リレー小説１

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 秋の綺麗な青空にライスシャワーが飛び散った。リヴァルがやっと会長を射とめたと言う式に呼ばれ、久しぶりの面子とそれを祝っていた。シャワーの中を行く二人とも幸せそうで、見ているこちらの頬も弛む。端まで歩いた会長がこちらを向く。投げられたブーケ。

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 隣にいたシャーリーの手の中へと落ちる。興奮する彼女によかったなと囁けば、嬉しそうな視線が返される。新郎と新婦の姿が見えなくなって、この後は二次会かと少し重いため息を吐き出す。「二次会にはスザクも来るから」と言ったリヴァルの声が頭の中でリフレインしていた。

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 緊張している。驚くくらいに。友人から数年ぶりに届いたメールは結婚式二次会の招待だった。リヴァルの結婚、それも相手がずっと片想いを続けていた人だとなれば祝わない理由がない。だけど最初は躊躇った。その場所には勿論、ルルーシュが居る。居ない筈がない。

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 顔を合わせるのは…と思った。けど、あれから何年も経った。寧ろこんな機会だからこそと結論付けて首を縦に振った。広い会場を見渡して、真っ先に見付けたのは頭一つ飛び出した金髪の三つ編み頭。向こうも僕を見付けて両手を振っている。気の置けない友人を最初に見付けて安堵する。

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 二次会の会場は思ったよりも広くて、集まる人数の多さに二人の顔の広さが知れた。人混み酔いの所為か僅かな頭痛を感じる。いや、その人混みから誰かの姿を探そうとしている所為か。会いたくない、と思っている筈なのに。本当は会いたいのだろうか。→

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 立食形式の二次会で、グラスを片手に独り立ち竦んでいる事にむなしさを覚え知り合いを探す。女性陣はデザートに夢中だ。誰か、と思った視線の先に目立つ金髪を見つけた。ジノか。あいつの傍にいればなんとなく時間を過ごせるだろう。そう思って人混みを分け目印に近づいた。

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 ジノの悪癖は相変わらずで、人の肩に腕を回して圧し掛かってくる。もう最近は更生するのも諦めたけれど、今は落ち着かない気持ちに蓋をされているみたいで有難かった。さっきから誰と何を話しても上の空で、視線が周囲を彷徨ってしまっているのが自分でも分かる。　→

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 だけど流石に人が多い。主役の新郎新婦への挨拶だって碌に出来ていない状態で、人一人を探すのは少し難しいかも──と、思っていた矢先だった。ジノがぱっと腕を上げて「せんぱーい！」と呼ぶ。先輩なんて、ジノがそう呼ぶ相手は一人しかいないから。心臓が大きく音を立てる。

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 「せんぱーい！」向かっていた俺をジノが見つける。慣れた顔に声。ほっとため息を吐き出し、そう言えばジノに会うのも久しぶりだった事を思い出した。あの時から、必要のない限りは意識して会わないようにしてきた仲間だ。喧嘩したんだなんて周りには言ってきたけれど、→

けぼ @kbobo01

@supercreek_ あいつの事を話題に出されるのが嫌で避けてきた。ジノがこちらに上げた手とは別の手を誰かの肩に回している。あの癖は健在か、と笑みが洩れると同時に顔が凍りついた。茶色の癖のある髪が見える。ああ、来たのか――。速くなった鼓動に知らない振りをして、ジノに声を掛けた

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 「ジノ」「先輩、久し振り！」交わされる挨拶が遠くに感じる。久々に聞いたその声に体が強張って、さっきまであんなに探していた相手なのにいざとなると視線が上げられない。口元だけが笑おうと歪に持ち上がる。自分も何か言わないと、気持ちばかりが焦って肝心の頭が働かなくて。→

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 肩に回る腕に力が入った。ジノに視線を送るとにやりと笑う。僕達は喧嘩した事になっていて、頻りに仲直りしろと言われていたのを思い出す。きっと今日がその機会だと思ってるんだろう。事実は違うけど有難い助け舟だ。視線を持ち上げる。数年越しに、漸く真っ直ぐ捉える事が出来た。

