【再録】 『はだしのゲン』にぼくはいつも出会えない〜中沢啓治氏逝去に寄せて
今年もエポックメイカーたちが次々と逝ってしまった…@2chradio: (181res/h) 【訃報】「はだしのゲン」の作者 中沢啓治氏死去 http://t.co/odXsZqe2oz
2013-08-07 00:20:18中沢啓治逝去に寄せて◇1◇僕は「はだしのゲン」を読んでいない。小学校の、焼けた本と古い本棚と床のワックスの匂いの混ざった、小学校の、一角を占めていたことは知っている。そして、原爆をピカドンと呼び、ゲンは家族を失うことも知っている。隣の姉ちゃんに、無数のガラスの破片がつきささる
2013-08-07 00:20:35中沢啓治氏逝去に寄せて◇3◇発して止まない。あの、日本の盆の、どんよりとした熱気の携える過去とシンクロして、僕のミゾオチに突き刺さってくる。戦争。反戦。非人道。平和。「はだしのゲン」にまつわる多数の人達の共通項はこうなるだろう。あるいは、生々しい描写。皮膚の溶け落ちる人々、
2013-08-07 00:21:01中沢啓治氏逝去に寄せて◇4◇人々、あるいは瞳孔を失った戦争推進者の、扇情的とでも表現できかねない絵の異形感かもしれない。その「異形のもの」がちりばめられた世界のなかで、健康優良児ゲンのたくましさかもしれない。しかしぼくはその強く明るい彼をも否定しようとする。目の前で死んだ弟と
2013-08-07 00:21:10中沢啓治氏逝去に寄せて◇5◇瓜二つの少年といっしょに暮らすようになるゲン。原爆ドームの鳥の巣の卵を唆して喰らう二人。太田川には無数の死体。そのなかには裸の女のものも描かれる。その強迫的なまでに何かに到達しようとする意志よ!これでもか!と迫り来る怒濤の意志!その意志は、決して、
2013-08-07 00:21:20中沢啓治氏逝去に寄せて◇6◇まだ世界の大半が眩しすぎた少年を、欲を欲として自覚することさえもしらなかった少年を、決して許しはしないのである。そしてその中沢氏の意志は、いまもぼくを許してはくれない。リアルにはどこまでいってもたどり着けないかもしれない、恐怖、という 表現が一番
2013-08-07 00:21:33中沢啓治氏逝去に寄せて◇7◇近いかもしれない。もしこれが恐怖という感情だとしたら。そうなのだ。「はだしのゲン」はどこまでも「現実」なのだ。この日常的な、時に陳腐なこの言葉の核心部をどこまでもえぐり出そうとする。その収まりきらない、どこまでいっても留まらない意志、いや、欲望と
2013-08-07 00:21:43中沢啓治氏逝去に寄せて◇8◇呼びうるようなものかもしれない、パトス。だからぼくはたどり着けないのだろう。ぼくはぼくの恐怖にいつまでもたどり着けないのだろう。そしてぼくはいつまでも「はだしのゲン」においつけないのだ。いつまでも読み終わることができない恐怖に怯え、またその
2013-08-07 00:22:29中沢啓治氏逝去に寄せて◇2◇のも知っている。でも、ぼくは「はだしのゲン」を読んでいない。読めなかった。あるいは読んだのかもしれない。しかし例えそうであっても僕は僕の記憶を一心に否定する。恐怖、トラウマ、そうには違いない。しかしその記憶は否定されてもなお、莫大な磁力を発する
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