夏祭りの出来事(仮)

体格差萌えで強面男性がかわいい女の子に触ったら、思ったより柔らかくてびくってなるっていいよねって話から派生。→強面男子高校生×少女 →少女成長後再会そしてラブへ…の道を辿る予定。 ブログにて、加筆修正した物を公開してます。 http://mikarika.jugem.jp/?eid=1
3
前へ 1 ・・ 7 8 次へ
真麻一花@しの @maahikka

「それで祐大さんが納得するなら、それで」納得が行かないまま美香は肯いた。が、なんだか納得いかない。「大体、智大さんだって、祐大さんのこの態度見て疑う方が失礼の域だと思うでしょ」話を振られた智大が少しひるむ。「まあ、確かに…リカちゃんはどう思う?」「私は、智大さんに言われたら断る」

2013-07-31 17:15:34
五十鈴スミレ @midori_tya

キッパリとした理香の答えに、智大はあははっと笑った。「それで正しいと思うよ。二人ともしっかりしてるね。ということで、兄貴の負け」ぽん、と智大は祐大の肩を叩く。祐大はまだ険しい顔のままだ。「送ってくれるって言ったのは、祐大さんの方だよ?」「……わかってる。近くまでな」

2013-07-31 17:18:43
真麻一花@しの @maahikka

車に向かう道すがら、溜息混じりの祐大の言葉に智大がニヤニヤと笑う。「断られたら断られたで心配するくせに」「うるさい」祐大が頭に向けて振るった拳を、智大が笑いながら片手でガードして払う。その様子がいかにも仲良さげで、自分たちにはないやりとりに、美香と理香は顔を見合わせて笑った。

2013-07-31 17:27:57
五十鈴スミレ @midori_tya

「私、お兄ちゃん欲しかったかも」理香の呟きに、智大が反応する。「オレなんてどう? これでも妹いるし」「智大さんはなんか違う」バッサリと切る理香に、美香は笑う。「祐大さんみたいなお兄ちゃんは、たしかに欲しかったかも」そう言いつつも、祐大が兄じゃなくてよかったとも思うのは、恋心ゆえ。

2013-07-31 17:42:07
真麻一花@しの @maahikka

「へぇ?『お兄ちゃん』でいいの?」分かっていて言う智大に美香はむっとする。「智大さんって意地悪だよね!絶対妹さんにも絡んで怒られてるでしょ!」祐大の後ろに隠れるようにして言えば、頭の上でははっと低く笑う声がした。「まさにそのままだな、智大」「何?俺ミカちゃんにも見抜かれてるの?」

2013-07-31 17:56:01
五十鈴スミレ @midori_tya

そんな話をしているうちに、駐車場までたどり着いていた。「ミカちゃんかリカちゃん、助手席にどうぞ。道を教えてもらわないといけないからね」そう言って智大は一足先に後部座席へと座る。美香と理香は目を合わせて、無言で頷き合う。「私がナビするね」美香は助手席に乗り込んだ。「ああ、頼む」

2013-07-31 18:03:07
真麻一花@しの @maahikka

「兄貴の助手席に妹以外の女の子が乗ってるとか……なんか感慨深いわ」「おい……」眉をひそめた祐大に、美香がくいついた。「え!じゃあ、私、祐大さんの初助手席ゲット?!」祐大の眉間のしわが深くなる。「頼むから黙ってくれ」祐大は溜息をつくと、おもむろに助手席の背に腕を伸ばした。

2013-07-31 18:22:17
五十鈴スミレ @midori_tya

「!?」黙っていろと言われたので口を閉じたが、思わず声を上げそうになった。美香の座っている助手席の背もたれに、祐大が手をついている。別に、距離が近いとかではないけれど……なぜだか照れる。どうやら祐大は後ろを確認しているようだ。車がゆっくりと動き出した。

2013-07-31 18:29:34
真麻一花@しの @maahikka

運転席と助手席の間をのぞき込むようにして後ろを確認している祐大の右手は器用にハンドルを操作している。顔が近い。薄暗い車内で見る祐大の真剣な表情にドキドキする。バックする動きは滑らかで慣れた様子で、すぐに普通の体勢に戻る。シートに添えられていた腕が抜かれた。「で、どっちに向かう?」

2013-07-31 19:47:23
五十鈴スミレ @midori_tya

「あ、え、えっと、みみ、右に……」動揺からすぐに立ち直れなかった美香は、盛大にどもってしまった。こんなことくらいで、恥ずかしい。でも、しょうがないと思う。好きな人の車の助手席に座っているんだ。真剣に運転している顔を見て、距離が近づいて、ドキドキしないほうがきっとおかしい。

2013-08-01 22:21:06
真麻一花@しの @maahikka

後部シートでは相変わらず理香と智大が普通に会話している。二人共が気さくなタイプならではの打ち解けの早さなのかもしれない。私も、どっちかというと話しやすいとか言われる方なのになぁ。けれど、相手は祐大で、やっぱりちょっとでもよく思われたい気持ちがあるし、何より祐大が寡黙だ。

2013-08-01 23:11:43
五十鈴スミレ @midori_tya

必要なことしか話さないのは、祐大の性格なんだろう。嫌われてはない、と思う。嫌われるほど知り合っていないというのが大きいかもしれないけれど。面倒には、少し思われているかもしれない。それでも、まったく意識してもらえないよりはマシだ。「次は?」「えっと、三つ目の信号まで、まっすぐ」

