水町勇一郎『労働法入門』まとめ

水町勇一郎『労働法入門』(2011)まとめ
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H.Takano @midwhite

労働問題には2つの側面がある。1つは19世紀後半から続く側面であり、労働者への集団的な保護が弱まり、個人の自由の重視と市場競争の激化が進むと、過酷な労働条件や雇用の不安定さを受け入れざるを得ない状況に置かれるというものである。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-07 16:25:19
H.Takano @midwhite

もう1つは今日の社会において新たに現れた問題である。かつての均質的な集団としての労働者は、今日ではポスト工業化や情報化の中で多様化・個別化し、旧来の工場労働者モデルを適用しづらい存在となり、20世紀型の経済政策が効果を持ちづらくなっている。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-07 16:25:57
H.Takano @midwhite

日本の労働関係を巡る法源は、強行法規としての法律、規範的効力としての労働協約、最低基準効としての就業規則、そして明示的・黙示的な合意を含む労働契約の4種類あり、これらに根拠付けられた権利や義務のみが法的な請求の対象となる。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-07 20:48:42
H.Takano @midwhite

労働法とはこれら4つの法源に支えられた権利と義務の体系であり、労働法を巡る問題はこれらによって権利や義務として構成できるかにかかってくる。労働法を体系的に理解するためには、まず何よりこれらの法源からなる労働法の枠組みを把握することから始まる。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-07 20:55:54
H.Takano @midwhite

労働条件を決定する際に重要な法源は、アメリカでは個別の交渉を経て締結される労働契約、フランスやドイツでは労働組合との団体交渉により締結される労働協約だが、日本では就業規則である。日本では殆ど全ての労働条件が記載され、それを包括的に受け入れる。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-07 21:10:13
H.Takano @midwhite

日本で労働条件を決定する法源として就業規則が重要であることの背景には2つの理由がある。1つは集団法としての労働協約の不備により、就業規則でないと労働者全体の労働条件を変更できないこと。もう1つは長期雇用慣行と対になった柔軟性の要請である。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-07 21:14:10
H.Takano @midwhite

アメリカでは随意雇用原則が存在し、差別禁止法など法令に違反しない限り、いつでも理由なく解雇できる。フランスやドイツなどヨーロッパ諸国では解雇に制限を加える法規制が発展しつつあるものの、経営上の理由による解雇の経営判断は会社の判断が尊重される。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-07 21:35:58
H.Takano @midwhite

労働契約法16条によると、解雇は①客観的に合理的な理由を欠き、②社会通念上相当すると認められない場合には、権利の濫用として無効となる。つまり労働者を解雇する場合には、客観的合理性と社会的相当性が求められる。これが解雇権濫用法理である。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-07 21:36:47
H.Takano @midwhite

解雇の合理的理由とは、①労働者の能力や適格性の低下、②労働者による職場の規律を乱す行為、③経営上の必要性の3種類あり、同時に求められる社会的相当性も非常に厳しい。また権利濫用とされた場合の法的救済が解雇無効と賃金支払いと重い点も特徴的である。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-07 21:56:12
H.Takano @midwhite

経営上の理由による解雇は整理解雇と呼ばれ、整理解雇法理という特別な法理がある。これは、①人員削減の必要性、②解雇回避の努力、③人選の合理性、手続きの妥当性という4つの観点から、解雇の合理性と相当性を具体的に判断するというものである。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-09 11:34:10
H.Takano @midwhite

日本の整理解雇法理は極めて厳格であり、解雇を殆ど不可能にしていると言われるが、実際には個別の状況に応じて柔軟に判断されている。実際の裁判例では、解雇という選択そのものの合理性が疑われるケースでなければ、結論として解雇を有効とした例も多い。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-09 11:43:30
H.Takano @midwhite

解雇権濫用法理の他にも解雇規制がある。例えば、使用者は解雇の30日以上前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わねばならない。また、労働者が労働災害で休業する期間とその後の30日間や、産前産後休業の期間とその後の30日間は解雇できない。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-09 12:05:38
H.Takano @midwhite

