ミストルティン編第四話 「護るべき笑顔は~ノー・ティアー!ノー・アゲイン!」 #9 (終)「イントゥー・ザ・シャロー・スカイ」

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Astal_jukebox @astral_jukebox

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2013-07-28 13:31:41
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―「ああ、先週までに来た連中はじっくり苦しめてから殺した。君の痛みに比べりゃ、ギャグみたいに軽いもんだし、比べようと言うのもおこがましいけど、一応ね」 「次が来るまでは間が開くだろうね。1/5近く殺したし、大体奴らは好きなようにこっちに人を寄越せないんだ。良いザマだ」

2013-07-29 22:53:28
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「こっちから攻めろって?それは無理って聞いてない?…とにかく。万全にして迎え討つ。一度に何十人も相手にしなきゃ一人でどうとでもなるさ…うん。一人きりでいい。本当一人で良いから!…良いから!…分かった…?」 「本当に分かった?大丈夫?…変なとこ似やがって…流石…カップルだ、畜生」

2013-07-29 22:58:44
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2013年4月22(月)15:52。 「裕岐さん!」 梢がA組の教室にやって来る。 「今行くよ!…じゃあな観崎、源瀬」 裕岐は談笑を止め、湊や起矢など周りにも挨拶し、梢の下へ向かった。 そして振り向き、後ろの勇矢に言った。 「じゃあ行こうか、ユウも」 「はぁ?」

2013-07-29 23:00:44
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「…馬鹿なの?何邪魔者を自ら呼んでんの?死ぬの?」 勇矢が言い放つ。 極力、裕岐の向こうの梢とは目線を合わせない。 「いや…でも、たまには昔みたいにさ…」 「片手で数える程度の回数だろうが…?駅までの短い間しか2人きりになれないんだぞ?」 心底見下し切った目で言う。

2013-07-29 23:05:44
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「浅空さん。私は大丈夫ですから3人で行きましょう?」 「あ、今大丈夫って言いましたよこの子。嫌々感あるよな」 「いや…そういう訳では…」 「じゃあ赤で宣言してもらおう『浅空さんと一緒に行きたい』って」 「…そういう風に言われると…違っちゃいますけど…」 眼を逸らす。

2013-07-29 23:10:44
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梢とて本来なら二人で帰りたい。 裕岐が勇矢を誘ったので、それを優先しただけだ。 「ほら見ろ、僕が悪者だ。どうしてくれるのこの空気。パッサパサだよ七橋ちゃん」 「悪者って…ユウな…」 「それとも今日の練習を休むか遅らすか?その分デートして来いよ」 「そうはいかないだろ…」

2013-07-29 23:15:44
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「今日の練習の手応え次第だけど、水曜日にも映画見に行くつもりだし、これ以上勝手させて貰う訳にもいかないだろ…」 「そこははっきり約束してやれよ…ねぇ?」 梢に対して真横を向いたままで器用に促す。 「いえ。今は大事な時期ですし部活を優先して下さい」 「悪いな梢…」

2013-07-29 23:20:44
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「君に聞いた僕が馬鹿だった。そしてふざけんな七橋殺すぞ」 梢どころか裕岐からも完全に視線を外し、殆ど真後ろを向く。 「まぁいいや今日勝て…ないが結果を出せば、水曜もデートするんだな?」 「ああ…ユウと星護が良ければ」 「よっしゃ」 右拳を左掌でパァン!と受け止める。

2013-07-29 23:25:44
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結希の操縦技術相手に、三人で勝つのは不可能。 せめて一機でも倒せれば上等、と勇矢達は認識していた。 「良し。こず…あー…」 呼び掛けかけて止める。 「…あ~…ともかくっ!」 梢の方を振り向く。目線だけは逸らしたまま。 「今日でナントカ結果を出して、修行の目途はつける」

2013-07-29 23:30:46
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「命賭けるから」 「おいちょっとユウ!」 勇矢は滅多に嘘を吐かない。吐けない。 命を賭けると言ったら本当に賭ける、ので滅多なことでは賭けない。 これで今日、結希の駆るロボを倒せ無かったら本当に死んでしまうのでは? 裕岐は不安になった。 「勝ちゃあいいのよ。勝てば」

