夏祭りの出来事(仮)

体格差萌えで強面男性がかわいい女の子に触ったら、思ったより柔らかくてびくってなるっていいよねって話から派生。→強面男子高校生×少女 →少女成長後再会そしてラブへ…の道を辿る予定。 ブログにて、加筆修正した物を公開してます。 http://mikarika.jugem.jp/?eid=1
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五十鈴スミレ @midori_tya

「これが若さってやつか……」「祐大さん、それはちょっと、おじさんくさいよ」美香はついツッコミを入れてしまった。「実際おじさんだからな」否定しない祐大に、美香はむうっと口を尖らせる。そう言うことで距離を取ろうとしているように聞こえたから。「私にとっては、おじさんなんかじゃないよ」

2013-07-28 17:42:01
真麻一花@しの @maahikka

「お姉ちゃんもそこはもういいから!」「だねー。そろそろ食べない?」理香と智大が呆れを含みつつ、にやにやと美香と祐大を見つめる。「…そうだな」「はい」祐大と美香が殊勝な態度でうなずいた。「じゃあ、いただきます」理香が改めて笑いながら手を合わしたのに、残りの三人は顔を見合わせて笑う。

2013-07-28 18:14:12
五十鈴スミレ @midori_tya

それから、雑談をしながら唐揚げやベビーカステラを食べていると、いつの間にか花火が上がる時間が近づいてきていた。「そろそろ移動しよっか」ともひろの言葉に全員席を立つ。ゴミをまとめて公園に設置されているゴミ箱に捨ててから、花火が見える場所を知っている智大の案内で移動した。

2013-07-28 18:20:26
真麻一花@しの @maahikka

上り坂のカーブ。祭り会場を少し離れ見下ろせるその位置は、少し離れているけれども、確かに見晴らしがいい。「花火は小さく見えるけど、目の前で見てる気分になれるよ」ガードレールに腰掛けながら智大が説明する。路肩がカーブの部分だけ広がっており、離れた場所ではもう一組花火をスタンバってる。

2013-07-29 08:05:25
五十鈴スミレ @midori_tya

「特等席みたいだね」そう言って祐大に微笑みかけると、祐大も表情を緩めてくれた。「もうすぐ始まるね」智大は腕時計で時間を確認している。美香も携帯を見てみると、あと三分ほどで始まることがわかった。「わくわくするね!」「ね」理香の言葉に同意を返す。静かに待っていると、夜空に花が咲いた。

2013-07-29 18:39:51
真麻一花@しの @maahikka

「はじまった!」祐大の隣りに陣取って、シャツの裾を引っ張る。それに反応して視線を落とした祐大に「きれいだね」と美香が胸を弾ませながら笑った。それに答えるように祐大の口端が弧を描く。それがたまらなく嬉しい。感動や楽しい気持ちを共有できることは幸せだと思う。

2013-07-30 18:15:16
五十鈴スミレ @midori_tya

九年前はまだ子どもだったから、花火が始まる前に祐大と別れて帰った。これが、祐大と初めて見る花火だ。同じものを見て、同じような思いを感じることができる。きっと、これからはもっと色んなものを共有できる。祐大の隣で花火を見ながら、美香は喜びと期待で胸がいっぱいになった。

2013-07-30 18:20:41
真麻一花@しの @maahikka

「ねぇ、祐大さん。指輪、まだ持っていてくれてるって言ったよね」花火の音の合間に尋ねる。「ああ」肯く横顔を視界の端に移しながら、ドキドキする胸を抑える。「今度、指輪見せて」「え?」絶対に、次に繋げる。これからを共有していくために。「小さかったし、どんなの渡したのか、覚えてないし」

2013-07-30 18:26:28
五十鈴スミレ @midori_tya

見せるということは、もう一度会うということ。それをわかっているからか、祐大は迷うように視線をさまよわせた。「……それくらいなら、まあ」「いい?」祐大はしかめっ面をしつつも小さく頷いた。「やった! ありがとう!」うれしくて、思わず花火から祐大の方に顔を向けてしまった。

2013-07-30 18:58:45
真麻一花@しの @maahikka

祐大が難しい顔をしてはぁ、と息を吐く。ガシガシと頭を掻きながら視線は花火に向いていた。「…迷惑?」「そんな事はない」そう言う顔は難しい顔だ。「女子高校生に懐かれてるんだよ。『おじさん』って言い張るのなら、『おじさん』らしく喜んでおけばいいと思うの」美香は素知らぬ顔で言ってのける。

2013-07-30 20:33:00
五十鈴スミレ @midori_tya

「……俺はそんな危ない『おじさん』じゃない」そんなこと、言われなくても分かっている。常識人だからこそ、困っているということも。祐大から見たら高校生なんて恋愛対象外なんだろう。分かっていても、諦められないのだからしょうがない。「そんな真面目なところも、好きだよ」

2013-07-30 20:37:29
真麻一花@しの @maahikka

「……俺を犯罪者にしたいのか」顔がしかめられる。仁王様のような横顔を見ながら美香はくいついた。「それは脈あり発言なんだけど!なりそうなの?!」「なるか!」ちぇーと唇をとがらせた美香は、すぐにあははっと声を上げて笑う。「だったら、全然問題ないじゃない。私が祐大さんを好きでも」

