【完結】孤児とkkir

戦災孤児の女の子を拾ったkkirが子育てに奮闘するついのべまとめです。時系列がばらばらですが、女の子が立派な大人になるところまでを大筋に予定しています。03/17完結しました。
3
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

ふ、と笑って、幸せをゆるく撫でて、愛する伴侶を起こしに行くためにイルカは腰をあげた。 春の風が、はやくはやくと押すように、ふわりと背中に吹いた

2014-03-17 21:19:46
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

(俺が叩き切る役だと、どうするつもりなんだ。) 冗談めかしてそう思いながらイルカは縁側から外を見つめた。 確かにもう春はそこまで来ていた。 喜ばしい、春は、すぐそこに。

2014-03-17 21:19:33
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

その手紙を読んだとき、喜びと、そしておかしさで思わず吹き出した。過保護なパパをよく理解したあの子らしい。カカシさんはまだ寝ているみたいだった。起きたらこれを見せてあげよう。そして彼女が来るまでの日々を、二人で心の準備しよう。

2014-03-17 21:19:13
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

天候の変わりやすい花どきの季節です。風邪など引かれませんように。 敬具 追伸 イルカさん、パパが紹介したい人を叩き切らないようにどうかフォローお願いいたします。

2014-03-17 21:18:59
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

仲の良い二人のことだから、今年も二人っきりでのんびり花見でもしようかな、と思っていたでしょう。 のんびり、している暇はないかもしれません。 お父様方に、紹介したい人がいます。 今度の休みはその方と家を訪ねたいと思っております。

2014-03-17 21:18:46
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

温かい風と芽吹き始めた緑の匂いが微かに薫り始め、きっと今年も綺麗な桜が咲くことと思います。 突然ですが来週、少しの間暇をいただいたので帰郷しようと思っています。 木の葉の春は楽しみです。 二人と見た桜は、今でも私の思い出の中でそっと優しい温度で存在しています。

2014-03-17 21:18:31
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

拝啓、お父様方 元気にしていますか。 しばらく帰れていなくてごめんなさい。 新任配属になった施設で、色々難しいこともわからないことも多いけど毎日がめまぐるしく とても充実した日を送っています。 こちらはもうすぐ春が来ようとしています。

2014-03-17 21:17:58
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

彼はそのまま優しい手を離さないで、穏やかな笑みを浮かべているだけだった。 ねえパパ、イルカさん。二人がお互いを好きになったとき、一体どんな気持ちだった? 今の、この今の私みたいな、気持ちだったのかな。

2014-03-10 23:03:33
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

でも手触りはどっちにも似てなくて柔らかくてふわふわしていた。ぽんと、彼が私の頭に手を置いて「がんばっておいでね。」と言うと、なんだか少し泣きたくなって、恥ずかしいとかそんなことそっちのけで黙って泣いた。

2014-03-10 23:03:21
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

「僕は寂しいかな。」「え?」「君に会えなくなるのは、寂しいかな、て。」彼は穏やかに笑う。少し線の細い表情で優しく。自分の胸が少し高鳴っていくのを感じながら、私は彼の髪に手を伸ばした。少しくすんだ金色の髪。パパとナルトさんの間ぐらいの色。

2014-03-10 23:03:12
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

「寂しい?」とあの人は私に聞いた。このところ彼は私の前で動物の面をしなくなった。私はそれが特別みたいで嬉しかったし、屋根の上での会話は頻度も高くなっていた。「寂しいけど、寂しくない。」そう言い切ると彼は笑った。

2014-03-10 23:02:57
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

反射で怯えることはあったけれど、私はこの人たちを嫌いにならないことを、子供心にどこかで確信していた。それは大人になりつつある今でも、間違っていなかった、て胸を張っていえる。

2014-03-10 23:02:41
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

初めてイルカさんの顔を見たとき、パパは嘘をつかない人だと思った。パパが好きで好きでたまらない、優しくて厳しくてあったかくて、そして強い人だと言った彼の笑みはパパの言葉を全て証明してるように思えた。

