艦これSS 戦艦タ級が鎮守府に漂着したようです & 空母ヲ級が遊びに来たようです -完結-

不定期に、気まぐれで更新。 9/10に完結いたしました。ご愛読ありがとう御座いました。 9/15おまけのようなものを投稿開始。 10/13におまけも完結。本当にありがとうございました。
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高峯みやび @sukamelancholy

そっと提督の腕に抱き着き、瞼を閉じる。 「……」 毛布に包まれて提督の体温を感じ、今まで感じた事のない安心感に安堵の溜息をついた。 すると、自分の腕に違和感を感じたのか小さく呻き、提督は寝返りを打つ。 「……」 図らずともお互い抱き合う形になり、ヲ級は提督の顔を見つめる。63

2013-10-05 02:27:28
高峯みやび @sukamelancholy

ひんやりと冷たいような、それでいて心地いい感触。そして首筋に感じる吐息。 「……ん?」 半覚醒状態でそれを感じた提督は、それを疑問に思いそっと瞼を開ければ、そこには自分の胸に抱き着いている空母ヲ級の姿がそこにあった。 「……なっ!?」 驚きで叫びそうになったのを慌てて閉じる。64

2013-10-05 02:30:52
高峯みやび @sukamelancholy

ベッドで横になるまでは居なかったはずのヲ級がそこに居る。脳内では数々の疑問が浮かんだが、まずは今の状況を理解した。 ……この状態で誰かに見られると、非常に不味いという事に。 「……なんで、ここにいるんだ」 「……」 小さな声でヲ級に聞くも、彼女は喋らない。65

2013-10-05 02:33:05
高峯みやび @sukamelancholy

その代わりなのか、ヲ級は提督の背中に手を伸ばし、ゆっくりと文字を書く。 き、た、よ。 「いや、また来るとは確かに言ってたが……」 「……」 ね、て、た? 「この時間だからな」 わ、た、し、も、ね、る。 「いやその理屈はおかしい」 「……」 だ、め? 無言で提督を見つめるヲ級。66

2013-10-05 02:36:13
高峯みやび @sukamelancholy

「いや、いやいやいや、いかんでしょ、男と女が同じベッドに寝たら」 ど、う、し、て? 「どうしてって……それよりもヲ級一人で来たのか?」 こ、た、え、て。 「そ、そこは……ほら、わかるだろ?男と女ってところで」 お、し、え、て。 「……わざとじゃないよな?」 な、に、が? 67

2013-10-05 02:38:11
高峯みやび @sukamelancholy

お互いの吐息が聞こえる程に近く、そして同じベッド。そして喋らないヲ級は提督の背中に文字を書く。それがくすぐったくてどんどん提督を追い詰めていく。 し、り、た、い。 「……今度、タ級に聞いたら教えてくれるよ」 次にタ級に会った時は主砲で撃たれない事を祈りながら提督は答えた。68

2013-10-05 02:41:43
高峯みやび @sukamelancholy

「………………」 わ、か、っ、た。 漸く折れてくれたらしく、渋々ではあるが了承した。続いて提督は次の質問を投げる。 「どうして今来たんだ?」 い、き、た、く、な、っ、た、か、ら。 「あぁ、そう」 だ、め、だ、っ、た? 「昼間だったらよかったけど、今はな」 ご、め、ん、ね? 69

2013-10-05 02:44:14
高峯みやび @sukamelancholy

「というか、哨戒居たよな……?まさか見逃したとかじゃ」 う、み、か、ら、き、た、よ? 「海?」 そ、こ、か、ら、ま、っ、す、ぐ、に。 「つまり、深海から真っ直ぐここまで来た訳だな……。流石に深海はソナーも反応しないだろうな。いや、それでもこの部屋までどうやって?」70

2013-10-05 02:48:05
高峯みやび @sukamelancholy

ど、う、や、っ、て? 「見回りの艦娘が居た筈だ」 い、な、か、っ、た、よ? 「いやいやいやいや……」 そんなはずはない。万が一の為に鎮守府を見回っている艦娘は居る。深海から上がっても地上では見つかるはずなのだ。 「……」 「……マジで?」 つまり、〝運良く遭遇しなかった〟。71

2013-10-05 02:51:51
高峯みやび @sukamelancholy

「……見回りの人数、増やすかな」 「……」 と、ここで提督は今の状況が何一つよくなっていない事に気が付いた。今もヲ級は提督に抱き着いているのだ。 「な、なぁ、近すぎないか?もう離れても……」 しかし、ヲ級は離さない。 か、い、わ、で、き、な、い、よ。72

2013-10-05 02:54:07
高峯みやび @sukamelancholy

「ひ、筆談、とかさ。あるじゃん」 こ、れ、が、い、い。 「あのですねヲ級さん……」 そ、れ、に。 「ん?」 こ、う、し、て、る、と、あ、た、た、か、い、よ? 「それはそうかもしれないけどさ」 わ、た、し、こ、れ、す、き。 「……困ったな」 あ、た、た、か、い、の、す、き。73

2013-10-05 02:56:23
高峯みやび @sukamelancholy

前回の三つのあらすじ ・眠っている提督の私室に空母ヲ級襲来 ・提督「まずいまずいまずい見つかったらまずい」 ・( 金˘ω˘剛)スヤァ……←見つかったらまずい事になる人

