大きなおじさん」はおじさんじゃなかったけれど、小さかった美香が好きになったところは変わっていなかった。たった数時間で、驚くほどに距離が近くなった。もしかしたら、「一ノ瀬美香」になれる日が来るかもしれない。そんなことを考えるくらい、美香は浮かれていた。

2013-08-04 21:33:24
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