北守(@hokusyu82)氏による『 #風立ちぬ 』映画評

北守(@hokusyu82)さんによる映画『風立ちぬ』についての一連のツイートが教示に富むものだったので、ここにまとめました。
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視聴前のコメント

北守 @hokusyu82

「風立ちぬ」まだ観てないけど、たぶん堀越二郎じゃなくて堀辰雄で観るべきものなんでしょうな。もっといえばヴァレリー、リルケ、トーマス・マン。

2013-07-30 01:14:53
北守 @hokusyu82

サナトリウムでだらだら生きる「生」が、戦争という一瞬の輝きに投棄されるという話が『魔の山』であったわけで、この生の意味の二重性については堀辰雄においても継承されていますよね。ちなみに『魔の山』の最後のシーンにかぶれて右翼に転向した人物としてチャンネル桜の社長がいるわけですが…。

2013-07-30 01:26:14

視聴後の映画評

北守 @hokusyu82

はーい、「風立ちぬ」観てきましたよ。堀辰雄、ヴァレリー、リルケ、トーマス・マン、ダヌンツィオあるいは未来派…などの優れたKonstellation(星座的配置)によって主題が明晰化された快作だと評価しました。

2013-08-06 23:41:45
「生きねば」の主題と「生」の多層性について
北守 @hokusyu82

(承前)「生きねば」という主題における「生」とは多層的なわけですよね。まず技術者の美学的な生=未来派的な生と、サナトリウムにおける魔の山的な生=ヴァレリー的な生が対比されている。この2つは、1935年という年において結びつくわけです。

2013-08-06 23:45:56
北守 @hokusyu82

(承前)つまり堀越二郎が設計したゼロ戦の原型となる九式が初飛行した年と、堀辰雄の恋人がサナトリウムで死んだ年が1935年なわけで、この2つの「生」を共時的なインスピレーションから対抗的に結びつけた。これが卓越したKonstelletionといえます。別名をセカイ系ともいいますが。

2013-08-06 23:49:22
北守 @hokusyu82

(承前)そして最後のシーンは、堀辰雄の「風立ちぬ」のラストに出てくるリルケ「レクイエム」の引用ですよね。死者が帰ってくるとはすなわち、赦しを与えに来るのではなく、生者をいやがおうにも死者に刻印づけるために来るのです。だから二郎はあんなにそっけないのですね。

2013-08-06 23:53:56
カストルプを通じたトーマス・マンの役割と戦間期の政治
北守 @hokusyu82

未来派的な生=美学的な生を体現しているのはカプローニですが、その美学的な生の高揚を貪ることは、作中ですでに疑問符が投げかけられている。カストルプは政治的責任の領域の存在を、妹は倫理の領域の存在を示している。キャラクターの配置にムダがない。

2013-08-06 23:57:35
北守 @hokusyu82

(承前)カストルプは当然魔の山のカストルプであり、作者のトーマス・マン自身です。魔の山のラストは、サナトリウムの漫然としたヴァレリー的生から、世界大戦という状況における生の高揚をただ貪るというものです。そこに政治的決断はない。

2013-08-07 00:00:23
北守 @hokusyu82

(承前)ところが周知のように、トーマス・マンは第一次世界大戦に熱狂はしましたが、戦後は共和国の擁護者として政治的な立場を表明し続け、ナチス政権成立後亡命するわけです(だから特高に追われる)。つまり軽井沢にいるカストルプは、ポスト魔の山の政治的責任を引き受けたカストルプです。

2013-08-07 00:02:49
北守 @hokusyu82

そういえば堀辰雄は芥川を引いて文学における真善美の三領域モデルを展開していますが、さっきの議論に強引に当てはめると、カプローニ=美、カストルプ=真、妹=善、ということになるのかしら。

