悪い男に騙される山城【最終章其ノ惨『追』】
@harunas_ward さぁいくぜ!榛名の指示を最優先! どうせ規律違反だ、私も現場で指示を出す! 一掃後榛名の援護へ回るぜ! 全軍、出撃ぃぃぃ!
2013-10-15 22:49:52@harunas_ward 深海棲艦妨害部隊!作戦は各々の判断に任せる 深入りはしないように あくまで我々の目的は妨害だ 全員無理はしないのように
2013-10-15 22:51:44@harunas_ward 了解、全艦出撃。目標、進路上の深海棲艦。 他の艦隊と協力し、制海権を奪取!! 全力で榛名たちを支援しろ!
2013-10-15 22:53:10@harunas_ward 了解! 第1艦隊諸君、今作戦の邪魔になる深海棲艦を一艦残らず殲滅するぞ!! 見敵必殺を心がけろ! 一発たりとも榛名達に届かせるな!
2013-10-15 22:55:18…。 瑞雲が告げる戦闘の気配に、彼の膝に乗せていた顔を上げる。 「来たみたいだな。そうでなくっちゃ」 彼が私の表情から状況を察して立ち上がる。遅れて私も立ち上がり、彼の隣に並び、まだ姿は見えない敵の方角を向く。 「さて、山城。気分はどうだ?」 …。 頭が、痛いです。
2013-10-15 23:12:43どこを向いても自然に視界に入る空の色は、いつの間にか灰色の暗雲の数を増やし、あれだけ明るかったというのに今では薄暗い。 海もそれに呼応して、波を徐々に荒げている。 「痛いか。それな、榛名を殺せば納まるから。頑張れよ」 はい。 最初からそのつもりです。
2013-10-15 23:16:42突如海面を割って顔を出した深海棲艦の一隻を、そちらへ一瞥もくれずに砲だけ向けて沈める。腐った金属のひしゃげる悲鳴に、頭痛が少し和らぐ。 まだ。まだ痛い。 早く。早く来て榛名。 私は、貴女を殺したいの。
2013-10-15 23:19:24彼が操舵席に積まれている無線機に手を伸ばし、いくつか並ぶツマミを順に捻っていく。やがて、けたたましい戦闘音がノイズを多大に纏って流れる。 彼は頷き、送信ボタンを押す。 「メーデーメーデー、愛しの榛名? 聞こえてる? 聞こえてるね。 はいはい。 山城から言いたい事があるってさ」
2013-10-15 23:23:38艦隊同士が撃ち合う砲撃の音と流れ弾を避けながら、提督達が拓いてくれた道をまっすぐに抜ける。誰かの悲鳴を聴く度に力の入る指先を抑えて、前だけを向く。 後ろの最上さんの索敵の声に従って、跳ぶ。顔を出した敵重巡艦を、私がいた位置を射線にして、金剛姉さんと羽黒さんが撃ち抜く。
2013-10-15 23:29:24不意に、ポケットの中の携帯電話が鳴る。無線アプリが、知らないチャンネルからの受信を知らせていた。 一瞬の逡巡の後に、ボタンを押す。防水加工の施してある画面に、水滴がぶつかり弾ける。 聞こえてきたのは案の定、奴の声だった。
2013-10-15 23:32:16思ったままを告げる。 ちゃんと言葉にするのは初めてだった。 もっと早くに、伝えていたのならば何かが変わったのだろうか。 返事を待つ。
2013-10-16 00:05:48榛名の言葉に、返事もできずに目を瞑る。 友達。 ちゃんと言葉にして告げた事は無かった。榛名はそう思ってくれていた。 何かを思い出しそうになり、頭痛に阻まれる。 それがとても大事なものだとわかっていながら、目を背ける。 友と呼ぶには、遅過ぎたんだよ。 頭が痛い。泣きそうになる。
2013-10-16 01:13:28ええ。 彼の為に。 私の為に。 貴女を殺す。 だから榛名は。 榛名の為に。 みんなの為に。 私を殺して。
2013-10-16 01:15:49いい? 山城。 私は絶対に、貴女に殺されてあげない。 私も貴女を殺さない。 私は、もう諦めない…! 私は、貴女を助け出す!
2013-10-16 00:10:43@harunas_ward ......(横目で榛名を眺めて笑顔になる よし...ここが正念場だ、全員全力を出すぞ! 信じている、絶対に殲滅させて榛名の援護に回るぞ! 絶対に守るんだ!
2013-10-16 00:14:24榛名は何を言っているんだろう。 私は何を言っているんだろう。 割れるような頭の痛みに、思考をやめ、マイクを彼に返す。 彼が微笑み、無線機を放って私を抱き締める。 「そうだ山城。榛名と殺し合え。生き残った方を愛してやる、壊してやる」 彼の言葉すら、頭痛を鎮めてはくれない。
2013-10-16 01:19:11