めうめうのお話まとめ
めうめうとボクの出会いはなんということはなかった ある土曜日のこと 気分転換に音ゲーでもしにゲーセンに来たのだった 平日は仕事があるからこういう日に羽を伸ばさないとやっていられない しかしそのゲーセンに来たら音ゲーコーナーには人だかりが どうやらその中心は一人の女の子らしい
2013-08-10 14:55:08なんだかアニメの世界に出てきそうな派手な格好の女の子で ウサ耳のついたヘッドホンとやたらと破天荒な語尾が特徴だった はて……あんな子が居ただろうか 昔はちょくちょくここに来たものだけど今までにこの子を見たことがない 最近引っ越してきたのだろうか 最初の印象はそんなものだった
2013-08-10 14:56:42何を気にすることもなくボクはとりあえずIIDXをやろうと思った このゲームは結構昔からやってて実は今でもやっている それなりのレベルにはなったし自信はあった とは言えさっきの女の子はそれと比べても半端無かったな 自信はあってもあそこまではそうそういけないと思う
2013-08-10 14:57:49その日はたまたまだったのか IIDXがガラガラだったからいつもやれない分しっかりやり込もうと思っていた 何クレ投じた頃だろうか いつの間にか何とも言えない集団が後ろに居た 正直あまり人に見られながらプレイするのは好きじゃない…… が、その中にあの女の子が居た
2013-08-10 15:00:49なるほど 彼女が順番待ちを始めたから取り巻きも一緒についてきたという感じか 結構やれたし今日はもう良いかなってところで適当に最後は一番好きな曲で流して終わらせることにした 最後の曲を終わらせると台から降りて休憩しようとゲーセンの隅の休憩コーナーに向かった その時だった
2013-08-10 15:02:38自販機でジュースを買いつつ休憩コーナーに向かう途中で気付いた さっきの子がついて来るのだ 最初は気付かないふりをしてそのまま休憩コーナーのベンチに座ったがここからが問題だった その子は何も言わずボクの隣に座ってきたのだ 一体なんだというのか 「あのー……ボクに何か用かな?」
2013-08-10 15:05:35「ずっと話しかけようか迷ってたけど今日こそ話しかけるめう!」 ん?ずっと? ボクはこの子を今日ここで初めて見た気がするんだが 「えーと……ボクたち初対面だよね?」 「違うめう!ずーっと前にお兄さんがあのゲームやってるのを見ためうっ!」 ああ、そういうこと…… だからさ……
2013-08-10 15:08:24「いや、ボクも昔からここら辺のゲーセンは良く来てたし、ここにもちょくちょく来てるけど君みたいに上手い子は見たことないんだよね。アレくらい上手ければこっちも気付くし……」 「ぶー!だってめうが音ゲー始めたのそんなに昔じゃないめう!お兄さんみたいに上手くなりたくて頑張っためう!」
2013-08-10 15:10:34……うん? ということは何か? 「じゃあ最近始めてあんなに上手くなったの?」 「えっへん!めう、頑張っためう!」 いや 最近始めたと言われてもなあ さっきドラムの方から紫色でレベルが9.いくつの曲でフルコンボイとか見えた気がするんだけど
2013-08-10 15:12:46「ところで、えーと君は……」 「めうって呼ぶめう!」 めう?あれ語尾だけじゃなくてそういうハンネなのか 「えーと、めうちゃん」 「はいめう!」 「最近始めたって言ったよね?でもずっと昔にボクを見たってどういうことなの?」 「それはめうがまだ小さかったときの話めう」
2013-08-10 15:14:34いやいや今も十分小さいけど…… っていうツッコミは心の中にとどめておいた 「あ、ああそうなの」 「すごーくびっくりしためう!あんなに手がしゅばばばばーって動いてるの見たの初めてだっためう!」 うーん…… あんまりそういう風に打ち込んだ覚えはないんだけどそう見えていたのか
2013-08-10 15:16:03「それでね!あの『宴』って曲が特にすごかっためう!」 「う……うたげ?」 そんな曲あったっけ? 「ほら~こういう字を書くめう!」 そう言いながら空にすらすらと文字を書くそぶりをするめうちゃんの手元をよーく見ていてすぐに気付いた 「それって『冥』じゃ……」 「めう!?」
2013-08-10 15:18:20「めうぅ~……あの曲って『めう』って読むんだっためう……」 「いや『めい』だってば」 「めう?」 「いや……やっぱいいや」 それにしても冥か 言われてみればあの曲ならそんな感じになってたのかも知れないなあ 「ところでお兄さんこそ何て名前めう?」 げ、ストレートに聞くかそれを
