艦これSS 戦艦タ級が鎮守府に漂着したようです & 空母ヲ級が遊びに来たようです -完結-

不定期に、気まぐれで更新。 9/10に完結いたしました。ご愛読ありがとう御座いました。 9/15おまけのようなものを投稿開始。 10/13におまけも完結。本当にありがとうございました。
46
前へ 1 2 ・・ 10 次へ
高峯みやび @sukamelancholy

ここで提督は気付く。戦艦タ級は意識が戻り、救護室で暴れた。だが、この場から逃げ出さない理由は? 上半身だけを起こし、威嚇する事しか出来ないのは何故か? もしかすると、彼女は不随の可能性がある。 だとすれば、これ以上の接近は危険だ。提督は彼女の手が届かない場所に座った。23

2013-08-16 00:39:15
高峯みやび @sukamelancholy

提督は彼女を落ち着かせる為にゆっくりと語りかける。 我々に戦う意思はなく、ここへ流れ着いた君を救護した。 しかし変わらずに彼女は唸り続ける。 君に危害を加えたりはしない。戦う力を持たない君は、患者なんだ。自由に身動きが取れないのだろう? 紅い目は提督を睨みつける。24

2013-08-16 00:45:31
高峯みやび @sukamelancholy

自己紹介をしよう。私は、この鎮守府の提督をやっている。――――、という者だ。 剥き出しにしたままの尖った歯は、今にも飛び掛って提督の首筋を噛み千切りそうだ。提督の背中に冷たい汗が流れる。 そして、戦艦タ級はようやく言葉を発した。 「……デテイケ。ココカラ、イナクナレ!!」25

2013-08-16 00:49:55
高峯みやび @sukamelancholy

そう易々と心を許したりはしない。それは分かっていた。提督は素直に彼女の要望を聞き入れ、救護班、監視役の艦娘を全員退出させた。 ……前途多難。 今の状況は、正しくそれだった。 「予想通り、拒絶されましたね……」 夕張は溜息を吐く。 「いいデータ、取れると思ったんだけどな」26

2013-08-16 00:54:46
高峯みやび @sukamelancholy

こればかりは仕方がない。徐々に彼女との信頼を得るつもりだ。提督がそう言うと、夕張は驚いた表情になる。 「もしかして、これから説得し続けるのですか?」 勿論だ、と頷く。 「……とても危険です。殺されるかもしれないんですよ?」 わかっている。 「……いいえ、わかっていません」27

2013-08-16 00:57:10
高峯みやび @sukamelancholy

わかっていない、とは? 「彼女、戦艦タ級は海上だと私に勝ち目はほぼない相手です。装備がないとは言え、陸上でもその脅威はなくなった訳ではありません」 それは既にわかっているつもりだが。 「……私は、提督の身を案じているんです。心配なんです」 ……不意に、金剛の表情が浮かんだ。28

2013-08-16 00:59:34
高峯みやび @sukamelancholy

「私だけじゃありません。みんな、みんな提督の事を心配しています」 ……あぁ。 「約束してください。安全と分かるまで安易に近づかない事」 了解だ。 「……あなたを失ったら、私達は、戦えません。私達にはあなたが必要です」 ……ありがとう。29

2013-08-16 01:02:33
高峯みやび @sukamelancholy

私室へと戻った提督は、先ほどの夕張の言葉を噛み締めていた。 夕張の気持ちは、秘書艦である金剛も同じであったに違いない。 彼女の気持ちを、わかっていなかった。これでは提督失格である。30

2013-08-16 01:07:38
高峯みやび @sukamelancholy

金剛としっかりと話し合う。 艦娘達に戦艦タ級の件について理解してもらう。 戦艦タ級との意思疎通を可能にする。 そして、処遇を決めなければならない。 深海棲艦は並の人間よりも治癒力が高い。一度撃沈させても、次に出撃した頃にはまた立ちはだかる。 これは時間との勝負だ。31

2013-08-16 01:13:09
高峯みやび @sukamelancholy

前回までの三つのあらすじ ・戦艦タ級「おはよー(●´ω`●)」 ・戦艦タ級「あれ? ここどこ?」 ・戦艦タ級「ここ敵の本拠地だよー。゚(゚´Д`゚)゚。」

2013-08-17 13:05:13
高峯みやび @sukamelancholy

一〇〇〇、提督の司令室。 今日は司令室に来ないと覚悟していたが、金剛は定刻通りに来た。 今日出撃する第一艦隊と、遠征へ向かう艦隊の決定、本部からの通達など、秘書艦としての業務を忠実にこなす。 いつもなら、金剛からよく話し掛けてくるのだが、今日の司令室は静寂に包まれている。32

2013-08-17 13:12:02
高峯みやび @sukamelancholy

……金剛。 「ハイ」 ……今も怒っているか? 「もう、怒ってないデス」 ……。 「……」 ……そうか。 「……ハイ。でも、納得は、出来ませんデシタ」 ……。 「私達と彼女は何度も戦ッテ、怪我もしまシタ。彼女の強さを知っているのデス。その彼女が、ここにいるのが怖いデス」33

