リヴィング・ウェル・イズ・ザ・ベスト・リヴェンジ #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チカチカとちらつく、小山のような物体が周囲に無数にあった。それがうず高く積み上げられたニンジャの死体であることはすぐにわかった。「つぎ のえも の  は だ   れぞ。ま    い   れ」ナラクは燃える息を吐き、ぎこちない言葉を発した。「ナ   ラク?」フジキドは訝った。 21

2013-11-06 00:43:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

なぜなら彼自身の言葉もまた、うまく流れぬのだ。サップーケイ空間を流れる霞の動きもぎこちない。「バカめ フジ キ   ド。見よ こ  のわ  ずらわし   き」ナラクが唸る。フジキドは頭を潰されそうな重圧を感じた。彼は直感した。死体。多すぎる。ニンジャの情報量が。 22

2013-11-06 00:47:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わし   を   は   なてフジ キ  ド」ナムサン。閉じた空間でひたすらにイマジナリー・ニンジャを殺し続けた事が、このような過負荷を作り出しているのだろうか。無情にも、ナラクの前方、一体、二体、三体……新たな敵が出現する。これもまた死した後、この空間を毒す枷となるのだ。23

2013-11-06 00:53:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ド  ー  モ。ブ    ラック   オ ニ  キ  スです」「ク   ル  セイ   ダ  ー    で す」「ス   カベ   ン   ジャ    ーです」フジキドはナラクの感ずる煩わしさを同様に感じていた。身体が重すぎる。ぎこちなく、だが着実に敵ニンジャが迫ってくる。24

2013-11-06 00:59:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イ   ヤーッ  !」「グワ     ーッ!」ナラクはクルセイダーのサイバー馬にチョップ突きを繰り出し、内燃機関を破壊すると、振り向きながらの回し蹴りをスカベンジャーに叩き込んだ。「グ  ワーッ!」吹き飛ぶ。重い。ブラックオニキスの肘打ちが首筋に突き刺さる。「グワー ッ!」25

2013-11-06 01:03:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤー   ッ!」「グ  ワーッ!」スコーピオン・ケリがブラックオニキスの顔面を捉え、吹き飛ばす。「ナ   ラク!」「だ   ま  れ フジ  キド! イク   サ   の  さ  なかぞ」「ナラ   ク!」フジキドはナラクに執拗に念話を送り込んだ。 26

2013-11-06 01:08:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このままでは埒があかぬ。状況は悪化し続け、早晩、窒息するほど多量の死体の中で、最後のイマジナリー・ニンジャがナラクにトドメを刺すだろう。敵達はカクつきながら体勢復帰する。対応しきれない。「はなて  と 言ったな」「然り!」もはや猶予無し。フジキドの意識がナラクを……捉えた! 27

2013-11-06 01:14:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【リヴィング・ウェル・イズ・ザ・ベスト・リヴェンジ】#3 後半

2013-11-07 16:39:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤー   ッ!」「グ  ワーッ!」スコーピオン・ケリがブラックオニキスの顔面を捉え、吹き飛ばす。「ナ   ラク!」「だ   ま  れ フジ  キド! イク   サ   の  さ  なかぞ」「ナラ   ク!」フジキドはナラクに執拗に念話を送り込んだ。 26

2013-11-07 16:39:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このままでは埒があかぬ。状況は悪化し続け、早晩、窒息するほど多量の死体の中で、最後のイマジナリー・ニンジャがナラクにトドメを刺すだろう。敵達はカクつきながら体勢復帰する。対応しきれない。「はなて  と 言ったな」「然り!」もはや猶予無し。フジキドの意識がナラクを……捉えた! 27

2013-11-07 16:40:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドの意志はナラク・ニンジャのそれと重なり合った。普段の共振現象とは逆だ。そして何倍も恐ろしい危険な行いである。憎悪と害意の超自然的集合体、人ならざる存在の煮えたぎるイドの奥底へ潜って行くのは。だがフジキドに逡巡はなかった。先へ進む為、戦い続ける為に必要なプロセスだった。28

2013-11-07 16:48:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ」「ニンジャを殺す」「殺すべし」「ニンジャ殺すべし」「ニンジャ」「ニンジャ殺すべし!」「全ニンジャ殺すべし!」「根絶やしに!」「皆殺すべし!」「滅ぼすべし!」「全ニンジャ!全ニンジャ殺すべし!」なんたる殺意の濁流!フジキドの意志は呑み込まれ、押し流されよう……否! 29