2014-03-10 23:02:31
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

私のことをひどく殴っていた人が、実の父だったか、他人だったかは今や記憶が曖昧で思い出せない。でもあの頃はこれからどこへ連れて行かれるのか、少し怖かったのだけど、でもその優しい匂いとパパの淡々と語る惚気に既に私は絆されていたのだと思う。

2014-03-10 23:02:18
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

パパの着ていた外套は、少し汚れていたけど良い匂いがした。お日様のような、やさしくてあったかい匂いだった。きっとこの人はとても良い人なのだと、私はその時直感的に感じていたし、そしてパパの話す伴侶の話をぼんやりとした意識の中で聞いていた。

2014-03-10 23:01:57
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

この家を出て行く前に見た夢は、パパに拾われた日の夢だった。 私はお腹を空かせてやせ細って泥だらけで、そんな私に非常食やなんやらを与え、そして背に負ってパパ は私を里に連れ帰った。暖かい背中で、私はパパの背でうつらうつらとしていた。

2014-03-10 23:01:49
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

だから、明日からは二人ですけど、いつでも三人です。きっと、そうなんです。そう言い切ると、イルカがぎゅうっと抱き返してきた。

2014-02-20 23:30:41
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

あなたと、あのこと、俺の三人なら、できると思ったんです。それは直感的で衝動的でなんの根拠もなかったものでしたけど、俺は間違っていなかったと思います。俺たちは、確かに彼女の父親で、家族です。今までも、これからも、ずっと。

2014-02-20 23:30:35
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

俺と来る?と聞けばあの子はうなずきもしなかったし、首を横にも振りませんでした。ただ俺の手に小さな手を絡め、力いっぱい握り返してきました。それを感じて俺はすぐにあの子を抱きかかえて、帰路についたんです。

2014-02-20 23:30:24
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

俺の意識を支配しました。そこから何を考えたかよく覚えていません。気づいたら彼女に手を差し出していました。うつろな瞳であの子はこちらを見上げ、少しだけ目を細めた後に小さな一歩を踏み出しました。そして俺の手を掴める位置まで来るとしばらくそこに立ち尽くしていました。

2014-02-20 23:30:11
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

可哀相だな、とかそういう気持ちはきっと、俺はずっと昔に戦場に立つものとして捨ててきたのでそんな感情がわいた覚えはありません。でもただ、彼女のやせ細った肩に両手を置いてにこにこと笑うあなたの姿が見えた気がして、薄暗い雲間に突然差す日差しのように

2014-02-20 23:30:06
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

イルカが顔をあげた途端、その顔を確認もしないで俺は彼を抱きしめた。 あの子を初めて見たとき、それはもうひどい格好でした。瓦礫の山からやっと這い出してきたような格好で顔も性別がわからないほど汚れていました。

2014-02-20 23:29:49
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

寂しいとか、そういう単純な話じゃないと思う。どこかで二人きりが楽しみな部分もあって、でもとても、心のが引き裂かれそうなほど寂しい部分もあって、俺たちはその狭間でゆらゆらと手を取り合っているのだろう。

2014-02-20 23:29:41
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

それでも顔を上げなかったら、床についた手にイルカが手を重ねてくる。彼はゆっくりと息をついて、同じように俺に向かって頭を下げた。「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」と震えて濡れた声が聞こえた。

2014-02-20 23:29:35
DoujikuB.N.C @doujiku_bnc

彼女が来る前、俺たちは確かに二人きりで生きていたのに、それはとてもとおい昔のようにも、はたまた昨日のようにも思えた。俺はイルカの前に正座して、頭を下げた。「明日からまたどうぞ、よろしくお願いします。」そう言うと、イルカの気配が震えた気がした。

2014-02-20 23:29:27
1 ・・ 13 次へ