第一回大罪大戦SIN【戦闘フェーズ03】
-
sinlite_ohari
- 3115
- 0
- 0
- 0
![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
『怠惰』が、目の前に。俺は立っているのもやっと。自分の魔力なんて、もうこの手にあるチェーンソーだけだ。臓器を治せたのは、喰ったフェイの『増殖』があったから。 もはや、俺にこれ以上の手はない。でも、諦めたくない。 睨みつける目だけは、光を失わず。
2013-07-19 15:37:28![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……まだ、諦めないか」 もう少し違う形であれば、また違った結果があったかもしれないが。その目を見つめ、そう思う。 ……動かないのなら安らかに眠らせてやると、『美徳の剣』を振り上げて。
2013-07-19 15:47:56![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
剣が振り上げられる。終わりたくない。まだ成し遂げていない。諦めたくない。『生きたい』。 チェーンソーを投げ捨てる。足はまだ、無事だ。踏み出す。 狙うは剣を振り上げる『怠惰』の肩。固まりかけた血でねばつく口蓋をこじ開けて、獣の如く牙を剥いた。
2013-07-19 16:15:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……ッ!?」 痛みが走る。此方が気づき、右手を振り下ろすよりも早く、『暴食』は肩口へと喰らいついた。その速度は、その様相はまさしく、追い詰められた獣そのもの。 ……剣を取り落としはしていないが、そのまま止めをさす事も出来ぬ。再び、『怠惰』の身体に、力が渦巻いた。
2013-07-19 16:38:42![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
噛みしめる。肉の味。しかし喰い千切るだけの力はもう、なかった。 ただ喰らいついたまま。頭ごと吹き飛ばしたりしない限り、その牙をそうやすやすと離しはしないだろう。 ――結局、勝てなかった。でも、ほんの少しだけでも、肉が喰えた。 満たされた感覚。肉でいっぱいになった口で、笑った。
2013-07-19 17:15:35![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
髪の毛が膨れ上がり、インヴィディアを貫こうと大剣を作る。大剣が髪の毛から本物の金属に変わる。鈍く光る大剣は、そのままインヴィディアを貫こうと──その刹那。「がっ……」首に感じる圧力。首、首……リボン! ルクスーリアに付けられた首のリボンが、彼女を苦しめる。→
2013-07-19 18:55:56![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
→声が出ない。苦しい、苦しい苦しい嫌だ嫌だ嫌だ……!! 髪の毛が普段通りの姿に戻り、大剣がからん、と落ちた。 するとリボンの力は少し弱まり。じわじわと締め付けられ、身体は動かない。ルクスーリアの、仕業? こんな細工をしておくなんて……。インヴィディアを斬れなかった。きっ、と睨む。
2013-07-19 18:59:47![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
死ぬ事は怖くない。死より怖い事が何か自分は知っている。――けれど自分が彼女の前でラースを奪った。憎しみは当然だ。唯自分が殺されればきっと黒は、ルクスは彼女を殺める。また繰り返す。それが、この争いだと言うのか。異なる色を持つ大罪に赦された、出来る唯一の事?心を、持っているのに。 →
2013-07-19 20:10:36![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
→貫く寸前、時が止まった様に止まり、苦しむアドウェナの姿が見え、大剣は音を立てて落ちる。それでも視線から憎しみは消えていない事は分かる。憎悪も憤怒も心ある限り持ち得て当たり前で、消える筈無く。 「アド…ウェナ…ごめん、ごめんね…」 毒で痛みで動かぬ体で声を。呼ぶ名に、声に意味は。
2013-07-19 20:25:06![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
力を弱めた『ラスト』のリボンは、まるで首元に手をかけたような。 後ろから、そっと腕を回したような。 「 」 呼んだ名は、何色のものか。 「独りには、しませんよ」 女の耳元だけに聞こえる囁きは、甘い。 →
2013-07-19 21:08:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
