艦これSS 戦艦タ級が鎮守府に漂着したようです & 空母ヲ級が遊びに来たようです -完結-

不定期に、気まぐれで更新。 9/10に完結いたしました。ご愛読ありがとう御座いました。 9/15おまけのようなものを投稿開始。 10/13におまけも完結。本当にありがとうございました。
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高峯みやび @sukamelancholy

突如鎮守府に鳴り響く警報。提督は冷静に状況報告を待つが、一向に報告は来ず。 さらに、警報は変わらず鳴り続けてはいるが、空襲や海上砲撃の音もない。そもそも、鎮守府は深海棲艦との戦いの最前線。警備や監視なども特に厳しいはずなのだ。過去、はぐれ駆逐艦が何度か接近したが撃退していた。1

2013-08-13 14:52:58
高峯みやび @sukamelancholy

警備網に引っかかる程度では警報は作動しない。もっと鎮守府に接近しなければならない。 司令室で提督は静かに待つ。 すると複数の艦娘が司令室に殺到。彼女達は血相を変えて今すぐ港に来るように、と提督の手を引いた。 詳細を聞こうにも、艦娘はどう説明するべきかわからず混乱している。2

2013-08-13 14:56:59
高峯みやび @sukamelancholy

港では、艦娘達が大勢で、何かを見ている。 何か珍しい動物でも流れ着いたのか、それとも鯨か何かが漂着したのか。 提督は確認の為に歩みを進めて、鳴り響く警報と艦娘達の混乱の原因を把握した。 真っ白な肌、禍々しく生きているような装備。 何度も艦娘を苦しめた、戦艦タ級が漂着していた。3

2013-08-13 15:04:47
高峯みやび @sukamelancholy

艦これSS『戦艦タ級鎮守府漂着したようです

2013-08-13 15:06:50
高峯みやび @sukamelancholy

倒れたまま動かない戦艦タ級に、艦娘達はどうすべきか困惑している。生きているのなら、この場で彼女を撃滅しなくてはならない。それが艦娘達の任務なのだから。 しかし、海上で猛威を振るっていた戦艦タ級は動かない。 提督はその戦艦タ級に歩み寄る。 艦娘達が止めようとしたが、手で制した。4

2013-08-13 15:12:51
高峯みやび @sukamelancholy

漂着した戦艦タ級は僅かながらも呼吸をしており、意識を失っているだけのようだった。 その代わりなのか、彼女の禍々しい装備は見るも無惨で、損傷が激しい。装備として使う事は出来ないだろう。 提督は彼女の容態を確認し、救護班を呼ぶ。その命令に戸惑う艦娘達。提督は再度救護班を呼んだ。5

2013-08-13 15:16:45
高峯みやび @sukamelancholy

怯えながらも救護班は意識のない戦艦タ級を救護室へ運び、提督も後に続いた。 しかし提督を呼び止める者がいた。金剛型高速戦艦一番艦、秘書艦の金剛だった。 「提督。あの戦艦タ級をどうするツモリ?」 提督はすぐに答えた。彼女は生きている。装備は大破。故に無力であり、救護すべきだ、と。6

2013-08-13 15:21:18
高峯みやび @sukamelancholy

しかし金剛はその答えで納得する事は出来なかった。……否、納得したくはないのだろう。『敵』の戦艦タ級を救護する事も、その命令を下した提督にも。 しかし提督は説明は後と告げ、全艦待機命令を言い渡す。金剛は歯を食いしばりながらも頷いた。7

2013-08-13 15:27:16
高峯みやび @sukamelancholy

救護室のベッドで眠る戦艦タ級を見ながら、提督は今後の彼女の待遇を考える。 戦艦タ級と言えば深海棲艦の中でも危険な敵の一人だ。戦闘ではこちらも苦戦を覚悟し臨まなければならない相手だった。 しかし、今の彼女は戦闘能力を持たず、眠る表情も人間の少女と何ら変わりはないのだ。8

2013-08-13 15:31:34
高峯みやび @sukamelancholy

それに、謎が多い深海棲艦についても情報が得られるだろう。それだけでも価値はある。 ……しかし。敵を救護する命令を下した提督に対する艦娘の反発は避けられないだろう。 その上、この事を上の者に知られれば身柄の引き渡し命令もあるだろう。 あとは。 金剛の機嫌を直す。すべき事は多い。9

2013-08-13 15:37:05
高峯みやび @sukamelancholy

前回までの三つのあらすじ ・戦艦タ級ちゃんが意識不明のまま鎮守府に流れ着いたよ ・提督「救護しよう(提案)」 ・金剛「激おこぷんぷん丸デース!」

2013-08-14 16:54:36
高峯みやび @sukamelancholy

救護班に引き続き戦艦タ級の看護を続けるよう命令し、提督は金剛の私室へと向かう。 恐らくは、かなり機嫌が悪いだろう。何せ、今まで敵として戦っていた相手を救護すると判断したのだから。 しかし、どう機嫌を直すかなど、只の軍人に過ぎない提督には検討も付かない。10

2013-08-14 16:59:39
高峯みやび @sukamelancholy

あれこれと悩んでいる間にとうとう金剛の私室へ到着し、三度ノックした。 返事は無い。 再度提督は三度ノックし、金剛の名を呼ぶ。いつもならすぐに彼女は扉を開けて提督を歓迎したのだが、その様子はない。 予想していたが、ここまで拒絶されてしまうと心苦しい。提督は諦めて司令室へ戻る。11

