文月のゆるーい兵器講座「九三式酸素魚雷」

帝国海軍の秘密兵器、酸素魚雷についてのお話ですわね。
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文月 @DD_Fumiduki

今日は酸素魚雷でお馴染みの正式名称「九三式(酸素)魚雷」について簡単にお話していくねぇ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 22:17:57
文月 @DD_Fumiduki

九三式酸素魚雷は1933年に【試作完成】した新型魚雷で、大体の人が知ってるように、射程、威力、隠密性に優れた魚雷なんだ。特に射程と隠密性については今までの空気魚雷とは比較にならない性能だったんだ。 #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 22:27:02
文月 @DD_Fumiduki

魚雷って水の中を進む兵器なんだけど、自力で進むためにエンジンが付いてるんだ。このエンジンを回すためには燃料を燃やさないといけないんだけど、そのためには空気、厳密には酸素が必要なの。そこで、燃料を燃やすために圧縮空気が入ったタンクが搭載してあるんだぁ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 22:32:40
文月 @DD_Fumiduki

でも、空気の80%くらいは窒素で出来てるよね。窒素は燃焼には関係ないし、水にも溶けないからそのまま排気として水中に放出されるの。これが気泡として浮き上がってきて魚雷の航跡をひくことになるんだぁ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 22:36:36
文月 @DD_Fumiduki

もしこの窒素を純粋酸素に置き換えれたとしたら?酸素を酸化剤に使用したときに出る二酸化炭素は水に溶けやすいから航跡は目立たなくなるし、内臓タンクの容量を減らして炸薬とかを多く乗せて雷速や航続力、威力をあげることも出来る。まさに水雷屋の理想だねぇ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 22:44:11
文月 @DD_Fumiduki

でも現実はそう甘くはなかった。各国が酸素魚雷を開発しようと躍起になったけど、試作の魚雷を始動させた直後に爆発する事故が多発、開発を断念していくんだ。イギリスでは一度は開発に成功したんだけど、搭載した軍艦で爆発事故が起きて危険兵器とみなされて放棄されたんだ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 22:57:14
文月 @DD_Fumiduki

日本でも英国が酸素魚雷を開発しているとの情報に基づいて列強の中では遅ればせながら酸素魚雷の開発に着手していくよ。始動開始直後は空気を使用して、徐々に酸素濃度を高くしていく方式を採用、ついに安全な酸素魚雷の開発に成功したんだ。 #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:03:05
文月 @DD_Fumiduki

ずいぶん内容をはしょっててわりにくくなってるけど、日本海軍でも綿密な研究が重ねられてようやくこの方式にたどり着いたんだ。実際、1916年に燃焼試験で爆発事故を起こして開発を一度中止してるんだ。 #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:13:52
文月 @DD_Fumiduki

その後の1928年に開発を再開、1933年にようやく酸素魚雷として開発が成功。さらに2年かけて兵器としての改良を行って1935年にようやく「九三式魚雷」として採用されたの。 #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:15:53
文月 @DD_Fumiduki

ちなみに酸素魚雷は無航跡って言うけど、九三式魚雷は始動直後は空気を使ってるから駛走開始から数百m以内は航跡が残っちゃうんだ。後の改良型には空気の代わりに水に溶けやすい四塩化炭素を使用したみたいだけど #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:19:03
文月 @DD_Fumiduki

この酸素魚雷なんだけど、他国での事故を尻目に徹底した安全管理が行われて、爆発事故は起きなかったんだ。でも、整備とかは大変だったみたい。酸素魚雷の整備・調整には、配管内の油分を完全に除去するため、4日から5日間の事前整備作業日数を必要とした。らしいよ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:29:24
文月 @DD_Fumiduki

太平洋戦争中に遣独潜水艦作戦によって九五式酸素魚雷(九三式魚雷の潜水艦搭載版:直径は53cm)を供与されたドイツ海軍は研究するだけに留めて実戦では使い勝手のいい電池式や蒸気式を使ったほどだから、いかに扱いがめんどくさいかがわかるよねぇ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:34:12
文月 @DD_Fumiduki