最初の戦いで、彼女を連れて帰ることにした。 ならば、彼女が黒に敵意を向けるなら、窘めるのが最後の役割。 『座』(るくすーりあ)ではなく、『個人』(ななし)の、役割。 →
2013-07-19 21:08:57![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
るーじゅ 『 ラスト 』としてを思いながら私に絞められるか のわーる 『アドウェナ』として共に逝くか 『 』二色を知る二人で生きていくか 「選択の時間です」 この言葉をを、覚えているだろうか。 「貴女は――だれ?」 この問いは、何を齎すのだろうか。
2013-07-19 21:09:29![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
あの時と同じだ。どれを選んでも、結局アタシは死ぬ。髪の毛はもう動かず、雨に濡れて光を反射するだけ。インヴィディアを睨んでいたそのままの瞳で、ルクスーリアを見据える。耳元の声に誘惑されそうになり……でも、ひとつだけ。→
2013-07-19 21:45:00![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
喋れる程度にはリボンの力が弱まっていた。「ひとつだけ、聞いても……いい?」ルクスーリアは拒否しないだろう。そう思いながら、言葉を紡ぐ。質問に質問で答えるのはいささか不躾だが、どうしても知りたいのだ。「どうして、あの時……アタシを殺さなかったの?」
2013-07-19 21:50:31![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「が……っ」 獣の牙が、深々と食い込む。それ以上進むことはないが、易々と離れることもない。血が噴出し、その口中が満たされる。 「……ッ」 同時に漏れ出す、『流動』。渦巻いていた力が流出し、空へと散り…… 「……終わりだ」→
2013-07-19 21:51:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
剣から、手を離す。落ちるそれは地へと突き刺さり、残された力の入らぬ右手を、ぐ、と握る。 『流動』の力をただの威力へと変え、肩口ごと巻き込み、炸裂した。
2013-07-19 21:56:47![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
噛みついていた肉が、弾け飛んだ。顔の肉も一緒に削られながら吹き飛ばされる。吹き飛び、異様に軽い音を立てて地面に叩きつけられる。 もう、指一本すら動かせない。 自由なのは、考えることだけだった。
2013-07-19 22:44:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
俺の『願い』は、叶わなかった。――いや、まだ、あいつがいる。 ウーヌス、『黒の嫉妬』。ほんの少ししか、言葉を交わせなかった事を悔やむ。だがきっとあいつは、俺と同じ先を求めている。 もはや俺には何もできない。託すしか、ない。
2013-07-19 22:45:03![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……フェ……ご、め……」 俺は、勝てなかったよ。 雫が頬を伝ったかどうかは、わからなかった。 雨の音が遠くなる。何も感じられなくなる。幼い頃、恐ろしかった独りの闇が、今は、俺を優しく包み込んだ。 目を、閉じる。
2013-07-19 22:46:42![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
何かが拒絶される気配がする。見ずとも、分かった。又一つ涙がただ静かに頬を伝う。 そして、唯それだけははっきりと聞こえた、ルクスーリアの言葉。 『貴女は――誰』 その言葉に、何かがざわつく。憤怒が消え、黒き嫉妬という罪としては成り立たない今の自分は――何? 自分は、誰?
2013-07-19 23:13:08![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……、っそ」 『暴食』を見遣り、今度こそ立ち上がっては来ないだろうと確信する。そうして、大きく息を吐いた。 気を抜けば、腕のあった場所から傷が噴き出し、消耗がより酷くなる。これ以上の戦闘は、厳しいか。 これ以上の損耗を避けるために膝をつきつつ、もう一方へと目を移した。
2013-07-20 00:10:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ああ、私を、睨むんですね。 影がかかって青鈍の瞳も桃色の欲望も見えない。 犯しそうに笑う口だけが見える。 贄として連れて帰っても、向こうで誘っても。 人間は、すぐに壊れてしまった。 筋骨隆々なものでも、長くは持たなかった。 人間は、脆い。→
2013-07-20 00:29:39