2013-07-30 20:40:56
五十鈴スミレ @midori_tya

「問題あると思うんだけどな」「気のせいだよ」美香はあっさりと言いきった。「……調子が狂う」祐大は片手で顔を覆って、そう呟いた。花火は見ないんだろうか、もったいない。「難しく考えることないよ。ただ、私が祐大さんのことを好きなだけ、なんだから。祐大さんは普通にしていていいんだよ」

2013-07-30 20:45:36
真麻一花@しの @maahikka

「ミカちゃんも普通に頼むよ」「もちろん」フツーにアタックしますよ。と心の中で付け足して、美香は花火を見上げる。「ほら、祐大さんも花火見て」ちょうど中盤の盛り上がりの盛大な花火になっている。「で、いつだったらあいてる?」「は?」「だから指輪見せて貰うの。社会人って忙しいんでしょ?」

2013-07-30 20:54:25
五十鈴スミレ @midori_tya

祐大は花火を見ながら、しばし沈黙した。美香も静かに答えを待つ。「……再来週の日曜だったら何も用事はなかったはずだ」「じゃあ、その日に会おう! 詳細はまたメールで、かな?」「そうだな」日付だけでも次の約束ができて、美香の胸はドキドキとうるさく鳴り響く。花火の音とどちらが強いだろう?

2013-07-30 21:01:39
真麻一花@しの @maahikka

再来週の日曜が待ち遠しい。顔は自然とにやけてしまう。ふと目の端に理香と智大の姿が映った。ニヤニヤ笑っているところをみると聞いていたのだろう。照れ隠しも合わせて「いーっ」と顔をしかめてから、ふんっと顔を背けて花火を見る。何とでも思えばいい。からかいなんて受けて立つ。だって幸せだから

2013-07-30 21:13:32
五十鈴スミレ @midori_tya

それからじっと、黙って花火を見ていると、後半の盛り上がり部分にさしかかったようだ。次々と上がる色とりどりの花火に、自然とため息がこぼれた。最近は円形以外の花火も増えてきたような気がする。変わった形の花火が上がるたび、面白いね、と言うように祐大に笑いかけると、彼も微笑み返してくれた

2013-07-30 21:33:18
真麻一花@しの @maahikka

一時間弱ほどの長い花火の時間は、驚くほど早く過ぎていく。ラストスパートに向かい盛大に花火が花開くにつれて、その美しさが今の共有している時間の残りを示しているように思えてくる。込み上げるのは楽しさと、幸せと、苦しさと。もう少し、後もう少し。続いて欲しい時間は刻々と終わりへと近づく。

2013-07-30 21:44:38
五十鈴スミレ @midori_tya

最後の花火はあっけなく散ってしまった。ドンッ……っという音の余韻が残った。花火が終わったということは、もうお別れということ。いくら次の約束があるとはいえ、寂しいことには変わりはない。しばらく花火の上がっていた方向を見ていたけれど、意を決したように美香は祐大を見上げた。

2013-07-30 22:20:47
真麻一花@しの @maahikka

「終わっちゃったね」一瞬の空白と、ぽんと頭に乗せられる大きな手。「そうだな、帰るか」祭りの終わりはいつでも寂しい。高い所から一気に引いていくような感覚。あっけない祐大の言葉を聞いて、いつも以上に寂しい。大きな手を頭に乗せたまま「うん」と小さく頷けば、ぽんぽんと大きな手が跳ねる。

2013-07-31 11:36:31
五十鈴スミレ @midori_tya

「送ってく」「え?」祐大の言葉に、美香は目を丸くした。「驚くようなことじゃないだろ。こんな時間に女の子二人だけで返せるわけないよ」照れているのか、祐大はむすっとした顔をした。女の子扱いがうれしい。それより何より、もう少し一緒にいられるのが、すごくうれしかった。「ありがとう!」

2013-07-31 16:06:23
真麻一花@しの @maahikka

笑顔で礼を言った美香に、祐大の顔が更に厳しくなる。「…そんなに簡単に信用するな!」送っていくと言ったのは祐大のくせに。思わず首をかしげた美香に、後ろから噴き出す声がした。「あ、兄貴、言ってることがめちゃくちゃ…」気持ちは分かるけどね、と笑いを堪える智大に祐大がむっと視線を向けた。

2013-07-31 16:14:58
五十鈴スミレ @midori_tya

「あのね、ミカちゃん。送ってくってことは、家の場所を知られちゃうってことでしょ。だから素直に喜んじゃいけないよ、とオニーサンは言いたいわけだ」智大の説明に、美香は首をかしげる。「祐大さんに家を知られたって、困らないよ?」「……兄貴が心配になるのも分かるわ」智大は苦笑をこぼした。

2013-07-31 16:40:36
真麻一花@しの @maahikka

「なんで?親しくもない男の人に家を教えたりしないし、車にも乗らないよ。そんなの当たり前だよ」美香が眉をしかめた。「じゃあ…」「おねーちゃん、ガード厳しいよ」溜息混じりの理香の声がした。「結構もてるけど容赦なく振ってるし、近づけさせないよ。あんまりお姉ちゃんのこと馬鹿にしないで」

2013-07-31 16:50:48
五十鈴スミレ @midori_tya

「じゃ、この危なっかしさは兄貴限定か」智大の納得したような口ぶりに、美香は反論する。「危なっかしくなんてないよ。祐大さんは変なことしたりしないでしょ?」「それはそうだけど……」祐大はまだ引っかかるものがあるらしい。「家の近くまで送ってもらえばいいんじゃない? ね、お姉ちゃん」

2013-07-31 17:11:16
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