凍えた天使【テドイア】

重音テッド×IAの物語。 ある日イアが出会った一人の男。 酷く、酷く凍えた彼に見つけて暖めようとするが、全く熱が伝わらない。 でもそれには大きな理由があった。
0
大崎巧実(裏) @mboxtw2

と言うわけで。忘れないうちにメモ。BGMは相変わらずネタの出が良い『Brilliant EVE(http://t.co/PxB0N3UBEp)』。 秘蜜は天使ネタに固定されるが、この曲は『桜』が物凄く良く出る。なんでだろ? 今回はテッドさん、魔物じゃなくて天使です。

2013-10-23 22:06:13
大崎巧実(裏) @mboxtw2

その物語の最初は、満開に咲く桜の下で笑うイアたんのシーンから。 目の前にはテッドさんが立っていて、彼に向かっていつもの優しい笑顔のまま「待っています」って告げるわけだ。 私はずっと此所にいる。ここであなたをずっと待っています、って。

2013-10-23 22:07:52
大崎巧実(裏) @mboxtw2

その言葉を最後に、二人は別れてしまう。そうして、物語は幕を開けるのですが、これ実はラストのシーン。 終わりから始まる物語は、僕が一番良く使う展開。先にオチの部分が来るというか。まあ、最後だけどそれで最後じゃないんだけど。

2013-10-23 22:09:02
大崎巧実(裏) @mboxtw2

物語の始まりは、そのシーンよりもずっとずっと前から始まる。 とある街で、ただ一人。蹲るようにして眠っていたテッドさんがいた。そんなテッドさんにイアたんが声をかけたのが二人の出会い。 どうしたのかな、って。具合でも悪いの?って。そうして触れたテッドさんの身体は酷く冷え切っていた。

2013-10-23 22:10:56
大崎巧実(裏) @mboxtw2

とてもとても冷たいテッドさんの手に驚いたイアたんは、うちにおいでって言うんです。せめて、凍えた身体を温めませんか?って。 イアたんにはテッドさんが凄く凄く悲しかったんです。そんなに冷えた身体で、たった一人で人気のない所で蹲っていて。

2013-10-23 22:12:25
大崎巧実(裏) @mboxtw2

その時のテッドさんは手負いの獣と一緒で、差し伸べてくれるイアの手を取らなかった。いらない、って余計寒い所に行ってしまう。 んで、せめてもう少し暖かい格好を、ってイアたんは自分がしていたマフラーを上げるんです。ふわふわと柔らかいそれは、ほんの少しだけテッドさんを暖めてくれる。

2013-10-23 22:13:54
大崎巧実(裏) @mboxtw2

逃げるように去ってしまうテッドさんを、イアたんは追いかけられなかった。どこか暖かい所に辿り着ければ、って祈る事しか出来なかった。そんな出会いだったんだけど、すぐに再びイアたんはテッドさんと出会う事になるのです。 そんなに大きくない街。時折、見かける時もあった。

2013-10-23 22:15:08
大崎巧実(裏) @mboxtw2

見つけるたび、テッドさんはいつも寒い場所にいた。人のいない場所でたった一人きり。まるで隠れるように。 どうしただろう、って気になってたからイアたんはその姿を何度も見つけてしまうんですよ。つい探してしまっていたから。で、何度もそんな彼を見つけた。

2013-10-23 22:16:04
大崎巧実(裏) @mboxtw2

そして勇気を出してもう一度話しかけてみるんですよ。そこにいたいなら、無理に連れ出そうとはしない。だからその場所で彼を暖める事が出来たなら、と。 出会った時、やっぱりテッドさんは冷え切っていて、氷のようなその肌にとても悲しくなってしまうから。

2013-10-23 22:17:09
大崎巧実(裏) @mboxtw2

例えば暖かい飲み物。買い物帰りに見かけた時は、何かあげられる物。 最初は受け取る事がなかったテッドさんだったけど、少しずつ。話くらいならしてくれるようになった。 というか最初からイアが話しかけても嫌がらずにそこにいてはくれていたんだけどね。

2013-10-23 22:18:19
大崎巧実(裏) @mboxtw2

イアの鞄には暖かいお茶がいつでも入っていた。テッドさんに出会った時、それを渡せるように、って。 お茶くらいならテッドさん受け取ってくれるから。そして、イアが最初にあげたマフラーもずっとテッドさんはしてくれてた。だからイアたんはテッドさんに話しかけるようにもなったのだけれど。

2013-10-23 22:19:30
大崎巧実(裏) @mboxtw2

寒いその場所で。たった一人、寂しそうに空を見上げているテッドさんをずっとイアたんは気にしてた。その横顔をずっと見ていた。 時折触れる、氷のように冷たい指先を掴もうか、どうしようか、って迷いながら。 その手を握りしめた時、二人の関係が変わるんですね。

