#今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

提督より遅れて神通が執務室に入ってくる。「誰かが零式水偵を置いていったみたいなんだ」「そ、そうですか。千代田さんか千歳さんじゃないでしょうか？」あからさまにうろたえる神通。「翼の裏に何か書いてあるな。『軽巡 神つ――」「て、提督ダメです！ 見ちゃダメぇ！」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

取り上げようとする神通からひょいと零式水偵を逃がす提督。「どうした神通」「だ、ダメなものはダメです！」んで取り合いになってるうちに零式水偵がぽろっと提督の手から滑り落ちて二人の目の前で床に落ちてスクラップに。「あ、あぁ……」崩れ落ちる神通。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「ボーキサイトを使い込んだのは、君だね」「はい……」やることがすべて裏目に出ておもいっきり凹む神通さん。「資源の横領には罰を与えなければならない」「どんな罰でも、受けます……」目をつぶってぷるぷる震える神通。ぺしっ「いたっ」「はい、おわり」「え、あの……」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

デコピンされた額をさすりながら困惑する神通。「今日はボーキサイトが足りないから航空母艦は出撃させないほうがいいな」窓から泊地を眺める提督。「それと燃料不足だから重巡も今日は演習だけだな。となると――」提督は神通の方を振り向く。「水雷戦隊、出撃せよ」「はいっ！」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

その後キラキラになった神通の指揮する水雷戦隊は戦艦を主力とする敵主力艦隊相手に奮戦し、旗艦の神通が中破するも夜戦で敵艦隊を殲滅させ、意気揚々と帰港したとかなんとか。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

なるほど、敵艦を沈めた数だけ提督にキスできるのか。いいんじゃないでしょうか #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「缶詰にも飽きたし、そろそろ魚が食べたいな」と言い出した提督のために何とか魚を調達しようとする神通さん。ふと三日月が持っている爆雷に気付く。「爆雷？　良いですよ」快く爆雷を貸し出す三日月。「えーいっ！」突如海に爆雷を投げ込む神通さん。爆死した熱帯魚が浮かんでくる　#今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「うーん……」台所に並んだカラフルな熱帯魚を前に途方に暮れる神通さん。「あらー、お魚？」「どうしたら良いものか分からなくて……」龍田がふらっとやって来た。「こうすれば良いのよ」龍田の持つ包丁が一閃！　熱帯魚は首を切り落とされ三昧におろされる！　イタマエ！ #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「やったぞ！ ついに我が基地にも戦艦がきたぞ！」喜びの声を上げる提督。「はぁ……」重巡ならともかく、戦艦が相手ではいくら近代化改修を重ねても勝てないことに気付き、柱の影で溜息をつく神通さん。扶桑と山城に挟まれて鼻の下を伸ばす提督を見て彼女は静かに涙を流した。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

執務室から扶桑姉妹が出てくると神通は慌てて隣の部屋に隠れた。二人の足音が遠ざかると、周りを伺ってから神通は部屋へと戻った。「姉さん？ どうしたの？」「なんでもない」那珂が心配そうに声をかけたが神通はそれを拒絶した。（……提督、私はもう不要なんですか？） #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

それでも、神通は秘書艦としての業務を止めるわけにはいかなかった。もし秘書艦としても役に立たないことが分かったら提督に捨てられてしまう。強迫観念が彼女の脆い心を蝕んでいった。「う、うぅ……」補給計画書にぽたぽたと涙が垂れた。「神通、気分が悪いのか？」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「なんでもありません」涙を拭い、歯を食いしばって神通は首を横に振った。「気分が悪いか？ 扶桑、扶桑はいるか？」「はい、提督」長い黒髪、巫女を思わせる赤と白の服装、駆逐艦の胴回りよりも大きな主砲――超弩級戦艦、扶桑だ。「神通と代わってくれ」「はい、分かりました」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

