ホワット・ア・ホリブル・ナイト・トゥ・ハヴ・ア・カラテ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
1
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ホワット・ア・ホリブル・ナイト・トゥ・ハヴ・ア・カラテ】#2

2013-08-27 21:42:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガシュコンガコン、ガシュコンガコン…吊られた冷凍マグロが格子状に並び、規則正しく上下運動を繰り返す光景は、前衛的インスタレーションか超古代文明オーパーツを思わせる。ツキジダンジョン最深部。旧世紀の人間たちは何を企図してこのようなシステムを遺したのか。いまやそれを知る者はない。 1

2013-08-27 21:50:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

野方図に肥大化し遺棄された地下施設。ここを訪れるのは、旧世紀の非汚染マグロなどを求める命知らずの盗掘団か、それらを狩る許可を政府から得た掃除屋か、あるいは地上での行き場を失った狂人や世捨て人らである。カネと殺人と冒険のスリルが、強烈な麝香のごとく人間を引き寄せ、虜にするのだ。 2

2013-08-27 21:55:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ、ハァーッ……」折り重なった敵と仲間の死体、その間で身を横たえる一人の男。彼はライバル盗掘団との戦闘、およびその後の仲間割れで負傷し、唯一生き残ったが、足を負傷し動けないのだ。横に転がる上等な冷凍マグロが、徐々に冷気を失ってゆく。「クソッ、あと少しで大金が……」 3

2013-08-27 22:08:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガシュコンガコン……主人も存在意義も失った盲目の巨大システム稼働音だけが、全方位から不気味に響いてくる。「誰か助けてくれ!山分けだ!なんなら1:9でもいいぜ!」男はヤバレカバレで叫んだ。危険行為だが、この階層までは掃除屋ですら降りて来ないため、形振り構っては居られない。 4

2013-08-27 22:14:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが彼の悲痛な叫びは、ツキジダンジョンに潜む最悪の存在を呼び寄せてしまった。「フンッ!ハッ!フンッ!ハッ!」奇妙な掛け声と跳躍音が、闇の中から聞こえてくる。「な、何だ?」男は恐怖した。その声の主が……背中を曲げた不気味なシルエットの怪物が……異常なほど速く接近してきたからだ! 5

2013-08-27 22:21:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それはノミめいた跳躍で数メートルをひとっ跳び!男の横に着地して、顔を覗き込んだ。ナムアミダブツ!男は見た……恐るべき覆面とメンポに覆われた相手の顔を!「アイエエエエエ!」男は原初的恐怖を覚える!ニンジャだ!「これは新鮮だ」ニンジャは男と周囲の死体を観察し、そう言った。コワイ! 6

2013-08-27 22:30:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その真意は掴みかねた。だがロクでもない運命が待っていることは容易に想像できた。「アイエエエエ!」死の運命を悟った男は、闇雲に銃のトリガを引く!だがその直後、背筋も凍るようなカラテシャウトが暗闇の中に響いたのだ!「イヤーッ!」「アバーッ!」……そしてゼンめいた死の静寂が残った。 7

2013-08-27 22:40:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その執事めいたニンジャ装束の男は、新鮮な死体の中からいくつか個体や部位を選別し、奪い取り、銀色の袋やマルチタッパーなどに手際よく納めて担ぎ上げると、再び闇の中を跳躍してゆく!「フンッ!ハッ!フンッ!ハッ!イヤーッ!」大型冷凍コンテナを連続で跳び渡り、奇妙な一団のすぐ横に着地! 8

2013-08-27 22:45:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一人はリー先生。その隣を歩くのはドラゴン・ニンジャ。いくらか離れて先頭をふらふらと進むのは、大型ゾンビーニンジャのリフリジレイターだ。「アバー……」この知性無き合成腐肉巨漢ニンジャの全身からは、コリ・ニンジャ特有の冷気が常に発散されており、試料を最適な温度に保つ事ができる。 9

2013-08-27 22:57:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

執事ニンジャは手際よく死体保存バッグを格納。それから卑屈な態度で手を擦り合わせ、主人が落とす影の下へと、寄り添うように駆け戻った。「万事解決でございます。ああ、一時間も離れておりましたか、どれほど私がリー先生の身を案じたか…」「1分も経っていないネェー、ラヴェジャー=サン」 10

2013-08-27 23:05:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それほど案じていたのです」ラヴェジャーはその背をより一層屈め、リー先生の白衣の影から、その向こう側に居るドラゴン・ニンジャをちらちらと監視した。執事は恐れているのだ。得体の知れぬ竜を。だがリー先生は平然と振る舞う。「ここは自動的に研究試料が手に入るから、本当に楽だネェー」 11

2013-08-27 23:13:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サーカス団じみた一行は、ツキジの闇をさらに下る。どこか遠くから、奇怪なカラテシャウトと何かを殴り続ける音が聞こえてくる。その直後、朽ちかけた謎の計器類からバチバチと火花が散り、フックで吊られた冷凍マグロを延々と殴り続ける謎のカラテ者のシルエットを、影絵めいて壁に映し出した。 12

