芦辺拓先生の小説書き方講義

本格ミステリ作家 芦辺拓さんによる「小説の書き方」の呟きをまとめました。「お話づくり」に関する具体的なアドバイスとなっています。
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芦辺 拓 @ashibetaku

作家志望者が「設定にのみ凝ってお話が作れない」ことについて昨夜つぶやきがあったようで、僕も思うところを述べたかったのだが、何となく機を失した。一つの典型例がこのレビュー http://t.co/8wcCaancZe で紹介されているが、ほとんどの人はそう心配することはないと思う。

2013-07-15 07:26:32
芦辺 拓 @ashibetaku

子供のときからお話を次から次へ作っていたという人が、特に女性に多いようだが、物語のパーツは思いついてもそれを構成できないのは珍しくなく、そうなると設定作りに逃げこんでしまいがち。僕も物語が大好物なのに自分では組み立てられないことが続いた。だからまぁ何とかなるというテキトーな話。

2013-07-15 07:35:43
芦辺 拓 @ashibetaku

僕が小説作法に目覚めたのは、前にも書いたが友人と8ミリ映画を作ったとき。ブツ切りの場面ばかりで、どうしても組み立てられないシナリオが、脚本の勉強をした友人の手にかかるとあれよとあれよとできあがっていった。人並み以上にエンタメ小説や映画は読んで観てたはずが、何も身についていなかった

2013-07-15 16:07:57
芦辺 拓 @ashibetaku

その友人が、自分のシナリオ作りの原点として挙げたのが、望月三起也氏の『秘密探偵JA』。最も勉強になるとして勧めたのが『大長編ドラえもん』。これは今も一番のオススメ。あと野田昌宏氏の『スペースオペラの書き方』を座右にして、自分の書きたいネタをもやもやさせてたらまぁ何とかなります。

2013-07-15 16:15:25
芦辺 拓 @ashibetaku

望月作品でも『ワイルド7』は八方破れな面白さが身上だが、それよりやや穏当な作風の『秘密探偵JA』はまさに物語作りのお手本の宝庫。敵地潜入、犯人ならぬスパイ当て、サバイバルなど一作ごとにパターンが違い、ダイハードばりの伏線、粋でイナセな脇役たち、しゃれたセリフに満ちている。必読。

2013-07-15 16:22:29
芦辺 拓 @ashibetaku

……だから、女子高生を主人公とした『秘密探偵JK』という同人作品があるのを知ったときの僕の悔しさといったら。でも、飛鳥次郎の娘の話とか、誰か描いてもいいと思います。数年前に話を聞いたきりの、ルーシー・リューがチャーリー・チャン警部の孫をやるという企画と並んで期待したい。

2013-07-15 16:29:08
芦辺 拓 @ashibetaku

作品構成上一番厄介なのは、本来無関係な人々が無理なくつながり、情報をリレーしてゆく――という展開だが、この教材として大阪の創作講座で邦枝完二原作・河野寿一監督の「白扇 みだれ黒髪」の録画テープを使ったことがある。橋本忍のシナリオが、とにかく精密機械のような巧さなのだ。ソフト化熱望

2013-07-15 18:52:35
芦辺 拓 @ashibetaku

唐突に小説の書き方の話。幼いころから天性のようにお話作りが身についている人(女性に多い)以外は、物語の設定ばかりで話が始まらず、初めても後が続かないと思うが、こうした人のための秘訣がある。それは既存の作品からhokum(ホーカム=お定まりの趣向)をストックして暗記することだ。

2013-07-20 00:41:20
芦辺 拓 @ashibetaku

喧嘩友達のホーカム、物陰からのぞく怪しい影とその正体のホーカム、絶体絶命からの助かり方のホーカム、思わぬところにいる知恵者のホーカム……今は「フラグ」というのかもしれないが、パブリックドメインになったようなハリウッド映画には山ほどふくまれている。もっともそれだけではまとまらない。

2013-07-20 00:44:31
芦辺 拓 @ashibetaku

そこで、そうした映画を見ながら、ストーリーの「結び目」になるような個所をチェックする。映画を見ながら筋立てを起こすときは、見せ場やアクションではなく、どうしてそこへ至ったか、登場人物がなぜそのことを知ったかに注目してメモしよう。ホーカムとホーカムをつなぐパターンを身につけるのだ。

2013-07-20 00:47:57
芦辺 拓 @ashibetaku

芸術も文学もへったくれもない話になったが、わかりやすさが身上の娯楽映画では、ここのところがちゃんと作られている。こうした組み立てがわかると思うままに物語世界を構築できる……可能性が高まるでしょう。前にもあげたが、紙媒体での最良の教科書は「秘密探偵JA」と「大長編ドラえもん」の前半

2013-07-20 00:52:25
芦辺 拓 @ashibetaku

小説でなく映画や漫画をあげたのは、ストーリーのつながりのなさを文章のアヤでごまかす手を封じるため。文字化する前にきちんとつながったストーリーを作れるようにしておけば……というわけ。何だ、大阪の創作サポートセンターとかでいつも言ってることと同じではないか。耳タコな人はごめんなさい。

2013-07-20 00:54:51
芦辺 拓 @ashibetaku

MAQ@junk_landさんがまとめてくださった「小説の書き方」だが、まるで既存のパーツを組み合わせて一丁上がりみたいな発想に鼻白まれた向きもあるかもしれない。でも、これは自分の中に書きたい物語世界がモヤモヤしてるのにアウトプットできない人(僕もでした)のためのものでした。

2013-07-20 14:40:04
芦辺 拓 @ashibetaku

たとえば僕は漫画を描ける人を尊敬するが、「漫画ってどんな練習すればいいんだろう」と訊くと「プロじゃないんだから描きたいように描けばいいので、練習してからというのが不思議」と変な顔をする。絵を描くことが自然に身についているからで、そうでないものはアウトプットする早道を学ぶ必要がある

2013-07-20 14:45:42
芦辺 拓 @ashibetaku

実際、やや長じてから同人漫画を描き始めようとする人は、いろいろ練習をしているし秘訣講座もネット上に見受けられる。天性のように描ける人から見れば邪道かもしれないが、創作は「とにかく形にする」ところから始まる面が大きいので、小説にしてもそれ以前で詰まっている状態から脱してもらいたい。

2013-07-20 14:49:16
芦辺 拓 @ashibetaku

それで、ホーカムのストックだとか、ストーリーの結び目の学習だとかいうことを提案したので、僕も創作講座などでは「とにかく書けばいいんだよ」とハッパをかけるのだが、いざ自分が今から漫画を描こうとしたらどうだろう、にっちもさっちもいかないのではと気づいて、あんな駄文を並べたのでした。

2013-07-20 14:52:24
芦辺 拓 @ashibetaku

……あれ、これってトゥギャッタ―のコメント欄に書いた方がよかったのかな。まぁとにかくそういったことで、お互いがんばりましょう。脳内にある物語やキャラを外に出し、ほかの人と共有できる形にしてあげられるといいですね。

2013-07-20 14:54:32