2013-07-29 23:35:44
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一瞬だけ梢の目を見る。 「とにかく、どんな手を使ってでも。七橋は必ず送り届ける。君の所へ。いや君と一緒に」 勇矢が二人を届けようという先は、今週の水曜日か、それとももっと…遥か先か。 「……はい。宜しく、お願いします」 梢が頭を体ごと深く下げる。

2013-07-29 23:40:44
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七橋裕岐は、二人のその短いやり取りを見ていた。 その表情は、勇矢からは死角になり見えなかった。

2013-07-29 23:50:44
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ミストルティン編第四話 「護るべき笑顔は~ノー・ティアー!ノー・アゲイン!」 #9 「イントゥー・ザ・シャロー・スカイ」終わり

2013-07-29 23:55:44
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2013年4月23(火)14:19。某国。 「マスター。お客様です」 従者が抑揚の少ない声で、来訪者の名を主に告げる。 「おお!」 館の主…UARの長は歓喜の声を上げる。 その来訪者を正に今日呼ぶかどうか迷っていたからだ。 彼はいつも来て欲しいときに訪れる。

2013-07-30 00:10:44
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従者達が無機質かつ滑らかな動きで、両側から扉を開く。 現れる来訪者の姿。 右手に大型のトランク。 左手に手土産らしい紙袋。 両脇に…この館にいる者達と寸分違わぬ二体の従者。 着崩したスーツに、常に絶やさないのであろう細目の笑み。 二十代半ば程に見える金髪の青年。

2013-07-30 00:13:44
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来訪者が恭しく礼をする。 「ご無沙汰しております」 「おお!……おお商人殿…よくぞいらした」 喜びが声に表れぬよう取り繕い、男は馴染みの商人を中に入れ、席を勧めた。 時節の挨拶など一通りの言葉を交わした後、商人が切り出した。 「本日はこんなものをお持ちしました」

2013-07-30 00:16:44
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トランクを開き、中身を見せる。 「これは…?」 見慣れない機械だった。 機械を好まぬ彼とて、一般的な家電くらいは見知っている。 その上で表現するなら、何かしらの専門家用の物に見えた。 メーターなどが付いている。測定器具か…? そこへ説明が入った。

2013-07-30 00:19:44
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「防犯グッズです」 「防…犯?ハハ、ご冗談を」 「勿論、この館は問題ございません。何分、俗世と隔絶しておられますから」 館は、地球と異相世界との間に存在する。 防御性能以上に接近者の感知能力に優れる。 ホワイトがここだけには入らなかったもそれが理由だ。

2013-07-30 00:22:44
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入ること自体は可能だが、必ず記録が残る。侵入を余人に気付かせぬ為には、館の住人を皆殺しにする以外に無い。 ホワイトには、それはまだ出来なかった。 戦って勝てるかどうか、とは別次元の問題である。 彼が抱える『事情』の為だ。 「ですが現世にある貴方の教え子達の館は別です」

2013-07-30 00:25:44
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「…彼等の為に是非、御導入か御使用を検討頂けないでしょうか?宜しければ私のほうで調査も請け負わせて頂きますが」 「商人殿…?」 「何よりこういった、ハハ、低俗な物は私の方が手慣れておりますし、気付かれない様に扱えるかと思います」 「気付かれない…?」

2013-07-30 00:28:44
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誰に?何を? そんな言葉を言う前に、商人が続けた。 「実は勝手ながら、本日こちらへ伺う門までの道中に、調査を行わせて頂きましてね…この…『盗聴電波探知機』で」 「盗…聴…!?」 その調査の結果がどうだったのか。 それは来訪者の笑みが雄弁に語っていた。 「まさか!?…誰がっ…!」

2013-07-30 00:31:44
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心当たりは…相手の正体こそ分からないが…あった。あり過ぎた。 「僭越ながら、この事はまだ他の方にはご内密にされた方が宜しいかと思われます」 「それで…今日中に始めさせて頂く形で宜しいですか?」 男の返事がどうだったのか。 それは敢えてここに書くことではないだろう。

2013-07-30 00:34:44