2013-08-07 00:19:59
小説『風立ちぬ』結末と映画『風立ちぬ』解釈
北守 @hokusyu82

堀辰雄「風立ちぬ」の最後にはこういう一節がありますね。「節子、おれはこれまで一度だっても、自分がこうして孤独で生きているのを、お前のためだなんぞとは思った事がない。…或はひょっとしたら、それも矢っ張お前のためにはしているのだが(続

2013-08-07 01:42:25
北守 @hokusyu82

(承前)…それがそのままでもって自分一人のためにしているように自分に思われる程、おれはおれには勿体もったいないほどのお前の愛に慣れ切ってしまっているのだろうか?それ程、お前はおれには何んにも求めずに、おれを愛していて呉れたのだろうか?」これは映画の解釈の補助線にもなるのでは。

2013-08-07 01:42:45
ヴァレリー、モネ、バウハウス
北守 @hokusyu82

油絵を描く菜穂子の構図が「日傘をさす女」であるという仮説は主題的に支持したい。ちなみにモネはドレフェス派、ヴァレリーは反ドレフェス派である/そしてバウハウスがあったのはデッサウですよね。 / “菜穂子の油絵と1920〜30年代の美…” http://t.co/P5EmV24VAq

2013-08-07 02:13:11
結論
北守 @hokusyu82

他にも示唆に富む符牒はたくさんありますが…、とりあえず「風立ちぬ」は「政治の美学化」としてのファシズム的生を描いている。ただしイローニッシュなかたちで、といえるのではないでしょうか。

2013-08-07 00:07:52
北守 @hokusyu82

・・・っていう話は観た後の議論で友人といくらでもでてきたのだけれど、あんまり他ではみないのはどうしてかしらん。

2013-08-07 00:12:36
北守 @hokusyu82

あ、話の構造をちゃんと理解したうえで、美学的な生の高揚について「あの手口に学んだらいい」というのはありだと思います。もちろん反面教師としてですからね!

2013-08-07 00:24:59
北守 @hokusyu82

ああそうだ。サヨクのみなさんは、ただ美学のためにいきる技術者を戦争責任から免罪しようとしてないか?という危惧をお持ちかもしれませんが、美学のために生きる技術者=ファシストなんですよ。だからあの映画はファシストをファシストとして描いているだけなので何の問題もないんですよ!

2013-08-07 01:48:18
北守 @hokusyu82

ラストの解釈は少し難解ですが、少なくとも未来派的な生が肯定されたわけではなく、むしろヴァレリー的生に立ち戻っているのではないですかね?まあ、イローニッシュにではなく、本気であれでクリエイター的生が肯定されたと喜ぶ人をみたら、そいつはおそらくファシストなんで注意しましょう。