2013-08-01 23:16:04
真麻一花@しの @maahikka

美香が答えると、祐大は肯いただけで、無言で運転している。かっこいい。かっこいいが、その無言を心地よいと楽しめる域にまではまだ達していない。「祐大さんちはどっち方向?」「西町だ」美香の家とは逆方向だが、さほど遠くはない。「結構近いね!」それならちょっとバスを乗り継げば簡単にいける。

2013-08-01 23:56:49
五十鈴スミレ @midori_tya

はしゃいだ気分は、けれどすぐに落ち着いた。さすがにいきなり家まで押しかけるのは無作法だ、ということに気づいたから。距離が近いだけでもうれしい。でも、いつかお互いの家に行き来できるような関係になれたら……。「いつか行ってみたいな、祐大さんの家」この程度の発言は、許されるだろうか。

2013-08-02 00:04:13
真麻一花@しの @maahikka

「……機会があれば、そのうちにな」湾曲な拒絶なのか、本心なのか。怒っているようにしか見えない顔からは気持ちを読み取るのは難しい。でも、あからさまな拒絶ではないという事は、美香に対しての気遣いがそれなりにあるからだ。今はそれだけで満足しておこう。「うん!」美香は笑顔で肯いた。

2013-08-02 00:11:55
五十鈴スミレ @midori_tya

「信号で左に曲がったら、またしばらくまっすぐだよ。曲がるとこまで行ったら言うね」「わかった」走る速度は一定、曲がる時はウインカーを点滅させ、駐車場から出るときも危なげなかった。祐大は安全運転のようだ。父の運転と同じくらいに安心できるかもしれない。そんな所も好きだと思ってしまった。

2013-08-02 00:28:46
真麻一花@しの @maahikka

「祐大さんの運転、乗り心地いいね」「そうか?」祐大の口元が少しだけゆるんだのを見て嬉しくなる。「うん。ドライブ行きたい!」「ドライブしてるだろうが」決死の願いに冷ややかな反応が返された。「…どっか行きたい」「お前んちにな」切なくなって黙り込むと溜息混じりの声がした「そのうちにな」

2013-08-02 17:05:57
五十鈴スミレ @midori_tya

「うん!」いつかにつながる約束だ。嬉しくなって、美香は笑顔で頷いた。祐大は一瞬だけちらりと視線をよこした。戸惑っているような、困惑しているような顔で。困らせているのはわかっている。でも、引いてしまったら好きになってはもらえない。「じゃあ、再来週の日曜日はドライブに行く?」

2013-08-02 19:23:03
真麻一花@しの @maahikka

指輪を見ただけで帰されたらたまらない。「…再来週か…」眉間の皺を深くしながら祐大がそのまま口をつぐんだ。後ろからクククッという笑い声がする。「あ、兄貴、すごい勢いで約束が増えて行ってるな…」後ろをのぞくと智大が腹が痛いと言わんばかりにお腹を抱えている。理香の笑みも生温かい。

2013-08-02 22:23:50
五十鈴スミレ @midori_tya

「智大……」祐大はバックミラー越しに智大を睨みつける。「兄貴的にもいいんじゃない? 約束がいっぺんに片づけられるんだし」智大の言葉に美香ははっとした。そういえばそうだ。違う日にすればよかったかもしれない、と今更に思う。でも、まずは再来週をデートらしくするほうが重要だ、と思い直す。

2013-08-02 23:06:28
真麻一花@しの @maahikka

眉間に皺を入れたまま運転していた祐大が、ふっと溜息を吐く。「…そうだな、再来週にでも行くか」よっし!デートだ!これならちゃんとデートだ!智大の言葉がなかったら、そのまま流されてたかもしれない。智大さんグッジョブ!こっそりと後ろに向かって親指を立てると「おい…」横で低い重低音がした

2013-08-02 23:14:31
五十鈴スミレ @midori_tya

「え、えへへ……」美香は笑ってごまかした。祐大はギアから手を離して、眉間を揉むようにした。「あんまり怖い顔してると、しわが残っちゃうよ」美香が言うと、祐大は今度はこちらを睨んできた。「誰のせいだ」「私?」「自覚があるなら困らせないでくれ」それは無理だ。だって、意識してほしいから。

2013-08-02 23:31:20
真麻一花@しの @maahikka

「ごめんね」とはいえ一応謝ってはみるものの、美香に浮かんでいるのは満面の笑顔だ。「反省してないだろう」せっかく揉んだ眉間にまた皺が寄っている。「だって、うれしいもんね。九年間探してたんだもん。祐大さんこそ口約束で小学生惑わせたノを反省して責任を取らないとね」祐大が言葉に詰まった。

2013-08-02 23:56:36
五十鈴スミレ @midori_tya

少なくとも美香はずっと本気だった。途中で祐大はその場のノリだったのだと気づいても、ずっと忘れられなかった。だからこうして話すことができるだけで、美香は幸せだった。「あ、次で左に曲がって。それからまたすぐ右に」だんだんと、家が近くなっていく。祐大といられる時間は、あとほんの少し。

2013-08-03 00:05:08
真麻一花@しの @maahikka

「もうちょっとで着いちゃうなぁ」次の約束があるけど離れるというその事が不安を誘う。「ねぇ、祐大さんも私と再会できて、ちょっとは嬉しかった?」運転する横顔を見つめる。祐大の引き締められた口元は更に力がこもり、顰められた目元が鋭くなる。困っているその顔を今は楽しめる気分ではなかった。

2013-08-03 08:29:24
前へ 1 ・・ 7 8 次へ