なんで、どうして？ 神通は扶桑と入れ違いに執務室を出ると何処に行くあても走りだした「神通お姉ちゃん？」途中遠征から戻ってきた駆逐艦が声をかけたが神通は振り返ることもなく通り過ぎた。よりにもよって提督は私の代わりにあの扶桑を選んだ。悔しさと悲しさが涙になって溢れた #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「よ、神通」「天龍さん……」何をするでもなく、浜辺に座り込んでいた神通に声をかけたのは天龍だった。「私、提督に捨てられちゃいました……」「ハァ？ 何言ってるんだ？」天龍は不思議そうに首を傾げた。「だって、私秘書艦をはずされて……」天龍は鼻を鳴らした。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「お前、右の魚雷発射管見てみろよ」「え？」言われるがままに装備を見てみると、魚雷発射管に亀裂が入っていた。「そのまま出撃してそこに食らってたら、轟沈してたかもしれないぞ」「……まさか」「提督、いっつもお前のこと見てるんだぜ？」「でも、わたし、そんな……」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「ほら、提督が待ってるぜ」天龍はにっと神通に笑ってみせた。「ありがとう、天龍さん」立ち上がった神通はスカートについた砂を払った。その表情にもう迷いはなかった。「行くのか？」「ちょっと、忘れ物を届けに」神通の手には提督の名が刺繍されたハンカチーフが握られている。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「あー、つっかれた！」天龍は大きく伸びをした。「これでいいのか？ 龍田」「やるじゃない天龍ちゃん」椰子の木影から姿を表した龍田はにこやかな表情だ。「なんでオレがこんなことしなきゃならないんだよ！」「だってぇー、あの二人って見ているこっちがやきもきするんですもの」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「提督っ！」ちょうど最後の確認の印を押し終わった提督は闖入者にすぐに気づいた。「神通……」肩で息をする彼女の右手に握られている白いものには見覚えがあった。「はぁ、はぁ……提督、忘れ物を、お持ちしました」提督は椅子から立ち上がると神通に歩み寄り、両肩に手を乗せた。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「提督、これをお返しに伺いました」提督が口を開く前に神通はポケットへハンカチーフをねじ込んだ。「神通、まえにえたいことがあると言ったね」「……はい」提督は大きく深呼吸して「すぅ……よし、言うぞ。一度しか言わない」「はい」神通はじっと提督を見つめた。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「私は……俺は君のことが好きだ！」真っ直ぐな言葉の砲弾が神通の心を撃ち抜いた。「あの、えと、提督……」神通は困惑した様子で提督を見上げる。提督から一歩引き、神通は頭を下げた。「ふつつか者ですが、どうかよろしくお願い致します」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「おめでとー！」「おめでとう！」「おめでとうございます」「おめでとにゃ」執務室にどっと艦娘たちが雪崩れ込んできた。電、三日月、天龍、多摩……ラバウル基地の全艦が揃っていた。「え、え……？」「お、オマエタチ、まさか……」提督の声が裏返った。彼の予感は的中していた。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「あまりにもやきもきするので、天龍ちゃんに一芝居うってもらったの」最後に執務室に入ってきた龍田がそう言った。「司令官、かっこよかったですよ！」「雷まで……」「神通姉さま、おめでとうございます！」「三日月……」駆逐艦たちは目を輝かせ、重巡たちも笑顔を浮かべている。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「この後は当然、夜戦よね！」執務室中に響く声で川内が煽った。「川内！」「姉さん！」提督は狼狽え、神通は顔を赤らめる。「提督ー？ 神通姉さんを泣かせたら那珂ちゃんが許しませんよー？」一番喜んでいるのは実の姉妹の川内と那珂だった。「お、お前らなぁ……」 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「そのくらいにしなさい」龍田がエスカレートする艦娘たちに釘を差した。「神通さん、私達は休憩させていただきますので、どうぞごゆっくり」「えー、もっと見てたい！」「ダ・メ」興味津々の駆逐艦たちを龍田がひと睨みすると執務室から蜘蛛の子を散らすように艦娘が出て行った。 #今日の神通さん

CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

西日の差す執務室に二人だけ残された提督と神通はゆっくりと距離を詰め、二つの影が重なった。 #今日の神通さん