ホワット・ア・ホリブル・ナイト・トゥ・ハヴ・ア・カラテ #6

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヤバイ、きっとヤバイ、直感で分かる……後ろから……何か…来るのか?」エーリアスは唇を紫色に変色させて体を震わせた。体温が失われてゆく。「後ろを振り返るな」ドラゴン・ニンジャはまず彼女に、次いで何者かに、断固たる口調で言った。「死者よ、それは私のものだ。いずれ返してもらう」 25

2013-09-30 01:19:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガゴゴゴン……!前方で突如回廊がスライドし、回転し、マグロ冷凍庫が出現して、迷宮が表情を変える……!それは本来このツキジ・ダンジョンに備わった機構であるが、今回ばかりは、何者かが失われしツキジ制御マザーコンピューターを動かし、彼女らの行く手を阻もうとしているかのようだった! 26

2013-09-30 01:25:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ユカノ=サン……ヤバイぜ……どうやって脱出……」「大丈夫、私はドラゴン・ニンジャですよ」ユカノは怯え切ったエーリアスを柔らかな言葉で勇気づけてから、己のニンジャ嗅覚を研ぎ澄ます。フーリンカザン。薬物煙草の吸殻が道しるべとなる。それは江戸時代に失われたリアルニンジャの知恵! 27

2013-09-30 01:29:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイヤアアアーッ!」ドラゴン・ニンジャは己のカラテを振り絞り、暗黒地下迷宮を駆け抜けた。エーリアスは超自然の冷気が引き潮めいて遠ざかってゆくのを、そしてドラゴン・ニンジャの体温を感じ、静かに眠りに落ちる。かくして彼女らはヨミ・ニンジャの恐るべきテリトリーから脱したのだ。 28

2013-09-30 01:37:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((リー先生は生き残っただろうか……)))。ドラゴン・ニンジャは懐の黄金星座版の感触を確かめながら、あの希有なモータルの身を案じた。彼ならば、あの水晶オーパーツの科学的動作機構を解明できるかもしれないからだ。そうなれば、未だ謎に包まれしオヒガンへの扉が開かれる日も近い。 29

2013-09-30 01:44:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女は己の目的のために動く。彼女はINWの存続を企図していたのだ。だが、あの水晶を一時的にでも託したのは、果たして正しかったのか?答えはいずれ出るだろう。生死を賭けたカラテの中で。あるいはマッポーカリプスの最終戦争の中で!(((今はまず、岡山県へ!そしてキョート城へ!))) 30

2013-09-30 01:52:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

中央研究室はしばし、死の静寂に包まれていた。音を放つのはただ、焦げ付きバチバチと爆ぜる大型コイルの残骸のみ。連鎖爆発を生き残ったUNIX群が制御システムの自律回復を行い、立ちこめていた煙が排気されてゆく。「ゲホッ!ゲホーッ!」リー先生は煤まみれで立ち上がり、眼鏡を外した。 31

2013-09-30 02:03:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フブキ……君…?」リー先生はそれを見た。青みがかった灰色の肌になったフブキ・ナハタが、完全に生前の姿で、INW装置の近くで浮遊していた。浮遊……そう、浮遊である!「ネガティブ・カラテの力か!作品ナンバー31番スペクター=サンに酷似!」リー先生はふらふらと歩いて接近する。 32

2013-09-30 02:13:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フ…フブキ=サン…美的!リー先生、これは幻ではなかったのですね!災厄は去った!」ラヴェジャーは歓喜の表情で涙を流した!リー先生が叫ぶ!「イヒヒーッ!素晴らしい!だが問題は知性だ!自我だ!スペクター=サンは残念だった!君は……君はどうなんだ!フブキ君!作品ナンバー49番!」 33

2013-09-30 02:21:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その声を聞き、フブキは我に帰ったかのように周囲を見渡す!輪郭が僅かに揺らぎ、水に溶かされた墨めいて不確かになる。その胸の奥には水晶が浮かび、彼女の肉体とソウルを辛うじて安定化させていた。「アーン!リー先生!いけませんわ!」フブキは自らの全裸に気づき、恥じらうように身をよじる!34

2013-09-30 02:26:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

するとどうだ!エーテル体めいた白衣ニンジャ装束が精製され、生前の如く彼女の体を覆ったではないか!「素晴らしい!記念碑的作品だ!」リー先生は両手を広げ甲高い声で笑う!「リー先生!」フブキが空中を滑るように接近!……だが、彼女はリー先生に触れることなく、彼の肉体を通過したのだ。 35

2013-09-30 02:33:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アーッ!」リー先生は無慈悲なるカラテドレインを受け、その場に卒倒!「リ!リー先生!リー先生!?」フブキは困惑する!「おお、おお、何たる悲劇だ!何たる夜だ!」ラヴェジャーは絶望的な眩暈とともにその場に頽れ、ブッダを呪った! 36

2013-09-30 02:40:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああー、リー先生!確かに永遠に助手を務めたいと、カラテがあればーと、誓いましたわー!」フブキは額を押さえ、苦悩の中で踊るようにラボ内を旋回浮遊する。あたかも吸血鬼の気配を感じた蝋燭の炎が身じろぎするかの如く、彼女の幽体に通過されたUNIXの01画面に不吉なノイズが走った。 37

2013-09-30 02:45:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああ、この胸の空虚ー!こんな残酷な結末が待って、いるだーなんて!」「おお、おお!その美しい指先が!柔らかな唇が!豊満な胸が触れる事は、もう無いのです!」執事は涙を流しながらリー先生を抱えた。「カラテをー」「呪いを」「授かーるにはー」「何と恐るべき」「「戦慄すべき夜ー!」」 38

2013-09-30 02:50:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

破損していたブレーカーが落ち、断末魔めいて火花が散る。照明が完全に死に絶えた。暗闇の中、フォーティーナインがユーレイめいて朧げに発光する。「……リー先生、でももう大丈夫。このツキジに二度と敵は忍び込ませませんわ。私がお守りいたします。先生、永遠にこのダンジョンで一緒に……」 39

2013-09-30 02:56:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

次の瞬間、INWラボの制御UNIXに超自然的なノイズが走り、電子制御されていた数十カ所の隔壁ドアやゴシック様式鉄格子が、一斉に閉じた。 40

2013-09-30 02:59:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ホワット・ア・ホリブル・ナイト・トゥ・ハヴ・ア・カラテ】終わり

2013-09-30 03:01:03