『おとぎのかけら 新釈西洋童話集』(集英社文庫)刊行記念 千早茜・榎本正樹 往復書簡ツイート

千早茜『おとぎのかけら 新釈西洋童話集』(集英社文庫)刊行記念の往復書簡ツイートのまとめです。
0
前へ 1 2 3 ・・ 21 次へ
千早茜 @chihacenti

さて、榎本正樹さん(@enmt)との「おとぎのかけら」往復書簡、第五信はじめます。

2013-08-23 22:21:14
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-1] 榎本さんの分析すごく面白かったです。しかも明確で「うん!そうそう」と何度も頷いてしまいました。テーマをもうけていても、書いている時は夢中なので、書き終わってから気付かされることも多いのです。批評や感想をいただくことで、次の作品の課題が生まれてきます。

2013-08-23 22:22:34
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-2] 榎本さんのツイートもせっせとメモをとってます。メモは日記と言葉(ネタ)帳と取材ノートにわけています。日記は出来事だけを一日三行で書き、言葉帳は浮かんだフレーズを、取材ノートは人と対峙した時や旅行の際に、起きたことや頂いた言葉、感じたことを記録しています。

2013-08-23 22:25:07
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-3] 通常は取材ノートを持ち歩いています。榎本さんが見たのはこれですね。ちなみに私のは「ネガティブ禁止」というシールが内側に貼ってあります…(笑)。近しい人からのもらいものです。「風来坊」のような格好いいシールを貼れるようになりたいものです。

2013-08-23 22:26:44
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-4] [4-11]の質問はよくされます。いつもうまく答えられないのですが、よい機会なのでなるべく正直に言葉にしてみようと思います。この質問は「何を」書くと捉えるかによって答えが違ってくる気がします。「物語」で言えば、書きはじめたのは大学生の時です(詩は高校)。

2013-08-23 22:29:29
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-5] きっかけは映画を撮っていた大学の友人に「こういうシーンが入った話つくれない?」と言われたことです。一晩で短編のようなものをひとつ書きあげました。その時に「あ、私、物語をつくれるのか」と驚きつつ気付いたのがはじまりです。

2013-08-23 22:30:49
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-6] それまでぼんやり空想することはあっても、一貫したストーリーを始めから終わりまで文字で描けるとは思っていなかったのです。思っていなかったので、試したこともありませんでした。書けるとわかってからは時々短いものを書きましたが、人に見せようとは思いませんでした。

2013-08-23 22:34:02
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-7] 「文章」は二歳から日記を続けてます。とはいえその頃はまだ文字を書けなかったので、母にその日あったことを話して書いてもらってました。口述筆記といえど一日に起こったことをすべて話すわけにもいかないので、何を日々の記録として残すかは私が選ばなくてはいけません。

2013-08-23 22:36:16
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-8] 虚実入り混じったものもあったと思います。そういう意味では文字を覚える前から「語り」をしていたと捉えてます。その「語り」がいつの間にか自分のことだけでなく、創作もできるようになっていたという感じです。はじめて読みたいと思った本は「ドラえもん」でした(笑)。

2013-08-23 22:39:21
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-9] その時にはじめて母に文字の読み方を教えてもらいました。確か五歳くらいだったと思います。「語る」も「書く」に含むのならば、「読む」より「書く」のが先でした。だから、私の場合「読む人」から「書く人」への移行の瞬間を訊かれるとどうもはっきりしないのです。

2013-08-23 22:42:28
千早茜 @chihacenti

[おとぎのかけら5-10] もしかしたら「読む」と「書く」を別々のスキルとして捉え、影響は受けつつも、それぞれのものとして発展させていったのかもしれません。うまく伝わりますでしょうか。ただ、他の方の移行または飛躍が、どのようなものだったのかは、とても気になります。終

2013-08-23 22:44:39
榎本正樹 @enmt

千早茜さんとの往復書簡ツイートの第六信、そろそろ行きます。

2013-08-24 15:47:50
榎本正樹 @enmt

第四信のツイートを読んで驚愕しました。まず、「日記」と「言葉帳」と「取材ノート」の三種類のノートを使い分けられているという事実。それぞれを、異なることばの記録庫(アーカイヴ)として活用されているのですね。