2013-11-07 16:59:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

赤黒い濁流の只中にあってなお、フジキドは自我を保ち、小さいが確固たる輪郭を保ち続けていた。全ニンジャ殺すべし。ナラクの意志はフジキドの復讐心と似ている。似ているが同じではない。フジキドはふと思い出す。かつてもそのような問答があった事だ。彼は濁流の奥を見据え、飛び込んだ。30

2013-11-07 17:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

010001110011101011………「イチロー!最後の言葉はあるか!乞い願うべし!さすれば慈悲深く残してやらんこともない!」31

2013-11-07 17:06:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」イチローは首を動かし、声の方向を見ようとした。バンブーによって執拗に全身を打ち据えられ、口中は腫れ上がって喋る事も難く、両瞼もオバケめいて垂れ下がり、視界はほとんどない。彼は浮いていた。違う。磔である。身体の自由が効かぬ。尤も、自由であっても、この怪我では動けまい。32

2013-11-07 17:10:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

むき出しの土は乾ききり、風が吹く度、白茶けた砂埃が舞い上がった。イチローはまず、声の主……サムライに囲まれて立つダイカンを見た。ダイカンのやや後ろには、金糸の携帯椅子に尊大に腰掛けたニンジャがいる。ニンジャだ。その反対側で、村人達は嗚咽を押し殺し、見物を強いられている。33

2013-11-07 17:15:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「砂埃が凄い」ニンジャが呟いた。「申し訳ありません!」ダイカンがドゲザする。イチローは朦朧と、この顛末を思い起こす。途中の山路でダイカンの兵に捕らえられ、嘆願の希望は潰えた。そして、思いがけず、報せを聞いたグレーターダイカン当の本人が村を訪れた。……このニンジャがそうだ。 34

2013-11-07 17:20:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャが支配する暗黒の平安時代において、政治機構の中枢にあるのは当然、ニンジャ達だ。しかし、末端のナイーブな寒村民に過ぎないイチローや他の村人達が、そんな事を知る由もない。彼らは今年のコメの取れ高に苦しみ、ネングに喘いだ。更に空気税まで追加されたとなれば、窮状ここへ極まる。35

2013-11-07 17:24:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

村の土地はダイカンの、ひいてはキョートの所有物であるから、その地の空気を無料で吸うのはおこがましい。そういう理屈であった。馬鹿げた話であるが、反抗すれば即ち斬首である。ダイカンのガルザエモンは無慈悲な支配者であり、権力をかさにきて、横暴の限りを尽くしていたのだ。 36

2013-11-07 17:32:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガルザエモンは幾らなんでも酷すぎる。この実情を、もっと偉い人に直接伝えれば、懲らしめてもらえる。村人達は合議でそのように結論づけた。ヒキャク役として白羽の矢が立ったのが家族のないイチローだ。流行病で息子夫婦と孫を亡くし、天涯孤独の身。彼自身もすすんでその役目を受けた。 37

2013-11-07 17:40:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、結果はこれだ。望みはまだある。グレーターダイカン。直接やってくるとは。要は、嘆願の手間が省けたのだ。彼がこの顛末を知れば……「ダメでしょう、卑しい虫がキョートにつながる空気を吸う、本来ならば重罪ですよ?」グレーターダイカンは滑らかに言った。「それを税で許す。善政です」 38

2013-11-07 17:46:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ありがとうございます!」ガルザエモンが素早く再びドゲザした。「面白いゆえ、この税制は中央に持って行きましょう。よくぞ考えたものだ、卑しい非ニンジャの卑しい頭で」グレーターダイカンが雅やかに言った。「ありがとうございます!卑しいです!」ダイカンは三たびドゲザした。 39

2013-11-07 17:52:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さて、パチパチ爆ぜる人間の眺めは大好物ゆえ、こうしてリキシャーを飛ばさせた。末期の言葉などよい。始めなさい。……家族はどうしました?この者の」「家族は!」ガルザエモンが村人達に凄んだ。「お、おりません!」最長老が答えた。「ならばそこの一家を焼け」グレーターダイカンは言った。40

2013-11-07 17:56:57