2013-08-14 17:03:36
高峯みやび @sukamelancholy

司令室へ戻り、雑務をこなしているとノックの音。入室を許可すると、扉を開けたのは比叡だった。 いつもの元気な姿は無く、彼女の表情は姉の金剛の事を慮っていると見て取れた。 用件を聞くと、やはり提督の判断についての質問であった。 提督はいずれ皆に知らせるとだけ告げた。12

2013-08-14 17:10:29
高峯みやび @sukamelancholy

「それだけでは納得できません!今は意識がありませんが、目覚めたらすぐに暴れて、鎮守府や他の艦娘に被害が!」 熱くなる比叡を窘めるように提督は答える。 今は待機命令を遵守する事。 比叡は頭に血が上ったらしく、投げやりに頭を下げてから司令室を出た。 提督は深く溜息をつく。13

2013-08-14 17:17:33
高峯みやび @sukamelancholy

何も対策を打っていない訳ではない。救護班の傍には監視と警備役の艦娘を配置しているが武器も隠し持っていない。完全に丸腰だ。 後は、意識が戻った時の問題だ。深海棲艦との意思疎通は可能なのか?もし、失敗してしまえば非戦闘員の救護班などに被害が及ぶ。事は慎重に運ばなければ。14

2013-08-14 17:22:38
高峯みやび @sukamelancholy

再度ノックの音。入るように促すと、今度は雷と電であった。 彼女らも比叡と同じ事を質問すると思っていたが、そうではなかった。 「司令官!司令官の決断に私達感動したんだよ!」 「沈んだ敵も、出来れば助けたいと思っていた私達が躊躇っていたのに、司令官さんは凄いのです」15

2013-08-14 17:26:57
高峯みやび @sukamelancholy

……やはり、この姉妹は優しい。思わず笑みが零れる。 救護したのは深海棲艦の謎を解明する為でもある。だがそれだけではない。雷と電の理想に、提督は感銘を受けていた。 甘い理想だと鼻で笑われそうな事かもしれない。しかし、その理想はとても尊い。 艦娘の上に立つ者でも学ぶ事は多いのだ。16

2013-08-14 17:32:29
高峯みやび @sukamelancholy

提督は感謝を述べて、出来ればこれからの判断や命令にも積極的になって欲しいと語る。 雷と電の二人は眩しい笑顔で頷いた。 小さく、戦闘力も戦艦には遠く及ばない駆逐艦だが、芯は強い。 後日、緊急会議でも皆にこれをわかってもらえればいいのだが。 提督は両頬を叩き、気合を入れた。17

2013-08-14 17:36:48
高峯みやび @sukamelancholy

前回までの三つのあらすじ ・提督「鎮守府の提督ですが戦艦タ級を救護したのはいいけど艦娘からの評価がガタ落ちです」 ・比叡「提督の!!すかぽんたん!!!」 ・雷電姉妹「提督すごい!えらい!(小並感)」

2013-08-16 00:15:06
高峯みやび @sukamelancholy

二三〇〇。 突如慌しい足音に、就寝していた提督は目を覚ます。 ノックすらも忘れ、部屋に飛び込んだのは救護室で戦艦タ級の監視役の一人、駆逐艦の島風だった。持ち前の早さで伝達役として選んだのだが、どうやら正解のようだ。 「提督。彼女、起きたよ」 提督は頷き、軍帽を深く被った。18

2013-08-16 00:18:54
高峯みやび @sukamelancholy

「急いで。彼女、酷く混乱してるみたい」 島風の言葉の通りらしく、救護室からは暴れる音ともう一人の監視役、軽巡洋艦の夕張の声。 やはりそうそう上手くはいかないか。提督は自嘲し、救護室に足を踏み入れる。 「落ち着いて!私達は貴女を攻撃しないから!」 「グ、ウウウアアアッ!!」19

2013-08-16 00:23:29
高峯みやび @sukamelancholy

相当な暴れっぷりだったのか、救護室はまるで嵐の後のように散々だった。薬品は床にぶちまけられ、包帯は解けて散乱。他の備品も彼女、戦艦タ級によって壊されていた。 夕張の声にも耳を貸さず、暴れるばかりだった。さらに、男の提督が救護室にやってきた事で、余計に暴れだす。20

2013-08-16 00:26:38
高峯みやび @sukamelancholy

身近にあるものを全て投げ、大声を上げて威嚇。まるで、野生児のようだ。 だが、深海棲艦には知性がある。艦娘との戦闘では陣形を形成し戦う。 故に、目が覚めた時敵地のド真ん中に居ると知れば暴れるのも訳はない。 提督は両手を上げながら、戦艦タ級にゆっくりと歩み寄る。21

2013-08-16 00:30:16
高峯みやび @sukamelancholy

とうとう投げる物がなくなったのか、彼女は歯を剥き出しにして低く唸り、提督を威嚇する。 「それ以上近づくと危険です!」 自動小銃を戦艦タ級に向けたまま、夕張は警告する。提督もそれは百も承知である。装備がなくとも身体で襲い掛かるかもしれない。あの、長い爪が提督の首を裂く可能性も。22

2013-08-16 00:33:36
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