2013-08-24 15:50:20
千早茜 @chihacenti

「おとぎのかけら」往復書簡、榎本さんの返信はじまります~どきどき。

2013-08-24 15:50:59
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-2] 小説家が日常的にどのようにことばを受けとめ、ストックし、インスピレーションを得る仕組みをつくりあげているのか、貴重な創作秘話として理解することができました。千早さんの小説には、時に興味深い語彙や、不思議な叙述や、ヴィヴィッドなイメージが出現します。

2013-08-24 15:54:19
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-3] それらは、弛まぬことばの採集作業を通して得られたものなのですね。そしてもう一つ、二歳から口述で日記を付けていたという事実。その日に起こったできごとを取捨選択し、一つのストーリーに編集する作業を含む点で、日記は創作へのエントリーとでもいえる表現です。

2013-08-24 15:57:20
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-4] 千早茜という小説家の出現は、まさに幼少期に準備されていたのですね。たとえば親に絵本を読んでもらうというようなことは、一般的な状況としてあったと思うのですが、絵本の「読み聞かせ」の記憶よりも、母親への「話し聞かせ」の記憶が先行している点が興味深いです。

2013-08-24 16:00:03
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-5] 「話し聞かせ」の習慣が、その後、自覚的に文章を書くことに直接つながらなかった点にも関心をそそられます。小・中学生の頃からお話を書いていたわけではく、大学の友人のオーダーに応じる形で、突然物語を書くことに目覚める。これが「飛翔」の瞬間でしょうか。

2013-08-24 16:02:18
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-6] それまで溜めこまれていた書く力が、友人の言葉をきっかけに表出し、本人の自覚するところとなった。「読む人」から「書く人」への移行というよりは、「書く人」としての自己発見が、その後の小説家デビューへと続いている。そのようにまとめることができそうです。

2013-08-24 16:05:57
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-7] 児童心理学の立場から分析することができればベストなのですが、幼少期において「語る」ことが「読む」ことに先行するのは、一般的な事例なのかもしれません。「読む人」から「書く人」へ移行するという考えは、シンプルで理解しやすいけれど、構造的過ぎる気もします。

2013-08-24 16:09:27
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-8] 読むリテラシーと書くリテラシーを同時的に存在しうる、あるいは両者がどこかで交差する、そういうシチュエーションを想定する必要があるのかもしれないですね。

2013-08-24 16:11:17
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-9] さて、ここまで往復書簡ツイートを重ねてきたわけですが、千早さんの最初のエントリーの中でしか『おとぎのかけら』について触れられていないという事実に愕然として気づきました(笑)。今回のテーマである『おとぎのかけら』に、そろそろ話題を移していきましょう。

2013-08-24 16:13:16
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-10] 童話にアレンジメントを加えた小説は世に存在します。大宰治の『お伽草子』がそうですし、倉橋由美子『大人のための残酷童話』、佐野洋子『嘘ばっか 新釈・世界おとぎ話』、松本侑子『罪深い姫のおとぎ話』、三浦しをん『むかしのはなし』などをあげることができます。

2013-08-24 16:15:02
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-11] パロディやパスティーシュの技法を駆使した作品あり、オリジナルを大幅に書き換えた作品あり、あるいはまったく新しい話に翻案した作品ありと、アプローチの仕方はさまざまです。アレンジメントを施されたすべての小説に共通するのは、原典に対する批評的なまなざしです。

2013-08-24 16:16:40
榎本正樹 @enmt

[おとぎのかけら6-12] 『おとぎのかけら』の成立過程については「あとがき」で詳しく触れられているので、繰りかえしません。西洋童話への「共感」ではなく「違和」から出発している点がポイントであり、本作の批評性はそこに集約していると思います。

2013-08-24 16:17:37
前へ 1 2 3 ・・ 21 次へ