スザ/クの半/生

スザル/ルを根底に、スザ/クが普通の人生を歩む?パラレル。最期まであるのでご注意を。9/26ルルーシュ視点を少し追記。
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けぼ @kbobo01

俺にはスザクを幸せにすることはできないかもしれない。与えられるものは自分自身しかない。それも、スザクがずっと求めてくれると言う確証はまったくないもので。昨日の晩、スザクはこの部屋に泊まった。体を繋げたあと手を繋ぎ、ずっとそばにいてねと、やわらかく、少し情けなく笑った。

2013-09-26 12:22:00
けぼ @kbobo01

時計の針が三時を差す。それをぼんやり眺め、あることに気がついた。答えはもう出ている。スザクの父親にはっきりとスザクを貰うと言えなかったところで、自分の答えは出ていたのだと。二人で逃げた先の未来で、自分達の関係が最悪な展開を迎えてしまったら。

2013-09-26 12:25:35
けぼ @kbobo01

スザクの幸福を誰よりも願っていると思いながら、それを与えることができないのであれば――俺は身を引くべきだ。スザクの父親の方が正しい。その生き方には普遍的な幸福がついてくる。俺と行くよりももっと、得られるものは多い。視界が僅かに滲む。そんな御託よりも、素直に自信がないといえばいい。

2013-09-26 12:30:08
けぼ @kbobo01

スザクと別れることは身を切るよりも辛いことではあるけれど、仕方がないことだったのだと思った。通じると思わなかった想いが通じただけでもよかった。一緒に過ごした時間があって幸せだったと、スザクにもそう思ってほしい。綺麗な思い出は色あせることがないのだから。

2013-09-26 12:35:20
けぼ @kbobo01

目の前には半分泣いたスザクがいる。約束の時間になって約束の場所へ行き、俺は別れを告げた。一緒に行くことはできない、お前は俺と別れ結婚するべきだと。それを聞くとスザクは最初笑い飛ばし、次に怒り、考えを変えない俺に困惑した。そして今、泣き落しに掛かっている。

2013-09-26 21:25:13
けぼ @kbobo01

主張は一貫して変わらなかった。スザクは俺の事が好きだから一緒に逃げて遠くへ行き、そこで二人で暮らしたいと。首を横に振る。それではお前は幸せになれない。無駄な言い訳をせず、ただ別れたいのだと繰り返す。遠くへ行くのは自分一人でいい。スザクと別れた後は独りそっと姿を消そうと思っていた。

2013-09-26 21:28:57
けぼ @kbobo01

嫌だと言って子供のように泣き始めてしまったスザクに少し不安を覚える。こんなことでこいつは大丈夫なのだろうか。この先会社を背負い、家族を支えて行くことができるのだろうか。泣くなと言ってもスザクの涙は止まらない。泣きたいのはこっちの方だと言うのに。

2013-09-26 21:32:15
けぼ @kbobo01

スザクを宥める言葉を探した。だけれどいい言葉は出てこない。頭を撫ぜで宥めたらいいのだろうか。しかし、それは今の状況には合っていない。ふと口から、だったらこのまま逃げようかなんて言葉がついて出そうになる。心は簡単に揺らぐ。人は元来弱い生き物だ。そしてスザクは、きっと俺より弱い。

2013-09-26 21:36:32
けぼ @kbobo01

こんな泣き虫が自分の手でしっかりと幸福を掴み取れるのかどうか。俺はそれを見届けなければならないのではないだろうか。自分では与えられないと思ったものを他人に与えられる姿を見るのは辛いだろうけれど、それをこの目で確認しなければ。別れを選んだ自分が惨めになる。

2013-09-26 21:39:38
けぼ @kbobo01

果たせるかどうかわからない約束をするのは好きではない。そしてその約束により、自分がどれだけ辛い思いをするのかも容易に想像ができた。好きな相手が自分ではない相手と寄り添い、子を成し、幸福な道を行く。自分の場所だと思っていたところに他人が収まり、俺はもうそこに戻ることができない。

2013-09-26 21:43:20
けぼ @kbobo01

いつかどこかでそれは俺のものだったのだと、そう叫んでしまう可能性だってある。返してくれと。俺はスザクが好きで、スザクも俺を想っていたのだと。それを言わない自信があるかどうか、正直わからなかった。それでも、ボロボロと泣くスザクに言わずにはおれなくなった。

2013-09-26 21:47:02
けぼ @kbobo01

ずっとお前のそばにいる。それは友人としてだけれど、ずっとそばにいて、お前が困った時や苦しいと思った時には必ず助ける。力になる。言うとスザクは更に泣いた。友人なんて関係は求めていないと、泣く。だけれど俺はその言葉を繰り返し、スザクを家に帰した。

2013-09-26 21:51:07
けぼ @kbobo01

それからスザクからは連絡が来ることはなく、家に結婚式の招待状が一通届いた。新郎の名前は枢木スザク。ああ正スザクはしい道を踏み出せたのだと、少し安心した。そして、少し泣いた。

2013-09-26 21:53:49
けぼ @kbobo01

気慣れないスーツに袖を通して向かった会場には人があふれていた。大きな家と家の婚姻なのだ。その分招待客は多い。人の波を掻きわけ新郎の控室を目指す。その手前でスザクの父親とすれ違い、静かに目礼された。控室の扉を開けると中にはスザクがただ一人でぼんやりと椅子に座っていた。

2013-09-26 22:01:08
けぼ @kbobo01

黒紋付きの羽織袴に身を包んだスザクはなんとも様になっていた。素直にこう言う衣装も似合うと、胸が高鳴る。他人と結婚する新郎に胸をときめかせている自分が滑稽に思えたけれど、惚れているのだから仕方ないと思うことにした。焦点を結んでいなかった視線がこちらを向く。驚きに眼が開かれる。

2013-09-26 22:05:29
けぼ @kbobo01

おめでとう、と言葉を掛けるときつい視線が投げられた。もっといい顔しろよ、今日の主役だろう。そう言うとスザクは顔を歪め、落胆の二文字を貼りつける。どこかの映画みたいにこのままスザクを攫って行こうか。そんな考えがふと湧いてくる。それだけで自分の口許が笑みを描くのがわかった。

2013-09-26 22:08:37
けぼ @kbobo01

スザクを攫いはしない。そばに寄り、近づくとその考えは決定的なものになった。スザクはこれから色々なものを手に入れて行く。俺が与えられない、俺が手にできないものばかり。俺はその姿をそばでしかと見届ける。今も涙を浮かべるこの泣き虫が幸せになる姿を。

2013-09-26 22:12:28
けぼ @kbobo01

お前が花嫁だったらベールを持ち上げ、厳粛な感じになったかもな、と思いながら顔を近づけた。触れた唇は少し乾燥して硬かった。これが最後だ。俺はお前が好きだから、何があっても想っている。だから、花嫁よりも先に誓いの口付けを交わす。ずっとそばにいるという、誓いのしるし。

2013-09-26 22:15:40
けぼ @kbobo01

健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?  スザクが今から聞く言葉。俺の答えは返した。

2013-09-26 22:18:17
けぼ @kbobo01

幸せになれよ、とできる限りの一番いい笑顔でそう言うと、控室をあとにした。

2013-09-26 22:19:20
けぼ @kbobo01

こんな感じで!TLお邪魔しました…><

2013-09-26 22:20:01