ド ラ マ

どうしようこれ
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せい @seigo022_six

@rasenkiryu も、僕はもうりのさんを巻き込むわけにはいかないから

2013-08-29 17:20:45
せい @seigo022_six

@rasenkiryu 一人前の真人間になって迎えにきます

2013-08-29 17:27:37
りの @rasenkiryu

@seigo022_six 迎えにきたせいさんが見たのは、すっかりやさぐれて乱れたせいせいかつを送るりののすがただった

2013-08-29 17:30:52
せい @seigo022_six

@rasenkiryu アパートのチャイムを鳴らすとすっかり肌も焼けたりのさんが薄いキャミだけの格好で煙草吹かして悪態つきながら出てくる 部屋の奥には知らない男たちの姿があった

2013-08-29 17:34:09
りの @rasenkiryu

@seigo022_six 慌てて突き飛ばして、扉を閉じて、中の男達に「知らない人よ!」とか言うけど、しつこく扉を叩くせいさんに苛立った男達が出て行って、せいさんをぼこぼこに

2013-08-29 17:36:09
せい @seigo022_six

@rasenkiryu 顔を腫らして虚ろな目で閉じた扉を眺め、しばらくしてから諦めて帰途につく。道中、昔散々彼女に止めてくれと言われてついぞ止めることのなかった煙草をぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てた。吸おうとしたところで、彼女がさっき咥えてた銘柄が同じ物だと気付いてしまったから。

2013-08-29 17:39:48
りの @rasenkiryu

@seigo022_six 昔の友人を尋ねると、何があったかを語ってくれた。別れた半年後に、家族が病に倒れ、長い闘病の生活の末に莫大な治療費だけを残して逝ってしまったのだという。それから彼女がどんな風にして、今の姿にまで堕ちていったか、聞くに耐えなかった。

2013-08-29 17:46:49
せい @seigo022_six

@rasenkiryu 彼女は自分を裏切った訳ではなかった。仕方が無かったのだ。女手一人で大金を手に入れるには、そうせざるをえなかった。かつての純粋な彼女はもう何処にもいない。俺は彼女を救えなかった。……それでも、もう一度会わなくては。それが自分の為すべきことだと、そう思った。

2013-08-29 17:52:06
りの @rasenkiryu

@seigo022_six 「なにしに来たの」再度、部屋をたずねたせいさんを、睨むような目つきのりのが迎える。男達の姿はないようだったが、その目には棘のような敵意が浮かんで見えた。

2013-08-29 17:57:50
せい @seigo022_six

@rasenkiryu 「ごめん、りの。俺、何も知らなかった」その言葉を免罪符にするつもりは無い。「気付けなかった。自分のことばっかり考えてて、りのが大変な時に、俺は何も出来なかった」胸が詰まる。「……俺に少しでも未練が残っていたら、またやり直して欲しい」「今度は、家族として」

2013-08-29 18:05:24
りの @rasenkiryu

@seigo022_six せいさんの言葉に息を呑むと、りのは口に手をあて、噛み締めるように最後まで聞く。次第に顔をうつむかせながら。そうして、やっと顔を上げると、少しだけ微笑んで言った。「・・・ありがとう、でもダメよ」

2013-08-29 18:08:23
せい @seigo022_six

@rasenkiryu 向けられる拒絶の言葉。それでもその微笑みは、あの頃と何一つ変わってはいなくて。「……どうして、なんだ。俺じゃ、お前の支えにはなれないっていうのか」……そうして、気付く。彼女がこんな微笑みを見せるのは、相手のことを案じている時だった。「理由を、聞かせてくれ」

2013-08-29 18:14:39
りの @rasenkiryu

@seigo022_six 「だってさ、せい・・・君」昔の呼び方を、脅えるように口にしてから、少し息を止める。「本当はね。せい君に連絡して、助けてって言いたかった」「でも、そしたら、苦しめちゃうってわかりきってたし」「だから、我慢した。それだけが、せい君にできることだったから」

2013-08-29 18:19:10
せい @seigo022_six

@rasenkiryu 「……りの」胸が張り裂けてしまいそうだった。今更どれだけ後悔しても、過去には戻れない。「苦しいだなんて思うもんか。旅に出て分かった。俺は、りのがいれば他に何もいらなかった背に手を回す。折れてしまいそうな程に細く頼りない身体を、抱きしめる。「ごめんな……」

2013-08-29 18:25:05
りの @rasenkiryu

@seigo022_six 「っ・・・!」抱きしめようとした腕を激しく振り払い、後ろに下がる。「・・・だめ。やめて・・・もう、・・・もう、だめだよ・・・」泣きそうな顔で首を振る「こんなに時間、たっちゃたから・・・もう、せい君も、わたしも、ちがうでしょう・・・?」

2013-08-29 21:04:03
せい @seigo022_six

@rasenkiryu 「……確かに、時間は経った。でも、俺の気持ちは変わってないよ。りのがどんなに違う外見になっても、俺がりのを想う気持ちだけは変わらない」彼女の悲痛な表情に、伸ばす手を止める。「……それでも、駄目なのかな」

2013-08-29 21:13:29
りの @rasenkiryu

@seigo022_six 「せい君は、変わってないんだ。そんな、綺麗なことばっかり言って、ずるいな・・・」耐えられないように目を背けて「・・・うぅん、ちがうかな? 昔だったら、もっと・・・」

2013-08-29 21:16:22
せい @seigo022_six

@rasenkiryu 「……綺麗とか、綺麗じゃないとか、そんなの関係無い!!」彼女だって、何も変わってない。自分より他人を優先して、そうしてどんどん追い詰める。だからこそ自分は、そんな彼女に惹かれていたんだ。「だから、もう、お前ひとりで苦しまないでくれ。俺に一緒に歩かせてくれ」

2013-08-29 21:33:25
りの @rasenkiryu

@seigo022_six 「う・・・なん・・・で、そんな・・・わたし、だって、うぅぅ」なにか言い返そう、言い返さないといけないと、言葉を探すたびに、その言葉が崩れて口に出せない。視界が、どんどんぼやけて、はっきりと見えなくなっていく。振り上げた拳が、力なく、せい君の胸を叩いた

2013-08-29 21:37:10
せい @seigo022_six

@rasenkiryu 「――遅れてごめん、りの。……ただいま」あの時言えなかった言葉。変わり果てた彼女の前で、一度は詰まってしまったあの言葉を、もう一度言おう。大丈夫。彼女も、俺も、何も変わってない。だから、一緒に。やり直していける。また最初から始められる。「結婚しよう、りの」

2013-08-29 21:48:21
りの @rasenkiryu

@seigo022_six 口の中に含んでしまえば、すぐに溶けて崩れてしまう、砂糖菓子のような、甘い夢を見ているのかもしれない。けれど、それが夢じゃないと、触れた手の平が教えてくれる繰り返し、見せられてきた現実の恐ろしさに脅えながら・・・りのは小さく、頷いた。

2013-08-29 21:51:02
せい @seigo022_six

@rasenkiryu ――そして、彼女のアパートを引き払い、二人でかつて住んでいた家へ戻ってきた。彼女の過去を清算し、もう二度と、彼女が自分の身を削らずに済むように。これから先、まだまだ問題は山積みだ。けれど、彼女と一緒なら。俺はどんな道だって歩んでいけると思う。 ~Fin~

2013-08-29 22:00:40