2013-08-07 02:42:07

コメント

しなのみすず @kouzetu 2013年8月7日
自分はキモオタと違ってドイツ思想史を研究する院生だから映画の記号の高度な解釈(やっていることはほとんど連想ゲーム)ができるんだ、というのはキモオタの姿にほかならない。
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しなのみすず @kouzetu 2013年8月7日
『風立ちぬ』『地獄に堕ちた勇者ども』『愛の嵐』『ソドムの市』『ヒトラー、あるいはドイツ映画』のような、ファシズムと戯れる危険な私、を宣伝する映画は俺は嫌いだ。もちろんそれらの映画の記号を分析して悦にいっている奴もだ。
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kato82@ひとり自粛生活中 @kato82 2013年8月7日
↑二回もキモオタって書かんでもええがな…。
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a𥹫n𥹫q𥹫✩ @anqmb 2013年8月8日
大体読んでない本の話なのでそういうこともあるのかなと。ちなみに堀越二郎『零戦 その誕生と栄光の記録』を読書体験に加えておくと、本当は芸術家などではなかった堀越の線は完全捨てで良いことがハッキリします。
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しなのみすず @kouzetu 2013年8月8日
「星座的配置」や「政治の美学化」といった誰かさんの言葉を得意気に引用し、政治的に糾弾するサヨクや美的享楽にふけるクリエーターを小馬鹿にして、自分はそんな連中より高みにいるのだと自慢している。戦争にイロニーで対処した保田与重郎がいるというのに、今の時代にそんなものをもちあげるのはどういうことか。
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鐘の音@C98落選 @kanenooto7248 2013年8月8日
二郎はファシスト、という解釈は多分正しい。
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しなのみすず @kouzetu 2013年8月9日
美学のために生きる技術者でファシストでない人もいるだろうに。「美学のために生きる技術者=ファシスト」という定義は私的なものであり、愚鈍な「サヨク」を説得できるものではなく、学会で発表すれば笑いものになるだけだ。「ファシストをファシストとして描いているだけ」というのは、こいつの定義内だけのことだ。『風立ちぬ』に日本軍国主義の復活の懸念をいだく韓国人に対し「何の問題もないんですよ!」とはたして言えるのか。こいつの解釈は、閉じたネット上でしか有効性を持たない。
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たていしP/鶴橋最高 @tateiship 2013年8月9日
右は「サヨクの宮崎が美しい日本を描いている」左は「ゼロ戦開発者の事描いてる裏切られた!」 ホント壊滅的なくらいセンスが貧しい。
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たていしP/鶴橋最高 @tateiship 2013年8月9日
実に馬鹿馬鹿しい イデオロギーバイアスでしか作品が見れん人間の批評って壊滅的なくらいツマラナイ
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たていしP/鶴橋最高 @tateiship 2013年8月9日
サヨクの人間はこういうこと書くからダサいんですよ正直 http://www.labornetjp.org/news/2013/0727eiga 特攻を立案し日本空襲を指揮したカーチス・ルメイに勲章渡すよう手配した『源田実』を称賛する映画ならともかく技術者を称賛する映画はいけないってクメール・ルージュかい?
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たていしP/鶴橋最高 @tateiship 2013年8月9日
それとこの映画『風立ちぬ」の不幸は堀越二郎の技術力に着眼するミリオタと『サナトリウム文学」という昭和初期の文学に注目する文学青年気質の両方を正確に評価できる人間が非常に少ないことが露骨に分かった点 オタク=ミリオタは殆ど文学なんて読まないし 逆は逆でミリオタとポルノはけがわらしくいかがわしいと思ってそうだし
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NYANMAGEになった日 @nyanmage_x 2013年8月10日
ファシズムと言う点では「翠星のガルガンティア」で描かれていた人類銀河同盟がもろにそれで、エイミーの弟の、ただ単に生きる事の何が悪いのかと言う問いにはぐっと来たな。
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リンゴォ・ドーロアゲイン @gintotetu 2013年8月10日
ダサいと言うなら、ジブリの絵柄自体ダサい。
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しなのみすず @kouzetu 2013年8月11日
イタリア人を見たら未来派と思えとドイツ人を見たらナチスと思えで、「空と未来」のイタリアファシズムと「血と土」のドイツファシズムを発見したようだが、いったい日本の天皇制ファシズムはどこにあるのか?日本が舞台だというのに。
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壱縺怒左衛悶 ざ えーえるえむ @boku_moraimon 2013年8月11日
映画にはいろんな解釈があってしかるべきなんだが、北守 @hokusyu82 は田中真紀子のある意味同類でで、世の中の人間をファシストとファシスト以外の人間に分類しないと気が済まないダメな奴だという事だけはよくわかった。
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しなのみすず @kouzetu 2013年8月14日
8月15日に靖国神社に軍装コスプレで集う連中にも、イローニッシュなかたちの「政治の美学化」としてのファシズム的生、と言えそうだ。靖国神社こそ戦前の日本のイロニーを凝縮した場所ではないか。
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しなのみすず @kouzetu 2013年8月18日
「私は濾過されたヴァルター・ベンヤミンを小器用に操ろうとする者たちを全く信用できない。」 平井玄『破壊的音楽』
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笛吹斑(うすい まだら) @chervbim 2014年10月14日
このオレンジ卵は何がそんなに悔しいのだろうか
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