2013-08-17 13:17:28
高峯みやび @sukamelancholy

「夕張から聞きました。提督が、彼女に近づいて話し掛けたッテ」 ……。 「もう少しで彼女に傷つけられるかもしれなかったッテ」 ……。 「私、泣きましタ」 金剛……。 「提督が自分を大切にしない事、そこに私が居なかった事。悲しくッテ、悔しくッテ……」 ……。34

2013-08-17 13:21:23
高峯みやび @sukamelancholy

「もし提督が私を頼ったり、私があの時部屋から出ていた、ッテ」 ……。 「昨日、私があの場に居たら、無理矢理でも止めマシタ。提督、危ないからダメッテ」 ……。 「でも、私は居ませんでシタ。もしかしたら提督が殺されたかもしれなカッタ」 ……。 「…………提督?」35

2013-08-17 13:25:28
高峯みやび @sukamelancholy

金剛の目から、ぽろぽろと涙が零れる。 「もう、危ない事はしないデ……!もし、また彼女に会うなら、必ず、私を連れてくだサイ。私を、私を、頼ってクダサイ。絶対に、提督を守りマス。だから、約束、してクダサイ。自分を大切にしてクダサイ。提督が死ぬなんて、許さないんダカラネ……!」36

2013-08-17 13:31:06
高峯みやび @sukamelancholy

泣きじゃくる金剛に、提督は約束すると頷いた。すると金剛はより涙を流しながら、提督の胸に飛び込んだ。 秘書艦は提督の側でサポートする。最も提督に近く、信頼されている立場だ。秘書艦に選ばれた時のあの喜びようを提督は思い出し、すまないと一言、金剛に言った。37

2013-08-17 13:35:49
高峯みやび @sukamelancholy

前回までの三つのあらすじ ・金剛ちゃん号泣 ・金剛「危ない事したらNoなんだからネ!」 ・金剛ちゃんマジ天使

2013-08-19 04:00:47
高峯みやび @sukamelancholy

鎮守府に所属している艦娘全てが招集され、緊急会議が開かれた。 議題は、先日救護した戦艦タ級の今後の処遇についてである。 提督は全ての艦娘達を一望し、突如、頭を下げた。 鎮守府で最も権力のある者の謝罪に、ざわめく会議室。38

2013-08-19 04:04:37
高峯みやび @sukamelancholy

提督は咄嗟の判断で艦娘全員に不安な夜を過ごさせてしまった事への謝罪と、説明もなく救護命令を出した事の非礼を詫びた。 すると、重巡洋艦の摩耶が腕を組みながら反論した。 「あたしらを引っ張ってく立場なのにさ、独自の判断で救護するっつって説明もなしに一晩過ごさせやがって」39

2013-08-19 04:13:15
高峯みやび @sukamelancholy

「しかも相手は敵の深海棲艦だ。敵を始末せずに救護するっておかしいんじゃねぇのか?」 「摩耶、熱くならないで」 妹の鳥海が止めようとするが、摩耶は止まらない。 「そらあたしらは提督の命令に従うしかないけど、敵を救ってちゃ、今まで戦ってきた意味も理由もなくなるだろうが!」40

2013-08-19 04:17:20
高峯みやび @sukamelancholy

「敵だからって、見殺しにするの?」 激昂する摩耶に反論するのは駆逐艦の雷だった。 「敵は敵だ。情けかけたらこっちが死ぬ」 「戦う力もないのに、どうやって死ぬのよ!」 「ンなモン、わかんねぇだろうが!敵は敵、あたしらはあたしらでケジメつけるべきだ!」 「彼女を殺せって言うの?」41

2013-08-19 04:20:35
高峯みやび @sukamelancholy

「ああそうだよ。今救護室でのうのうと過ごしてる奴は深海棲艦で、しかも脅威の戦艦タ級だ。怪我が治ったら真っ先に襲撃してくる。だから、今ぶっ殺すんだよ!」 「酷い!怪我してる相手に手を掛けるなんて、そんなの間違ってるわ!」 白熱する二人と、落ち着かせようとする両者の妹。42

2013-08-19 04:23:14
高峯みやび @sukamelancholy

二人の口論をきっかけに、戦艦タ級を生かすか殺すかでざわつく会議室。 提督はそれを止める事をせず、見ているだけ。秘書艦の金剛はそんな提督を見て、落ち着かせようとしていた自分を制した。 重巡洋艦の摩耶と駆逐艦の雷の口論はまだ続いている。口論では留まらず、殴り合いにも発展しそうだ。43

2013-08-19 04:26:54
高峯みやび @sukamelancholy

提督は目を閉じて耳を澄ませ、艦娘の意見を聞いていく。 皆、戦艦タ級の脅威は目の当たりにして知っている。あの脅威が鎮守府で発揮されたら、と怯える者。 摩耶と同様に戦艦タ級の救護に反対する者。 戦艦タ級を救護した提督への疑問を述べる者。 一通りの意見を聞いた後、提督は強く机を叩く44

2013-08-19 04:31:52
高峯みやび @sukamelancholy

その音に、一瞬で艦娘達の口論や意見が止まり、提督は注目を浴びる。 議論討論大いに結構。批判非難大いに結構。だが、私の説明も聞かずに意見を述べるのは、上官に対する非礼ではないのか? 研ぎ澄まされた刃のように、提督は冷たく言い放つ。 だが、それにも怯まない者が居た。摩耶である。45

2013-08-19 04:34:46
前へ 1 2 ・・ 10 次へ