稲川淳二のつぶやき怪談　2013年7月30日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それは母親の顔だった。ちゃんと口元のホクロもある。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

幼い女の子が、枕にお母さんの顔をかいて、話しかけていたのか、と思うと、何ともいじらしくて、胸の辺りが熱くなった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（ん！？）枕のほころびを見付けたんで、縫ってやろうと抱え上げた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、（？？）ザワッとした妙な手触りを感じて、裏返して見ると、びっしりと細かな毛が付いている・・・

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（髪の毛だろうか？　何でこんなものが、くっついてるんだろう？）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

払い落そうとしても一向に取れない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

気持ち悪いんで、つまんで抜こうとすると・・・これが抜けない・・・・

稲川淳二 @Junji_Inagawa

よーく見ると、それは枕の中から、布を突き抜けて出ている、髪の毛の先だった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（まさか・・・、枕の中に髪の毛が入ってるんだろうか？　もしや、抗癌剤で抜け落ちた彼女の髪の毛じゃ・・・）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

とも思ったが、それはありえない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

彼女は一度もこの家に帰っていない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

わずかに突き出た毛の先をつかんで、力を入れて、グッと引っ張ると、（ブチッ）と、気味の悪い音を立てて抜けた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、同時に布がひっつれて、枕にかかれた顔がグニャッと痛そうに歪んだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

一瞬、それが生きているように見えたんで、驚いて放り出してしまった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうして、また日が過ぎていった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そんなある晩、女の子の部屋から、誰かとはしゃいでいるような、楽しそうな笑い声がいつまでもしてるんで、Ａ子さんが、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「もう遅いから寝なさい」と声をかけると、「ハーイ！」と返事があって、静かになった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうして時間が過ぎて、家中が寝静まった夜中の事、何かの気配で、Ａ子さんが目を覚ました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（・・・何だろう？　妙な胸騒ぎがする）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

気になって、寝床から起き上がると、そっと廊下に出て、暗がりの中で辺りをうかがうと、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（？）思い過しだろうか。女の子の部屋からかすかな気配がしているように感じられた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（・・・眠れないでいるんだろうか・・・蒲団からのり出して寝てやしないだろうか・・・）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

様子を確かめようと、襖を少し開けて覗いてみると、就寝用の小さな明かりのついた、薄暗い部屋の中で、女の子はぐっすりと眠っている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、それが何か変な感じがしたんで近寄って見ると、（ん？）蒲団の中に頭がふたつ並んでる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ひとつは幼い女の子で、もう一方のうつ伏せの頭はどういう事なんだろうと、よーく見ると、（ううっ！）一瞬息を呑んだ。