2013-10-23 22:20:58
大崎巧実(裏) @mboxtw2

テッドさんは自分が凍えている事を知っていた。でも、それを暖める方法がわからなかった。 寒い所しか知らなくて、だからそこにいたがって。 体温の感じない指先を自分で温めようとしても、ちっとも暖かくならない。でも、どうすればいいのかを彼は知らなかった。わからなかった。

2013-10-23 22:22:09
大崎巧実(裏) @mboxtw2

テッドさんがイアたんを拒まなかった理由はただ一つ。 初めて出会った時にもらったマフラー。それが凄く暖かかったんですね。冷たく凍えたテッドさんにはその暖かさが酷く心地よかった。だから、それをくれたイアたんを拒めなかったんです。 無意識に、暖めてほしいと願っていたのかもしれない。

2013-10-23 22:23:26
大崎巧実(裏) @mboxtw2

そうしてイアたんがテッドさんの冷たい手をそっと包んで暖めてくれるんです。 イアたんはどうしてこんなにテッドさんが冷えているのかわからない。だから手で包んで、暖めてあげるしかイアには出来なかった。 そうして、テッドさんはイアの暖かさに凄く驚くんですね。

2013-10-23 22:24:58
大崎巧実(裏) @mboxtw2

テッドさんはどうしたら暖かくなるのかがわからなかった。でも、包んでくれるイアの手は温かくて、ゆっくりと凍えた指先に熱を与えていく。 寒さに縮こまっていた心が、ちょっとだけ緩むんですよ。 それが二人の恋の始まり。凍っていた心が動き始めるんです。

2013-10-23 22:26:26
大崎巧実(裏) @mboxtw2

ゆっくり、ゆっくりと溶かしていく氷に連れられて、テッドさんの表情も軟らかいものに変わっていく。イアの言葉にもたくさん返してくれるようになった。 まだ冷たい所にいたがるけれど、でも誘えばお日様の下に出てきてくれるようにはなるんです。 まだ身体は冷たいけれど、氷は溶け始めていく。

2013-10-23 22:27:59
大崎巧実(裏) @mboxtw2

テッドさんの身体が温まっていくにつれて、二人はどんどん仲良くなっていくんですね。お腹すかせたテッドさんにご飯食べさせてあげたりとかするんです。 もうこの頃は家に誘ってもテッドさんは拒否しなくなってる。 火を炊いた暖炉の前にテッドさん座らせて、毛布羽織らせて。

2013-10-23 22:29:23
大崎巧実(裏) @mboxtw2

でもそうやって暖めようとしても、全然テッドさんの身体は温かくなってくれない。でも、手を握ると、その場所だけはほんのりと暖かくなってくれるんですよ。 どうしてだろう?ってイアたんは思うんだけど、仕方ないからずっとテッドさんと手をつないでる。

2013-10-23 22:30:21
大崎巧実(裏) @mboxtw2

で、それには理由があった。 テッドさんは人ではなく天使だから、物理的な温もりでは身体を温める事は出来ない。 人の思う心、その体温じゃなければ熱が伝わらないんですね。 だから心がとても温かいイアの手が触れた場所は、ほんのり温もりを取り戻すんです。

2013-10-23 22:31:53
大崎巧実(裏) @mboxtw2

テッドさんの身体が凍えているのは、温もりを与えられた事がなかったから。 彼は産まれながらにして背中に黒い羽根を抱いていた。その所為で天界では異端児とされ、災いをなすと閉じこめられていたのです。 だからテッドさんは与えられる熱を知らない。暖め方を知らないのです。

2013-10-23 22:33:19
大崎巧実(裏) @mboxtw2

イアは死にそうなくらいに冷たいテッドさんに触れて、なんとか暖めようとするんです。弱っている彼を放っておけなくて。 何もわからない彼が悲しくて、ぎゅうって抱きしめてあげるんですよ。そうすると、ほぅっと彼の身体が温かくなっていく。 イアが離れてしまうと、また冷たくなってしまうけれど。

2013-10-23 22:35:00
大崎巧実(裏) @mboxtw2

イアたんは一生懸命、テッドさんを暖める為に沢山の愛情を注いだ。最初は親愛から。そして、それが恋情に変わる。 そうやって強い熱を与えられて、テッドさんの身体はどんどん暖かさを取り戻していくんですね。天使には、愛情が必要なんです。それをイアは知らずに実践した。

2013-10-23 22:37:17
大崎巧実(裏) @mboxtw2

知らないまま、テッドさんに沢山の愛情を注ぎ、愛された事がなかったテッドさんはそれを吸収していく。 好きになる事、愛する事、それもテッドさんはイアを見て知るんですよ。愛を与える天使なのに、それを逆に与えられて初めて知る。

2013-10-23 22:38:48
大崎巧実(裏) @mboxtw2

そうしているうちに時間は過ぎ、テッドさんの身体は随分暖かさを取り戻すんですね。一杯イアに愛されて、そうしてまたテッドさんもイアたんに愛情を返したから。 イアたんに暖められて孵った天使の卵は、孵した娘に恋をするのです。

2013-10-23 22:40:36