【twitter小説】暗中模索#2【ファンタジー】

減衰世界 @decay_world

――暗中模索#2.3

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　ミクロメガスはすぐさま帰還を提案した。ポケットからカードの束を取り出すと、一枚一枚床に並べていく。それは放射状に二人を取り囲んでいた。彼はメルヴィに非常に危ないと言った。だがメルヴィにはそれが何なのかいまだに飲みこめずにいた。 54

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「ミクロメガス、何が起こったの……？　説明してよ」 「この空間はベルベンダインの領域のはずだ。だが……いま誰かに干渉を受けている。ベルベンダインほどの強力な神に干渉できるのはそう多くない」 55

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　赤いチョークをポケットから取り出したミクロメガスは、それでカードとカードを線で繋ぎ複雑な文様を床に描いていく。カードに書かれた不思議な文字がそのたびに赤く明滅した。 「干渉って……何で今に限って」 56

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「僕たちはいま非常に危険な状態にある……ベルベンダインの心に侵入するため、心の防壁を取りはらっているんだ。彼女の領域にいるなら別に危険は無いが、その領域が犯されている」 57

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「混沌神に干渉できるのは混沌神だけだ。おそらく……イミドア神。恐ろしい神だ。力を失ったはずなのに、また復活したのかもしれない」 　その名を聞くと、メルヴィは背筋が凍る思いがする。 58

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　イミドア神は有名な神だ。男神でも女神でもなく、姿は刻々と変化し、その思考はかき混ぜた卵のようにめちゃくちゃだ。この世に災いをもたらすという……それ以上に、メルヴィは記憶の奥に何か引っかかる物があった。それが何かまでは分からないが。 59

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　ふと、メルヴィは誰かの視線を感じて天井を見上げる。ミクロメガスは魔法文様を描くのに忙しく、それに気づかなかった。メルヴィは見上げた視線の先で……それと目が合った。血まみれの少女が、天井がらぶら下がって立っているのだ。 60

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　メルヴィは息がとまる思いがした。全身の神経が粟立ち脳が危険信号を発する。血まみれの少女は口が裂けそうなほど笑いながらじっとメルヴィを見つめていた。メルヴィは心が覗かれる感触を感じた。心がめちゃくちゃに掻き乱されそうな、渦のような感触。 61

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　次の瞬間、メルヴィに心に電流が走った。目から火花が散り、血まみれの少女は少し嫌な顔をする。次々とメルヴィの身体から火花が散り、七色の光の粒子を零した。ようやくミクロメガスが気づき、メルヴィを見上げる。 62

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　メルヴィの身体は硝子が砕け散るように粉々の破片になり、破片は火花を散らして消えていったのだった。 63

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――暗中模索#2　（了）　#3へ続く