ちょっとゆるくなくなってきちゃったから結構色々はしょっちゃうね(苦笑い さて、こんな風にめんどくさ~い手間隙をかけて整備した魚雷ちゃんがどんな戦果をあげたかみていくよぉ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:38:51
文月 @DD_Fumiduki

1942年に9月15日、伊号第一九潜水艦がはソロモン諸島、サンクリストバル島南東で米空母ワスプを発見、九五式酸素魚雷6本を発射、うち3本がワスプに命中、見事撃沈するよ。#文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:42:13
文月 @DD_Fumiduki

さらに外れた3本の魚雷は10km先を航行していた第17任務部隊に到達。戦艦ノースカロライナと駆逐艦オブライエンに各1本命中するよ。オブライエンは大破、その損傷が元で10月19日に沈没。ノースカロライナは修理に6ヶ月を費やすことになったんだ。 #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:44:07
文月 @DD_Fumiduki

少し前の1942年3月1日のバタビア沖海戦では、重巡洋艦「最上」がアメリカ重巡「ヒューストン」を狙って発射した九三式魚雷6本が目標を捕らえきれず、射線延長線上にいた味方輸送船団に到達(続く #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:49:10
文月 @DD_Fumiduki

するよ。その輸送船団は第大日本帝国陸軍第16軍主力を載せていて、2号掃海艇が轟沈、ほぼ同時刻に第16軍司令官今村均陸軍中将座乗の「佐倉丸」が沈没、「竜城丸」「蓬莱丸」「竜野丸」が大破横転するという大戦果(?)をあげちゃうんだ。 #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:52:02
文月 @DD_Fumiduki

この2つの事例は酸素魚雷が持つ長射程が起こした椿事ともいえるかもねぇ。他にもオルモック湾で松型駆逐艦「竹」が米海軍の新鋭駆逐艦「クーパー」を撃沈したり、ルンガ沖夜戦では重巡洋艦を1本の被雷で大破させたりと、あちこちでその威力をみせつけていくよ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-26 23:57:24
文月 @DD_Fumiduki

こうしたことから、米海軍は酸素魚雷を「ロング・ランス(長い槍)」と呼ぶようになったみたい。さらに日本駆逐艦との海戦の際には「敵に柔らかい横腹を見せるな(魚雷発射態勢に持ち込まれるな)」が連合軍の合言葉になったといわれてるよ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-27 00:00:19
文月 @DD_Fumiduki

こうして威力を見せ付けていく酸素魚雷だけど、欠陥がなかったわけではないんだぁ。例えば、スラバヤ沖海戦において妙高と足柄から各8本、合計16本がの酸素魚雷が発射されたんだけど、水面から飛び出したり迷走するなどして1本も命中しない事態が発生しているんだ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-27 00:04:04
文月 @DD_Fumiduki

これは艦の最大戦速である34ノットでの発射試験をしていなくて、ジャイロスコープが高速度から発射した際の衝撃に耐えられなかったことが原因なんだ。結果として針路を調整できずに迷走しちゃうことになっちゃったんだ #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-27 00:07:07
文月 @DD_Fumiduki

原因究明の結果、ジャイロスコープの回転数が毎分8千回転と遅く不十分で、衝撃が加わると容易に設定方位がずれることが判明したんだけど、この欠点はかなり後まで改良されず、回天の開発に際して初めて毎分2万回転の電動ジャイロスコープに変更されたんだ。 #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-27 00:09:08
文月 @DD_Fumiduki

でも、魚雷に限らず日本軍の兵器は乱暴な扱いをするとすぐに動作不良を起こす傾向があったから酸素魚雷特有の欠陥ってわけじゃないんだけどね。これは当時の日本の技術力、工業力ではいわゆる「武人の蛮用」に耐えられる性能や物を作れなかったのが大本なんだけど… #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-27 00:12:17
文月 @DD_Fumiduki

あと、これも酸素魚雷に限ったことじゃないんだけど、目標に到達する前に度々自爆しちゃうことがあったの。第三次ソロモン海戦において、重巡「愛宕」、「高雄」が最良の射点から発射した九三式魚雷が戦艦「ワシントン」に命中直前の位置まで達したのに自爆しちゃったりとか #文月のゆるーい兵器講座

2013-07-27 00:14:54