2013-08-27 23:22:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一行は歩みを止めない。「あれは?」ドラゴン・ニンジャが問う。「カラテゾンビだネェー。私たちのことは襲わない。そういう風に出来ている」リー先生は言った。カラテゾンビもまた、リー先生らが生み出した恐るべきゾンビーニンジャの一体であり、研究所を守るために放し飼いにされているのだ。 12

2013-08-27 23:27:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああいった玩具を、どれだけ造ってきた?」ドラゴン・ニンジャは煙草の煙を吹きながら無表情に言った。「48体ほど作ったかネェー。すでにゾンビーニンジャ製造研究は完成秒読み段階にあって、あと1体造れば、INW計画は次のステップに行くだろう。でもなかなか、最後の1体がネェー……」 13

2013-08-27 23:35:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何か問題が?」「締めくくりに相応しい験体が見つからないのだ。何しろ49だからネェー。49!不吉な獣の数字!記念碑的な作品にしたいからネェー」「お前自身が49番目になってみればどうだ?」「イヒヒヒヒーッ!面白いユーモアだ!」リー先生が笑い、横でラヴェジャーは顔を蒼白させる。 14

2013-08-27 23:44:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そもそも、私は他人で実験するのは大好きだけど、自分の体で実験するのは大嫌いだからネェー」「同感だ。ここは実に素晴らしい研究環境だな」ドラゴン・ニンジャは咥えていた煙草を放り捨て踏み消した。「イヒヒーッ!その通り!君と共同研究できれば、間違いなくINW計画は飛躍的に前進!」 15

2013-08-27 23:51:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「リ、リー先生、よろしいのですか!ほ、本当に、そいつをラボに入れてしまって!」ラヴェジャーが目を伏せ、両手で頭を覆いながら、勇気を振りしぼって問う。その息は粗く、今にも心臓を吐き出しそうなほど緊張している。彼はドラゴン・ニンジャを直視できない。あまりにも危険で美しいからだ。 16

2013-08-28 00:00:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それは顔立ちや容姿といった単純な美的概念ではない。ドラゴン・ニンジャから静かに発散されるキリングオーラ、奥ゆかしい身体平衡、そしてニンジャ存在感が渾然一体となった、人外の美しさだ。無論、それはラヴェジャーがニンジャソウル憑依者であるが故に、より強く感じ取れるものでもある。 17

2013-08-28 00:11:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うるさいネェー、彼女の知性は最高にセクシーなのだ!」リー先生が徐々に怒る。だが執事は引き下がらない!「ドラゴン・ドージョーといえばソウカイヤの敵!憎きニンジャスレイヤー=サンの協力者でございますよ!これがアマクダリに知れたら……!禍だ!禍を招き入れようとしておりますよ!」 18

2013-08-28 00:16:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤー=サンだと?もう一度言ってやろう、随分前に、私は彼と袂を分かった」ドラゴン・ニンジャは鼻で笑う。謎の計器類が火花を散らす。胸元のスリットから微かに覗く、その滑らかな白肌は豊満だ。「確かに、ソウカイヤとのイクサに明け暮れていた時代もあったが……」 19

2013-08-28 00:25:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「当時私は偽りの記憶を植えつけられ、中国地方でブザマな生を送っていたのだ」彼女は淡々と続ける。「だが今は違う。記憶とカラテを取り戻した私は、どの陣営にも属してはいない。今の私を突き動かすのは、数千年のアンニュイを打破する知的好奇心の疼きだけ。リー先生、お前の知性は興味深い」 20

2013-08-28 00:33:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「素晴らしい!同感だ!そもそも、私は陣営とか派閥とかは実際どうだっていいんだ!ニンジャ真実が解き明かせるならネェー!」リー先生が笑う。「おお!おお!」ラヴェジャーは苦悩のあまり叫ぶ!ガゴンプシュー!三段階の大型隔壁ドアが上下左右上下に展開し、地下秘密ラボへの入口が開かれる! 21

2013-08-28 00:41:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「陣営やら派閥やら、実にくだらん。私もイディオットどもが繰り返す程度の低いイクサに飽き飽きしている。さあリー先生、アンセレクテッド・レザレクション現象の原因を究明し…」「いけませんぞリー先生!必ずや禍が!」ラヴェジャーはついに形振り構わず泣き叫び、二人の前に立ちはだかった! 22

2013-08-28 00:55:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャの紛い物の分際で、私の前に立ちはだかるか?」ドラゴン・ニンジャはサングラス越しに相手を睨めつけた。「アイエエエエ!」顔を背ける執事!「アンセレクテッド・レザレクション現象のせいで、お前のような餓鬼どもが増上慢でのさばっている。塵芥にも等しい、モータル以下の小虫が」 23

2013-08-28 01:08:16