2013-10-13 03:44:46
高峯みやび @sukamelancholy

あ、な、た、あ、た、た、か、い、ね。 「……それはどうも」 先日の寡黙で無表情な空母ヲ級は今ではとても饒舌だ。提督の背中をキャンバスにして、指ですらすらと書いていく。 こ、の、ま、ま、お、や、す、み、し、た、い。 「それはまずいって本当に……ッ!」 ど、う、し、て? 74

2013-10-13 03:48:24
高峯みやび @sukamelancholy

「こんなところを金剛に見られたら、主砲で撃ち抜かれかねない」 じ、ゃ、あ、わ、た、し、ま、も、る。 「そういう問題ではなく」 「……」 提督の目をじっと見つめたまま、ヲ級は首をかしげた。 「金剛は嘘偽りなく、俺の事を好いていてくれているんだ……」 す、き? 「あぁ。そうだ」 75

2013-10-13 03:52:18
高峯みやび @sukamelancholy

だ、き、つ、く、の、す、き、な、の? 「……それもあるけど、もっと強い好き、かな」 「……」 すらすらと動いていたヲ級の細い指がぴたりと止まった。 ほんの少しでも近づけば、口づけも容易に出来る程に近い距離で見つめあう提督とヲ級。 わ、か、ら、な、い。 「……そうか」 76

2013-10-13 03:54:39
高峯みやび @sukamelancholy

深海棲艦は元々艦娘が撃沈され変貌した姿である、という説がある。だがそれはあくまでも一説に過ぎず、真実は未だ謎のままである。 空母ヲ級はその一説の通りなのか、どうなのか。生前の彼女が居たとして、恋愛感情も知らずに戦場に駆り出されていたのか、それとも元々そういう性格なのか。 77

2013-10-13 03:57:33
高峯みやび @sukamelancholy

恐らくは本人ですら知らない。無垢なままで深海棲艦として生き、戦争をしている。 戦艦タ級はどうなのかは本人に聞かなければわからないが、空母ヲ級は少々特殊なのかもしれない。 「……俺達は、闘い続けるしかないのか?分かり合える日は来るか?」 気が付けば、そんな問いを投げていた。 78

2013-10-13 04:01:51
高峯みやび @sukamelancholy

「……」 見つめあう二人。真っ暗な提督の私室に沈黙が流れていく。 「……」 そして、答えを見つけたのか、空母ヲ級は提督の背中に指を走らせて思いを伝える。 わ、た、し、は、い、き、た、い、だ、け。 「……」 み、ん、な、と、い、き、て、す、ご、し、た、い。 「……それは」 79

2013-10-13 04:05:38
高峯みやび @sukamelancholy

こ、こ、に、き、て、あ、な、た、た、ち、の、こ、と、し、っ、た。 無表情のまま彼女は綴っていく。 た、の、し、そ、う、だ、っ、た。 嘗て、戦艦タ級も同じ言葉を使っていた。楽しそうだ、と。 た、た、か、い、よ、り、み、ん、な、と、い、き、た、い。 80

2013-10-13 04:08:51
高峯みやび @sukamelancholy

「俺達と、君の仲間とかい?」 み、ん、な。 「そうか」 それだけで十分、彼女の思いは伝わった。今思えば、深夜に訪れたのだってその表れだった。 提督の理想が叶う日は、そう遠くはないのかもしれない。 「聞かせてくれて有難う」 「……」 微かに、彼女は微笑んだように見えた。 81

2013-10-13 04:13:54
高峯みやび @sukamelancholy

「……なんだか、また眠くなってきた」 同じベッドに空母ヲ級が居る事に慣れてしまったのか、次第に眠気がやってきた。激務による疲れは未だ取れていないのだ。 「……」 どうやら先にヲ級は眠ってしまったらしい。真っ白な肌だが、寝顔は無垢な少女そのものだ。起こしてしまうのも、忍びない。82

2013-10-13 04:17:41
高峯みやび @sukamelancholy

突然の来訪に驚いたが、空母ヲ級との『会話』は確実に実りのあるものだった。 眠るヲ級の温かさと、胸の奥の暖かさが心地よく、次第に提督の瞼も重くなり、それに抗えなくなっていく。 嗚呼、願わくば。彼女が望んだ、『みんなと生きる』未来が一日でも早く訪れますように。 83

2013-10-13 04:22:33
高峯みやび @sukamelancholy

そして朝日が昇り、新しい一日が始まる。 今日も秘書艦としての職務を全うしようと、金剛は扉を数回ノックしたが返事がなく、起こさないようにゆっくり扉を開けると同じベッドで提督と空母ヲ級が眠っているのを発見し、金剛が大激怒し早朝から騒動になったという。 84

2013-10-13 04:27:36
高峯みやび @sukamelancholy

さらに、居なくなってしまった空母ヲ級を探しに戦艦タ級が鎮守府に訪れ、さらに騒動は拡大した。 目に涙を浮かべつつも主砲を構えて正座する提督に説教をする金剛と、同じく主砲を突きつけるタ級。 提督曰く、「今日が命日だと思った」という。 ちなみにヲ級は他の艦娘と共に朝食を食べていた。85

2013-10-13 04:30:25
高峯みやび @sukamelancholy

艦これSS『戦艦タ級鎮守府漂着したようです後日談空母ヲ級鎮守府びにたようです~ 

2013-10-13 04:31:58
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