【twitter小説】ニェスの蛇の巣#4【ファンタジー】
一人は黒いスキニーパンツに灰色のミニワンピースの小娘。もうひとりは赤いレオタードに大仰なマントを着た長身の女。メルヴィとクシュスである。彼女たちは帝都行きの列車を待っていた。 149
2013-07-15 18:19:01列車の到着にはまだ時間がある。朝早く、気温はまだ冷たい。コーヒー売りの娘が近くを通りかかったのでクシュスは40ペンスを支払い二人分のコーヒーを買った。 「メルヴィ様、コーヒーを飲んで少し温まりましょう」 150
2013-07-15 18:23:29メルヴィは笑顔でコーヒーを受け取り、香ばしい香りを味わいながらニェスの街を見つめていた。結局呪いが反射したせいか、スネークタン家の3つの分家のうち2つが突然謎の死で断絶した。 151
2013-07-15 18:27:24生き残った分家も偶然の一致だとしらを切り、証拠もなかったのでこの件はうやむやになってしまったが、因果応報と言うべきだろう。この後レニシェル達はどうするのだろうか。それを聞かないまま滞在期間は過ぎてしまった。 152
2013-07-15 18:32:45ふと駅のホームが騒がしくなった。視線をそちらにめぐらすと、黒いスーツのボディーガード数人が乗客を捌いて歩いてくる。中心にいるのはよく見知った人物だった。 「レニシェルさん……」 153
2013-07-15 18:36:16そこにいたのはスーツとシルクハットで紳士の格好をしたレニシェルと簡単なドレスを身に纏ったニギミニアだったのだ。ニギミニアは両手に大きな旅行カバンを持っている。どこかに行くのだろうか。 154
2013-07-15 18:42:05「あっ、メルヴィさんにクシュスさん!」 ニギミニアは明るい声でこちらに呼びかけた。表情は晴れ渡っていて、まるで大きな重荷から解放されたようだった。メルヴィ達は少し話をすることにする。 155
2013-07-15 18:45:51話を聞くと、なんとあの事件の後採掘権をニェス政府に全部売ってしまったらしい。大量のニェス市債が刷られたが、それも数年で完済できるだろう。それほどまでの収入源なのだ。今まで半分公営のような扱いだったが、正式にニェス政府の物になったのだ。 156
2013-07-15 18:50:20「思い切ったことをしましたね」 「元々僕には重すぎる力さ。これからは辺境に行って農地でも買って暮らすよ」 「あなたたちならきっとうまくいきますよ」 「ああ。ありがとう」 157
2013-07-15 18:55:09彼らはミス市に行くらしい。それは帝都とは反対側の方向だ。先にミス市行きの列車がホームに入ってくる。別れを告げ、彼らはボディーガードを引き連れ行ってしまった。 「結果的にめでたしめでたし、かな」 ホームで小さくつぶやく。 158
2013-07-15 19:00:24レニシェル達を乗せた列車はやがて発車した。窓から手を振るひとの姿が見える。ニギミニアだ。 「さよならー!」 「さよなら。元気で!」 ニギミニアは今までにない笑顔で手を振ったのだった。 159
2013-07-15 19:05:21入れ違いで、今度はメルヴィ達の乗る列車がホームに進入してくる。 「わたしたちも行きましょう」 クシュスはそう言って地面に置いておいた荷物をまとめる。 「力を持っていても……手放しちゃうんだね」 160
2013-07-15 19:10:23メルヴィはまたつぶやく。レニシェル達の去ったほうを見ながら。 「力は必死に守るものではありませんよ。いらなければ、捨てるだけです」 クシュスはにやりと笑った。 「欲しくなったときはまた最初から頑張ればいいのですよ」 161
2013-07-15 19:28:18「力はいつだって、手を伸ばして手に入れるものなのですから」 そう言ってクシュスは列車に乗り込んだ。メルヴィはしばらく列車の去った方を見ていたが、やがてふっと笑い、列車の扉をくぐったのだった。 162
2013-07-15 19:32:27