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昨日8月8日、長崎に原爆が落とされた8月9日の一日前、長岡に行って展覧会を二つ観た。ひとつは千秋原県立美術館のルーベンス展。 http://t.co/69bo7wEZSO
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もうひとつは、長岡中央図書館の山下清展(生誕90周年記念)であった。 http://t.co/voIq0EU0zF
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ルーベンスと言うとバロック最大の画家、あるいはフランダースの犬を想い出す人も多いかもしれないルーベンスが良いのは当然だけど、ルーベンス観たあとで、山下清観るとどうなんだろと思っていたら、これがあまりにも良くて思わず涙が出そうになった。
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一緒に連れて行ったサンフォードさんも、ルーベンスより良いと言って泣いていた。こんな事はめったにない事である。(精薄の)天才放浪画家。今まで、天才放浪画家の前に小さくカッコ付きで付いていた(精薄の)が今回完全に消えてしまった。
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二十歳近くなって徴兵されるのが怖くて、学園を逃げ出したのがそもそもの放浪のきっかけだったと言われている。
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「戦争というものは一番怖いもので 一番大事なものは命で 命よりも大事なものはない 命を取られると死んでしまう 死ぬのは何よりも一番辛いもので 死んでしまえば楽しみもなければ 苦しみもない 死ぬまでの苦しみが一番辛い 戦争より怖いものはない」
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金を持たない放浪の仕方は乞食旅であり、たとえば、口から出まかせを言いながら飯を出してくれるまで一軒一軒しらみつぶしに乞うて回る事の連続なのだが、実は、江戸時代後期の庶民の一般的な旅の仕方というものはまさにこうしたものであった。
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背中に御伊勢参りの登りなど差していようものなら効果はてきめんで、庶民はそれが見知らぬ人であっても相手に敵意がない事を認めると、寛容に受け入れたのであった。そしてそれは次に自分が御伊勢参りに出る時のための「おたがいさま」だったのだ。
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やがて、近代が来て,国家は富国強兵に、個人は末は博士か大臣かを目指す出世競争に狂奔するうちに、世の中はすっかり世知辛く変わっていく。
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しかし、ときには泊まろうとしていた駅から追い出されたり、ときには幼い子どもから食べ物を奪って警官に追いかけられたりしながらも、山下清が一年間二年と間いう長期に渡って自由に放浪してまわれたという事実は、あの時代がまだまだ人間というものに寛容だったのだということを示している。
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今なら、一週間ともたないだろう。いっけん物わかりが良くなったような顔をして、人はずっと非寛容になってしまったのだと思う。
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少年時代のいっとき美術家の間で話題になったことがあったもののほとんど全く無名であった山下清の名を天才画家として一躍全国に知らしめたのは日本人でなく、アメリカの雑誌『ライフ』の1953年の記事だった。
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この辺りが日本人の浅ましいところで、外国のメディアで報道されるや否や、大新聞を通じて全国に捜索願が出され、山下清は鹿児島県桜島で発見されて一気に有名人になってしまう。なんて日本人はケーハクなのかと呆れてしまうけれど、実は彼を人気者にしたのは『ライフ』の記事ではない。
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それはきっかけに過ぎなかったのだと思っている。少なくとも日本人は伝統的に、まともと思っている自分たちの方が本当はずっと馬鹿で、精薄と言われている人々の方が実は自分たちより賢く本当のことを知っているということを、心の底の底でちゃんと知っていたのだ。
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小林桂樹や芦屋雁之助のように人に諄々と道を説くような事は決してなかったとしても、ときどき神の言葉を発すると知っていたではないだろうか。そしてそれは本当だった。しかし有名人になった山下清は、あれほど好きだった放浪も強制的に終止符宣言をさせられてしまう。
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『ライフ』で紹介された天才画家・山下清が幼い子どもからおにぎりを奪って警官に追いかけられたり、下手すると「半裸の変態男!幼女に××××」などと新聞に書かれたらまずいと偉い人たちは心配したのだろう。
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以来、山下清の周りにはいつも背広にネクタイ姿の男たちが見られるようになり、自由きままな放浪は期限付きエスコート付きの旅行になり、さまざまな「教育的配慮」がなされていく。こうしてだんだんと今の管理社会に近づいていくのだね。
2013-08-09 23:58:19![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
段落も句読点もなく、〜ので〜ので、で続く独特の文章にいつのまにかにわかりやすく句読点が入り、絵はいつのまにか遠近法の付いた精緻で上手な絵になっていった。しかし、それでもそこから山下清を消す事は誰にもできなかった。山下清は泣きもしなかったし、ほとんど笑う事もなかった。
2013-08-09 23:58:35![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
長岡中央図書館は僕の大好きな図書館です。ときどきすばらしいものを見せてくれます。今回の展覧会は昨年から続いている生誕90周年記念全国巡回展の一環と聞きましたが、現在の日本の状況を考えると、あまりにもタイムリーでやっぱり神様の声を感じてしまいます。
2013-08-10 00:10:04![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
長岡市は世界一の三尺玉花火で有名、山下清もそれを見て名作『長岡の花火』を描いています。長岡は1945年アメリカB29の爆撃を受け、1470名余りが死亡しました。焼夷弾に混じって試験的に劣化ウラン弾が使用され、多くの被爆者を出した48都市のひとつでもあります。
2013-08-10 00:10:17![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「みんなが爆弾なんかつくらないで きれいな花火ばかりつくっていたら きっと戦争なんて 起きなかったんだな」
2013-08-10 00:40:51