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 「久しぶりだな、スザクも」いつもと変わらない声を出す事ができた。グラスを持つ手も震えていない。なんだ、簡単な事じゃないか。スザクはにこやかに笑っているしで、自分一人が意識し過ぎだったのかと少しだけばつが悪くなる。そうだ、何も構えることはない。

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 僕達の関係は終わってて、あれから何年も経った。今、目の前のルルーシュも笑ってくれている。大丈夫、もう随分昔に割り切れてる。そう思ったらすっと気持ちが軽くなって、「ルルーシュ、変わらないね」なんて。言葉が自然と口から零れた。

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 「変わらないのはお前の方だろう。相変わらずの童顔で」「酷な、気にしてるのに」スザクが少し拗ねて見せる。「もうすぐ三十にもなるんだ、少しは貫禄付けろよ」「まだ少し先の話でしょ」そんな軽口を叩くと傍にいたジノ口から小さなほっとしたため息が洩れ出たのわかった。

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 聞こえた溜息に揃って視線がジノに向かった。ジノは少しだけ目を見開いてから僕達を交互に見比べて「私は２人が並んでる方がやっぱり好きだな」と屈託なく笑うから、顔が少し引き攣る。ルルーシュを窺ったら向こうも少し複雑な顔をしてて、余計な事言うなとジノの脇腹を肘で小突く。

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 俺の攻撃などお構いなしに「あ、カレンだ」と遠目でカレンを見つけたジノがそわっと体を揺らす。そして視線を再び俺達の方へと戻すと、「もう喧嘩するなよ」と爽やかに言いそちらに行ってしまう。残されたスザクと二人、少し気不味い笑みを交わした。

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 ジノの行動が意図的だとは思わないけれど、ルルーシュと二人きり。話は出来なくても、久し振りに顔が見れたらなって考えだっただけに予想外だ。ルルーシュも笑ってはいるけれど少し気まずそうにグラスを揺らしている。その中身が大分減っているのに気付いて「何か飲む？」と訊いた。

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 「え、あ、ああ。ワインでも飲もうかな」俺が言うとスザクが持っていたグラスをさらっと奪う。「僕貰ってくるよ」そしてドリンクを貰いに行ってしまう。後ろ姿を見ながら、思わずこんなに気の回る奴だったか？と首を傾げたくなり、そう思う自分に苦笑が洩れた。

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 グラスを２つ手にしてルルーシュの元へ戻り、赤と白それぞれ別の色が注がれたグラスを差し出す。「どっちがいいか、聞くの忘れてた」と言えば呆れたように笑われた。「気が利くようになったな」「成長しただろ？」「でも、抜けてる」「…よく言われます」こんなやり取りが懐かしい。

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 交わす会話に懐かしさが込み上げてくる。混じる痛みには気づかない振りをして、スザクの左手に握られていた赤ワインを受け取った。「…元気そうで何よりだ」「うん、頑丈にできてるから」「体力馬鹿は健在か」そんな事を言いながらどこまで踏み込んだものかと思考を巡らせる

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 選ばれなかった白ワインを飲んだらじわりと喉が熱くなる。「ルルーシュは、今何してるの？」プライベートではなく、仕事の質問。この辺りなら当たり障りない友達同士の会話かなと、そう思って尋ねてみる。でも本当はずっと気になってた事だった。僕と離れてから、何をしていたのか。

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 「…今」突然スザクの方から話を振られ、一瞬間を作ってしまった。仕事の話だよな、と慌ててなんでもないように答える。「医療機器の開発に携わっている。企業で、だがな。お前はどうしているんだ？」

ヨシ @supercreek_

@kbobo01 「医療機器の開発…」反芻してみて、相変わらず難しそうな事をしてるんだなと思った。学生の頃から思っていたけど、僕とはまるで違う世界にルルーシュはいる。「僕は卒業してからずっとドラッグストアで働いてて…今は一応店長を任されてるよ」

けぼ @kbobo01

@supercreek_ 「ドラッグストア？！」思わず大きな声が出る。意外な選択肢だった。「そんなに驚くことかな」苦笑するスザクに慌てていや、と取りなすけれど。「店長だなんてすごいじゃないか。立派だ」言いながらドラッグストアで働くスザクを想像した。似合うんだか似合わないんだか。