2013-08-10 15:22:55とりあえず当たり障りのないよう音ゲー関係で使ってるハンネを教えてあげることにした 「へーかっこいい名前めう!」 「いやいや、めうちゃんも面白くて可愛い名前だと思うよ」 「えへへ~それほどでも~」 いやホント自分のハンネをそのまま語尾にしてるのは確かに面白いというか珍しいと思う
2013-08-10 15:25:27「ところでめうちゃんが音ゲー始めたのって本当にボクのプレイを見たからなの?」 「そうめう!めう、あの頃は……うん、ちょっとネクラだったし何もできなかったから」 へえ それは意外だなあ こうして話しててもめうちゃんは普通に趣味に没頭してる女の子にしか思えないが
2013-08-10 17:00:22「だからめうにとっては憧れの人だっためう」 「あ、ああそうなの……」 憧れと言われても目の前でランカー顔負けのプレーをされたらさすがにたじろぐ まあ若いというのは強いというか さてそうこうしている内にジュースが空になってしまった 僕はベンチから腰を上げてそれをゴミ箱に捨てる
2013-08-10 17:03:00「あれ?休憩終わりめう?」 「休憩終わりって……ボクそろそろ上がろうかと思ってたんだけど」 「じゃあめうと一緒に帰るめう!そろそろお店に居ちゃいけない時間だし!」 そう言われてふと腕時計を見てみる 時刻は間もなく18時になるということで一応ここも規則に従い……って
2013-08-10 17:05:01「18時に退場ってことはめうちゃんいくつなの……」 「えーと、14めう!」 「わぁおボクより10も下かい!」 「現役の中学生めう!」 これは驚いた 知らず知らずのうちにボクは10歳も下の女の子と喋っていたらしい そして10歳下の女の子に音ゲーの腕前も負けているらしい
2013-08-10 17:07:1918時になりやむなくゲーセンから退場したボクたちはチャスコから出てそれぞれの帰路に就く…… はずだった 「わぁー!車持ってるめう!?」 「え?ああ、うん一応社会人だしここら辺クルマなきゃやってらんないし」 「乗せて乗せて~!これ何とかってスポーツカーめう!」 という次第に
2013-08-11 08:47:16なんでこんなことになったんだろうか ボクは夕暮れの田舎道を中学生の女の子を助手席に乗せながらふらーっと流すことになってしまった こんなことしてK察にでも見つかったらどうなるやら…… そんな心配をよそにめうちゃんは街の風景を眺めて楽しそうにしてるしボクの運転を興味深そうに見てた
2013-08-11 08:49:53「すごいめうー!あんなにガチャガチャ動かしてこんがらがらないめう!?」 いや君のドラムよりはかなりシンプルなことをしていると思うよ とは言わなかった 「んー慣れかなやっぱ」 「かっこいい~めう!めうも将来はこういう車に乗るめう!」 いつか夜中の峠を攻めそうで怖い
2013-08-11 08:51:23「ところでめうちゃん、そろそろ家に帰らなくていいの?」 「んーもうちょっとなら良いめう」 いやその言い方だとボクが連れまわしてるみたいでしょ…… 「あのね、めう……さっきも言ったけど前はこんな格好したことなかったしもっと地味な感じだっためう」 そういえばそんなこと言ってたな
2013-08-11 08:55:06「あの頃はずっと一人ぼっちで何も取り柄も無かったから誰かに見られるのもイヤだっためう」 「そうか。大変だったんだね」 クルマを通りの少ない道の脇に停めてハザードを付けて少しだけ彼女の話を聞いてあげる 年頃の女の子だしいろいろあるんだろうなあと無責任な想像を抱えつつ聞き入る
2013-08-11 08:58:27「でもね!あの時見た音ゲーをやってる姿がかっこよくて、『めうにもあんなことが出来たらな』って思ったから頑張ってみたの!」 「そっか……だとしたらめうちゃんは凄いな」 「めう?」 「憧れたことに真っ直ぐ向かって行ってそれでその憧れに追い付いちゃうんだもん。そりゃあ凄いことだよ」
2013-08-11 09:00:21まったくもってそうだ 憧れがあって目標があってそしてそこにたどり着けたならそれは一人前の証拠だ 自分は……きっとそんな凄い人に憧れ続けたけど最後までそこには行けなかった凡俗の典型だろうから そう考えるとこの隣に座ってるボクよりも10歳も年下の女の子がうらやましい そして輝かしい
2013-08-11 09:02:47