労働者側の一方的な解約を辞職と言い、労働者と使用者の合意による解約を合意解約と言う。辞職は2週間前に申し出れば可能であり、合意解約は予告期間を置くことも必要ないが、労働者の人格を傷つける態様で退職勧奨が行われた場合には、損害賠償を請求できる。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-09 12:17:48
H.Takano @midwhite

使用者は解雇権濫用法理による厳しい規制を避けるため、労働者に様々な圧力をかけて辞職や合意解約に追い込もうとする例が後を絶たない。この場合、辞職や合意解約が労働者の真意なのか、或いは退職を求める過程での行き過ぎた言動などが問題となりうる。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-09 12:27:00
H.Takano @midwhite

有期雇用の期間は上限が3年だが、有期契約を何度も更新して労働関係が長く継続することも多い。会社の判断次第で労働者の法的地位が不安定化することを防ぐべく、労働者が継続を期待するのが合理的であると認められる場合には解雇権濫用法理が類推適用される。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-09 13:02:10
H.Takano @midwhite

使用者は人事考課に広い裁量権を持つが、①国籍・信条・社会的身分、組合加入・組合活動、性別など法律上禁止された事由を考慮した場合、②裁量権の濫用に当たる場合、③所定の評価基準や期間以外を対象とした場合、人事考課を違法として損害賠償を請求できる。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-09 13:40:57
H.Takano @midwhite

日本の人事の特徴は3点ある。第一に使用者が主導で規則を運用するなど、人事権の強さである。これは長期雇用慣行の代償とも言える。正社員として雇用すると解雇という手段で調整が難しい反面、日本企業は広範な人事権を行使して柔軟性や継続性を確保してきた。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-09 14:05:58
H.Takano @midwhite

第二に、人事権の行使に対して判例法理が発展し、ルールの明確化や内容の公正化が促されてきた。第三に、このような判例法理等があるにも関わらず労働者や企業、特に中小企業に浸透しておらず、裁判など法的な紛争解決手段が余り利用されていない問題がある。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-09 14:14:59
H.Takano @midwhite

労働基準法7条によれば、労働者が労働時間中に選挙権などの公民権を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合には、これを拒んではならないが、公民権の行使や公職の執行に妨げがない限り、労働者が求めた時刻を変更することはできる。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-10 16:27:52
H.Takano @midwhite

労働者が企業に雇用され、6ヶ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合、10労働日の年休の権利が発生する。その後、勤続年数が長くなるに従って年休日は加算される。年休が消化されなかった場合、1年に限り繰越が認められている。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-11 12:04:12
H.Takano @midwhite

労働基準法は妊娠した女性に対し、出産予定日前の6週間、出産後の8週間について、産前産後休業を取得する権利を保障している。産前休業は女性の請求により認められる任意的休業であり、産後休業は請求の有無に関わらず就業が禁止される強制的休業である。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-11 12:53:58
H.Takano @midwhite

ただし労働基準法65条1項・2項によれば、産後7~8週目は医師が支障なしと認めた場合、女性の請求により就業可能とされている。また同法68条は、女性が生理日で就業が著しく困難な場合に休暇を取得する権利を認めている。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-11 12:57:45
H.Takano @midwhite

育児介護休業法は、満1歳未満の子を養育する労働者に対し、男女を問わず、子が満1歳に達するまで育児休業を取得する権利を認めている。また同法は3歳未満の子を養育する労働者について、短時間勤務制度および所定時間外労働の免除の制度化を義務付けている。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-11 13:03:11
H.Takano @midwhite

また育児介護休業法は、小学校入学前の子を養育する労働者に対し、男女を問わず、1年度に5労働日を限度として、傷病にかかった子の世話または疾病の予防を図るために必要な子の世話をするための看護休暇を取得する権利を認めている。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-11 13:06:39
H.Takano @midwhite

育児介護休業法は、要介護状態の家族を持つ労働者に対し、男女を問わず、通算93日の範囲内で介護休業を取得する権利を認めている。また同法は、1年度に5労働日を限度として、家族の世話を行うための介護休暇を取得する権利を認めている。(水町勇一郎『労働法入門』2011)

2013-09-11 13:11:25